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新連載
挑戦―幸福(しあわせ)づくり
物の豊かさはどこまで必要か
 
堀田 力
さわやか福祉財団理事長
 
バブルの頃、
贅沢に金を使って遊んだ人たちは、
そうしなかった人たちより幸せだろうか。
私が知る限り、バブル紳士たちは、
手軽に金が入ってこない今に不満を募らせているだけで、
贅沢をした事実は、
彼らの幸せに何のプラスにもなっていないように思える。
ボランティア活動で人の笑顔をつくった人とは、
そこが違う。
 
 デフレ・スパイラルとやらを脱するために、消費の拡大が必要だという。日本の景気回復がアジアのためであり、世界のためだなどと言われると、無理してでも何か買って消費しなければいけないのかとも思う。
 その一方で、地域の環境や資源を考えると、こんな無茶な消費をしていたのでは、子孫の代には食料もエネルギーも持たなくなる破滅への道を爆進しているようにも思える。第一、もうゴミを捨てられる場所すらなくなりつつあるではないか。
 消費を拡大するといっても、もう「物」の方は、なるべく必要最小限の消費に止めるように、少なくとも先進諸国は、方向転換すべきであろう。そして、未だに餓死者の絶えない発展途上国にまわすことを考えなければならない。世界の先進諸国は、経済の仕組みと社会貢献の仕組みをうまく組み合わせて、「物の豊かさ」と「心の豊かさ」がバランスよく満たされるような社会をつくり出すことに、その目標を切り替える時が来ていると思う。
 消費の拡大が必要なのは、「人」の分野であろう。子育て、教育、精神的に充実した生活、介護など、人がその能力を伸ばし、生きがいを持ち、安心して生きるための投資は、もっとなされてよい。それを誘導する経済施策が必要であり、それは様々な人に雇用の機会を広げる。
 そういう構造改革が、NPOやボランティアの活動の拡大と相まって、「人の笑顔」という幸せの財産を産み出していくのである。







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