3. 看護ケアサービスの展開
ホスピスのアプローチはチームアプローチであると、さまざまな文献や、実践者が述べているが、(Stoddard 1978、Volker、1999)。ここHospice of Marin でのケアの展開もまさにチームワークであった。
ホスピスチームは、・患者の主治医、・ホスピスオブマリンの医師、・ケースマネジャー(ナース)、・ホームヘルスエイド、・必要な場合の言語療法、理学療法、作業療法士、・ソーシャルワーカー(カウンセラー)、・チャプレン、・訓練をうけたボランティア(患者直接ケアボランティア)からなっている。
ホスピスオブマリンでは、患者収容施設がないため、患者の住んでいるところにこれらのチームメンバーはそれぞれ訪問にいく。患者は、自宅、skilled nursing facilities(養護が必要な患者の収容施設)、健康な老人の収容施設、医療施設を併設した老人用アパートメント、などに住んでいた。
ホスピスチームは各患者にあったケアプランを作成し、痛みのコントロールや症状コントロールを行う。また患者の必要な医療器具(病院ベッドや、コモードなど)を手配したり、処置、与薬、必要な治療など明らかにする。ケアプランには、患者がどのような看護が必要か、どのくらい清拭やシャワーなど必要か、医師の診察に出かけること、カウンセリング、食事や家のことのサービスの必要性も明らかにしている。ケアプランが作成されると大体の場合は家族が主介護者になるのだが、ケアの方向性(どこでケアを受けるかなど)についての主介護者の意思決定も示される。
ホスピススタッフは訪問を定期的に行い患者やケアシステムのアセスメントを行い適宜必要なケアを追加する。ナースは24時間7日間オンコールである。
この24時間サービスは、オフィスアワーをこえると患者からの電話は交換台にいき、そこからオンコールナースに連絡がいく仕組みになっている。電話を受けたオンコールナースは10−20分以内に患者に電話をかけ、状況を把握し、その場で指示をおこなったり訪問をおこなったりする。このように電話やファクスのやり取りは必須であった。また、研修中の期間中、ホスピスでは、コンピュータのシステムを導入している最中であった。このコンピュータ管理が完了すると、チーム間の連絡がもっとスムースに進むことが期待できる。
また薬の処方に関しては、医師が処方をするが、ホスピスナースはかなりの知識をもち主治医の信頼を得ながら活動していた。
1)ナースの役割
ホスピスオブマリンでは、15人のプライマリーナースがいる。彼らのことをnurse case manager と呼んでいる。
一人のナースは8人の患者家族をもち、ほとんどのナースが週4日間働く。これは0.8という働き方で、フルタイムとなっている。
週5日働く場合は10人の患者をもつ。フルタイムのナースのほかに、perdiem nurse (一日ごとに働く)ナースが働いている。
またオンコールナースが二人午後5時から朝8時半まで働いている。
患者がホスピスに紹介されると、アドミッションナースがまず訪問し、患者、家族の必要なケアなどをあきらかにする。
訪問した先で、電話で薬局に薬の注文を行ったり、ホスピタルベッド、車椅子などをオーダーし、ホームヘルスエイドの訪問、ボランティアの訪問、ソーシャル・ワーカー、チャプレンの訪問の希望の有無などアレンジし、物品などはその日のうち、または、翌日にはセットアップされるようになり、プライマリーナース、ソーシャル・ワーカー等の訪問も48時間以内に行われる。
2)症状マネジメントの実際
ナースの役割として症状マネジメントは、大変重要である。
研修中のあいだ、まず始めに、アドミッションナースに同行し、どのようにホスピスプログラムの導入を患者家族に与えるのかを学んだ。その後、プライマリーナースにつき、受け持ち患者のケース訪問に5週間同行した。このためホスピスプログラムにある患者の身体症状や精神面での変化、それに対する看護、その他チームのかかわり方の流れを学ぶことができた。プライマリーナースの受け持ち患者がカウンセラー(ソーシャルワーカー)の訪問、ホームヘルプエイドの訪問などがあった場合、それに同行し、患者へのチームによる関わり方も学んだ。また、トリアージュナースが緊急の訪問などを組むときには、それに同行し、死直前の呼吸困難や、混乱などへの対応の仕方も学んだ。
訪問にあたり、ナースは、患者の身体、精神状態、ケアシステムについてなどのアセスメントを行い、連携が必要だと判断した場合、その場で電話をし、(例、ホームヘルプエイドのアレンジや、ボランティアのアレンジ、またベッドなど介護用品のアレンジなど)すぐに連携を保つようにしていた。ナースの判断力の重要性は、症状マネジメントだけではなく、ケアシステムのあり方や、患者の自立度など様々な側面があげられるが、症状マネジメントは大きなウェイトをしめ、それぞれの患者の症状に対応していくためにはナースの多大な知識が必要である。
Hospice of Marin については、病院付属のホスピスでないため、共に働いている患者の医師からの信頼を得ている。ナースと主治医は密接な関係があり、ナースの処方は、かなりスタンダードになっており、直接薬局にオーダーを行い、その後ファクスで医師の処方を連絡する、というようなプロセスが取ることができている。このような方法が確立されているため、患者の症状の急激な変化に対応することができていた。しかしながら、スタンダードにない症状など(掻痒感や、腹水の処置についてなどであったが)、チームカンファレンスで他のナース、またホスピスの医師とともに、症状に対する薬の処方についてディスカッションがなされていた。患者はいくつもの薬をのんでいるため、副作用に関する注意が口頭とメモにかかれたものにより細かく指導されていた。このナースは、ホスピス看護について様々なコースを受けて認定を受けている人であった。また、緩和ケア看護についての専門家もおり、このナースは、チームカンファレンスでの情報提供、症状緩和の相談にのっていた。
チームメンバーであるナースも、様々な経歴を持つものが多く、症状マネジメントについては、各自で工夫をするとともに、カンファレンスでの共有がなされていた。また、登録ナースは、2年ごとに免許を更新しなければならないシステムになっているため、この継続教育の義務づけも、各ナースのレベルの維持向上に役立っているといえる。
患者も薬に関する知識を学ぶ用意ができていて、薬の名前を覚えていないにしても、「この薬はこのような作用があるのでいつに飲むようにする、、」など自分で薬の効き目具合などを判断し、ナースに伝えることを行っていた。また、薬の服用に際して、記録をつけたり、薬の効き目に対して自分がどう思うかなどを的確に伝えることにより、ナースが新たな薬を処方することの助けになっていた。
いくつかの訪問で遭遇した症状マネジメントのうちで、ナースと患者の協力のもとにとられていた排便コントロールについて述べる。
(1)排便のコントロール
患者はモルフィンなど使用して便秘の副作用があるが、さまざまな薬を使い患者自身が排便のコントロールをつけていた。
排便コントロールについてナースにどのようにしているかを聞いた。患者がホスピスに紹介され、その時点で2週間排便がないなどの場合は摘便をおこなうが、ホスピスプログラムにいるうちは、その人のコンディションに合わせ、緩下剤を使ったり、便をやわらかくする薬 (stool softoner)を使用して排便をコントロールしている。また、排便が3日間ない患者でも死直前の呼吸困難状況になったりする場合は、浣腸などの処置は試みるが、それでも排便がない場合は、無理をせずに様子を見ることをしていた。あくまでも全体的な緩和ケアということで、浸襲的な処置は行っていなかった。
便秘に関して Kayeは、便秘は、ターミナルステージの患者にとって大きな問題である、と述べている。これらの患者の便秘の原因は、
・ 低繊維食
・ 脱水
・ 薬(オピオイド、抗コリン剤、利尿剤)
・ うつ
・ 排便の減少(衰弱、混乱、痛み)
・ 高カルシウム血症
増殖した腫瘍の塊は、腎臓でカルシウムの再吸収を増やす蛋白に関係した副甲状腺ホルモンを産生する。高カルシウム血症は、便秘をまねく。その他の症状は・ねむけ、嘔気、口渇、多尿。
排便のコントロールのガイドとして、Wrebe−Seaman は腸の治療として以下のステップを上げている。
Step 1. スツールソフトナーと緩下剤から使う。
・ Docusate Sodium 250 mg daily to BID
・ 果物のペースト
・ Docusate Sodium 100, g/casanthranol 30mg (Doxidan);1 cap TID (range 1−2 camsules QD to TID)
・ Dcusate Sodium 50mg plus Sennosides 8.6mg(Senokoto−S). 1 tablet TID(ange:1−4 tabs QD to TID;also, guide dosing as follows:1 tab/4mg hydromorphone, 1 tab/15mg morphine)
Step 2 もし48時間以内に腸の動きがない場合、次のひとつを加える。
・ senna(Senokot)2−3 tablets PO QD
・ Bisacodyl(Dulcolax)10−15mg PO QD(range:5mg to 15 mg PO QD)
・ Milk of magnesia 30−60 ml PO QD(range:QD to BID)
・ Lactulose (Chronulac 10gm/ 15ml)30−45 ml QD
・ (range:15−60ml QD;larger doses are usually divided BID−TID)
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