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平成14年度(2002年)研究報告

 事業名 医学医療に関する研究助成
 団体名 笹川保健財団  


VIII. 地域全体での緩和ケアへの取り組み
 英国では、施設内だけでなく、地域単位での緩和ケアサービスへの取り組みが見られる。その連携について述べる。
 
1. Edinburgh
 Edinburghには、Marie Curie財団で運営されているホスピスが1つ、慈善団体(チャリティ)で運営されているホスピスが1つ、院内緩和ケアチームのある病院が2つある。
 
■ Lothian Palliative Care Guidelines
 Edinburghを含むLothian地域では、緩和ケアに関するガイドラインを発行している。その内容は、基本的な症状マネジメントの方法、緩和ケア領域で使用される薬剤やそのアドバイスに関するアクセス、シリンジドライバーの使用法、地域内で利用できる緩和ケアサービス、患者・家族への情報資源などである。これはGPを含むLothian地域内の全医療機関に配布され、緩和ケアに関する知識・情報の普及とともに、緩和ケアサービスを円滑に利用できるようになっている。
 
■ Auditに向けてのケア基準(スタンダード)作成
 提供しているサービスの質を保証するために、auditを行うことが推奨されている。Scotlandが国として発行している基準standardはあるものの、より地域にあったサービスを提供していくために、Lothian地域独自のAuditに向けてのケア基準standardを協同で作成している。
 
■ 同職種間での定期的なミィーティング
 薬剤師や理学療法士などの医師・看護師以外の職種は、各施設にひとりしかいないことが多いため、孤立しがちになったり悩みを分かち合えなかったりすることがある。そのため、他の施設に勤務する同職種と定期的にミィーティングを持ち、活動の方向性の確認や情報交換、困っていることや疑問に思っていることを話し合ったりする機会を設けていた。これは、その仕事の遂行にあたって必要なことであると施設、個人ともに認識しているため、勤務時間内を利用して行われていた。
 
■ 夜間・休日の協力体制
 緩和ケアの対象となる患者へのケアは、日常生活上の援助が中心であり、医師の関わりを多くは必要としない。そのため、夜間・休日の医師の対応体制は、施設単位ではなく地域単位で組まれている。具体的には、SpR(specialist registra:基礎的な研修が終わり、専門医となるための勉強をしている医師)と緩和ケア専門医の各1名を一組として、医学的な問題が生じた場合、その日の担当となっている医師と連絡をとることになっている。また、医師やCNSが長期の休みを取る場合、他の施設の人がカバーしたりしている。
 
2. Sheffield
 Sheffieldには、チャリティで運営されているホスピスが1つ、NHSによって運営されているPCUが1つ、院内緩和ケアチームを持つ病院が3つある。
 
■ 地域としての緩和ケアチーム
 緩和ケアサービスを提供している上記施設が、1つのチームとして運営されている。この活動は2002年に始まったばかりであるが、今後、依頼や記録用紙等を統一し、より円滑な緩和ケアサービスが提供できることを目指していた。
 
■ ナーシングホームにおける緩和ケアサービスの提供
 ナーシングホームはある意味で患者の居宅である。患者が可能な限りそこで過ごすことができるように、在宅ホスピスケアチームがナーシングホームにも赴き、緩和ケアに関するアセスメント、アドバイスを行っている。この場合の在宅ホスピスケアチームの役割は院内緩和ケアチームと類似しており、直接的なケアは行わず、コンサルテーションのみである。地域のナーシングホームのスタッフと定期的にミィーティング・勉強会も行い、緩和ケアに関する知識・技術の向上を図るとともに、心理的なサポートが得られるよう、他の施設のスタッフとの連携を促していた。
 
■ 臨床と研究機関との協同
 Sheffield大学にPalliative Medicineの講座があり、そこと臨床との連携が見られる。具体的には、大学で開催されるセミナーやリサーチミィーティングなどの予定がナース、医師など臨床のスタッフにも連絡され、自由に参加できるようになっている。また、臨床のスタッフを招いての症例検討会なども企画されている。反対に、大学のスタッフが臨床に赴き、カンファレンスに参加したり、研究に基づいた問題などについての相談に応じたりもしている。
 
IX. わが国での緩和ケアチームのあり方についての示唆
1. 責任の所在の明確化
 院内緩和ケアチームが関わっている問題でも、患者・家族へのケアの責任は、病棟チームにある。これが、従来行われている、他の診療科との併診とは異なっているところであろう。院内緩和ケアチームの目的は、病棟チームが緩和ケアに関する問題を主体的に解決できるように支援をすることであり、決してケアを肩代わりすることではない。これを院内緩和ケアチームと病棟チームの双方が理解したうえで関わりあうことが重要である。この理解がないと、現場での混乱が起き、結局は患者がその影響をうけることになると考えられる。
 
2. 利用しやすいシステム作り
 病棟チームと院内緩和ケアチームの関係は、決して上下ではない。院内緩和ケアチームはあくまで利用される立場である。依頼されない限り、対象とする人々にアクセスすることはできず、またその活動は生まれてこない。そのため、病棟チームがより利用しやすいシステムを作り上げることが必要となる。具体的には、依頼手順やサービス内容(何ができて何ができないのか)の明確化とその分かりやすい提示などが挙げられる。最初の依頼で利用しにくい印象を与えてしまうと、再度利用しようという気にはならないものである。この点からすると、院内緩和ケアチームを始動させる前に、そのシステムについての慎重な検討が必要であろう。また、期日を決め、定期的にそのシステムについて見直しをし、改善していくことが望ましい。
 
3. メンバーが必要とする専門性
 前述してきたように、院内緩和ケアチームは病棟チームからの依頼を受けて利用される立場にある。利用者が満足できる、質の高いサービスを提供できない場合、その評価は依頼数としてダイレクトに表れるものと推測される。満足度の高いサービスを提供していくためには、緩和ケアに関しての専門的な知識・技術だけでなく、それを生かしていくためのコミュニケーションスキルや調整能力も必要となるだろう。
 
4. 施設を超えた地域でのネットワーク作り
 入院型のホスピスに加え、一般病院での院内緩和ケアチームの導入、在宅ホスピスケアを提供する開業医・訪問看護ステーションの増加など、わが国でも利用可能な緩和ケアサービスは徐々に多様になってきている。しかし、まだその数は少なく、どの施設も効果的なサービスのあり方について模索している段階であろう。ホスピス/緩和ケアは地域社会の問題であるとも言われる。わが国の医療保険システム上、英国と同様の形で協力し合うのは難しいと思われるが、参考には大いになるだろう。それぞれの経験を共有することにより各施設でのサービス向上に役立てるとともに、医療者側の事情ではなく、患者さんが主体的にサービスを選択し、スムーズに移行できるようにするための地域単位でのシステム作りが必要と考える。
 
X. まとめ
 今回、院内緩和ケアチームの活動の実際を理解することを目的として英国での研修を行った。英国では、ホスピス/PCUといった入院型施設のみならず、在宅ケアチーム、院内緩和ケアチームの3つの側面がバランスよく機能し、地域での緩和ケアサービスが運営されているとの印象が強かった。医療体制や文化背景が異なるため、英国のシステムをそのまま取り入れることは難しいが、わが国での病院における緩和ケアサービスのシステムを構築していくために考える土台となるものと考える。
 
文献
1)全国緩和ケア病棟承認施設一覧:ターミナルケア 13(1):49-51, 2003
2)厚生科学研究「緩和医療供給体制の拡充に関する研究」班:ホスピス・緩和ケア病棟の現状と展望、あゆみコーポレーション、2001
3)古元重和:緩和ケア診療加算の新設. ターミナルケア 12(4):333-337, 2002
4)hospice information. Hospice and Palliative Care Facts and Figures, London, 2002







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