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平成14年度(2002年)研究報告

 事業名 医学医療に関する研究助成
 団体名 笹川保健財団  


VII. 院内緩和ケアチームの活動の実際
 研修した各緩和ケアチームの概要を表1に示す。
 
1. 施設背景
 研修施設中、その規模は100〜1100床とさまざまであった。施設の種類としては、がん専門病院、総合病院であった。
 
2. チーム名称
 表の通り、どのような名称をつけているかは各施設によって異なっているが、Palliative Care Teamというのが一般的なようである。なお、本報告書では、院内緩和ケアチームという呼称で統一している。
 
3. チームメンバーとその構成
 チームメンバー数は、その施設規模および施設の種類によってさまざまであるが、最低CNSと緩和ケア専門医を有しているところが多い。緩和ケア専門医は、基礎的な研修を終え、最低4年間緩和ケアの専門医となるための教育および研修を受けている。ナースは専従だが、緩和ケア専門医はホスピスなど他の施設とかけ持ちし、週に数日だけチーム内で活動するという形態をとっているところが多かった。
 薬剤師、SW(Social Worker:ソーシャルワーカー)、セクレタリ、栄養士などを有しているチームもいくつか見られたが多くはなかった。これは、英国の病院では、病棟単位で薬剤師や理学療法士、作業療法士が存在しアクセスしやすいことと、経済的にナース・医師以外の職種を配置する余裕がないことに起因しているようであった。
 
4. 院内緩和ケアチームへの依頼について
 院内緩和ケアチームへの依頼は、医療職だけでなく、患者・家族からも可能である。実際には、病棟ナースからのものが最も多く、その次が医師となっている。ナースが依頼する場合には、患者の病棟主治医の合意を得ていることが条件とされる。緊急の依頼でない場合、原則24時間以内に訪問するように努めている。
 病棟からの依頼は、電話・ポケットベル・依頼用紙のいずれかによって行うとしているチームが多かったが、実際の依頼は、ポケットベルを通して行われていた。この理由としては、依頼用紙の記入は病棟スタッフにとって煩雑であり、そのために緩和ケアのニーズがある患者がいたとしても依頼されにくい、あるいは依頼が遅れ、その結果患者への対応が遅れる可能性があること、緩和ケアチームはオフィスにいない時間が多いため、電話だと連絡がとりにくいことが挙げられる。
 依頼基準referral criteriaの有無またその内容は、施設あるいは地域によって異なっている。「進行性疾患であること」、患者のニーズの種類がどうであれ、それが「複雑なcomplex」あるいは「普通でないextraordinary」レベルであること、の2つを基準の中に示しているところが多かった。
 チームへの依頼数は、チームメンバーの数によっても異なるが、CNS1人あたりにすると、新規依頼が1日1〜2件くらいであり、1日に訪問している患者数は平均5〜6人くらいであった。依頼は悪性疾患患者に関するものが多いが、対象疾患を悪性疾患に限定している施設はなかった。
 患者・家族に何かしらのニーズがあることは認識されていても、具体的にそれが何であるのかを明確にされずに依頼されることもある。そのような場合、病棟スタッフと話し合い、ともに問題点を明確にしたうえで対処したり、より適切な資源resourceを提案したりしていた。また、依頼された時点で患者・家族に緩和ケアのニードがない場合でも、患者・家族に院内緩和ケアチームに関するパンフレットや連絡先を伝え、必要時、患者が主体的に院内緩和ケアチームとコンタクトが取れるようにしているところもあった。
 
5. 情報の共有、伝達
 病棟を訪れた際には、必ず担当のナースあるいは医師と口頭での申し送りをするが、記録物への記入も行う。施設・病棟によってはカルテと看護記録がひとつになっているところもあるが、分かれている場合には、診療録に記載をしているところが多かった。
 チーム自身の記録として、患者ごとにカードあるいはシートを作成し、患者の基本的な情報やどのようなケア(サービス、アドバイスなど)を提供したのかを経時的に記入していた。また、どのチームもデータベースを作成、基礎的な情報を入力し、定期的な活動評価や活動報告のために利用していた。
 
6. MDT(Multidisciplinary Team Meeting:多職種合同ミィーティング)
 週に1回多職種による合同ミィーティングを開催しているところが多い。参加者は、院内緩和ケアチームのメンバー他、チャプレン、SW、専門ナースsite−specific nurseなどである。参加職種は、施設によって大きく異なっている。ミィーティングの内容は、院内緩和ケアチームが関わっている患者のレビューが中心である他、情報交換や業務上の連絡なども行っている。
 
7. 緩和ケア外来
 たいていの施設では、院内緩和ケアチームに所属する緩和ケア専門医が週に1回緩和ケア外来を開いている。施設によってはCNSが同席し、ともにアセスメント、付き添ってきた家族へのケアなどを行っているところもある。ここへの依頼は、同病院の他科外来、GP(General Practitioner:家庭医)、コミュニティナース(緩和ケアを専門としている訪問看護師)などからであり、在宅療養中に緩和ケアのニーズが出現した場合の対応の1つとして利用されている。
 患者・家族がホスピス/PCU(Palliative Care Unit:緩和ケア病棟)などの入院型緩和ケア施設を探す場合、一般病院に入院している患者には院内緩和ケアチームが、在宅療養をしている患者・家族にはGPやコミュニティナースが入院型緩和ケア施設と連絡調整を行うため、わが国のように、緩和ケア外来が入院の窓口となることはあまりないようである。
 
8. 役割(表2)
(1)アセスメントとアドバイス
 緩和ケアチームの役割の中心は、疼痛・嘔気や不安などの症状マネジメントや心理的なケアに関する病棟スタッフへの専門的なアドバイスである。病棟スタッフからの依頼内容が明確でない場合や、病棟スタッフが問題と感じていることが真の問題ではないことがあるため、病棟主治医または患者からの了解がない場合などを除いては、緩和ケアチームは直接患者に会い、アセスメントを行う。そして状況の把握と問題の明確化を行い、それに基づいてアドバイスを行っている。アドバイスをして終わりではなく、提供したアドバイスが実行されたのかどうか、また実行された結果どうであったのかを必ず評価し、病棟スタッフにも記録および口頭でフィードバックする。
 
(2)患者・家族へのケアとサポート
 英国でも日本同様、心理面でのケアの重要性は認識されていても、一般病院での多忙な診療や処置の中、病棟スタッフが患者・家族と十分なかかわりを持つのは難しい。そのため、患者・家族にそのニードがあった場合、院内緩和ケアチームがサポートの役割を担うことが多い。
 英国でのがんに関する告知率はほぼ100%であるが、病名は伝えられていても、病状がどうであるのか、あるいはその病気がどのように生活に関わるのかなどを理解していない患者も数多くいるのが現状のようである。院内緩和ケアチームは、必要なだけの時間をかけて患者・家族と話し合い、状況をできるだけ正確に理解したうえで適切な判断ができるように援助している。また、それらの過程に伴う不安や悲しみなどの心理的問題、あるいはスピリチュアルな問題へのケアも行っている。
 
(3)スタッフサポート
 生命に関わるような疾患を持つ患者をケアすることは、ケアするスタッフにとっても非常にストレスである。スタッフ自身の悩みとして依頼されることはあまりないが、患者・家族の問題についての日常の関わり合いを通して、スタッフへ情緒面でのサポートも行われている。
 
(4)教育
 Informalな教育としての日常実践の中での具体的なアドバイスに加え、年に1、2回、院内あるいは地域の医療者を招待し、研修会や勉強会などを行っている。ここでは、症状マネジメントやシリンジドライバー(持続皮下注入器)の使用法など、日ごろInformalな形で伝えている内容をより系統立てて話をしたり、終末期に関する倫理的問題など、日常取り扱っている現象の中に潜んでいる問題を提起したりする機会となる。ある施設では、病棟が院内緩和ケアチームを招いて、終末期の患者への関わり方やケアについてのディスカッションなども行われていた。
 
(5)他のサービスとの連携
 SWや退院調整専門のナースと協力して在宅機関との連絡調整を行い、病院と在宅との橋渡しをする役割も担っている。特に在宅ケアチームおよびホスピス/PCU(Palliative Care Unit:緩和ケア病棟)などの緩和ケアサービスとの連絡調整をすることが多い。
 
(6)悲嘆のケア
 悲嘆のケアを理由として依頼されることはないが、患者・家族への心理的サポートを通して、死に行く患者あるいは家族へ予期悲嘆のケアを行っている。院内緩和ケアチームの関わりとして、遺族ケアを行っている施設は見られなかった。







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