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症例15
1. 症例15の概要
S.S 年齢94歳(死亡時) 女性
病名は(1)アルツハイマー型痴呆 (2)乳癌
 
2. 当院へ入院するまで
 高崎にて出生、生育。異母兄弟を含めると同胞は5人となる。旅館の長女。女学校卒業後旅館の手伝いをしていて結婚。数年で離婚。28歳で再婚し3子をもうけた。本人は旅館を経営し、夫は新聞社に勤務。戦後離婚。長男、次男が独立してからは長男と2人暮らし。平成13年1月長男が肺癌で死亡。以後一人暮らし。記銘力障碍、著明、失見当識、失行、鍋焦がしなど頻繁で、家事困難。失禁もみられ一人暮らし不可能で平成13年1月15日当院入院となった。
 
3. 入院後の経過
 疎通は比較的良好で長谷川式17点、起立歩行可能で更衣入浴排泄も軽介助、見守りで可能。記銘力障碍と時間的失見当識障害が突出してまだら痴呆状態。不眠、帰宅願望強く、1月19日には長男が死亡したこと、自分が次男、長女に連れられて入院したということも忘れている。当院を”小松ストアーがやっているホテル”と。1月下旬には「財布がなくなった」「宝石がなくなった」「フロントへ行って聞いてくる」など被害妄想。しかし不穏になることはなく穏やかに生活。2月下旬、じんましん出現。加療。3月1日腰痛にて歩行困難。対症療法にて転減。3月下旬38度台の発熱。以後、咳、痰、倦怠感、嘔気嘔吐、食欲不振、めまい、等多彩な症状の訴えがあるものの、5月には症状が鎮静化した。6月27日右乳頭上部にtumor(3cm×2.5cm大)触知。本人は3〜4年前からあったというがはっきりせず。腫瘍マーカーも上昇しており7月乳癌と診断。8月下旬、腰痛にて歩行困難。X−PにてTh11圧迫骨折確認。対症療法。その後腰痛、発熱を繰り返し、徐々に活動性低下。平成14年1月中旬、発熱、喘鳴あり。気管支炎として加療。右乳房tumor3.5cm×3.0cm大に増大。3箇所で皮膚と癒着する。0.5mm〜10mmに小結節をみとめた。発熱を繰り返し、2月初旬より全身痛、食欲低下、2月中旬からは重度の腰痛にて車椅子生活となった。発熱、全身痛、食欲低下がつづき、4月下旬には、両下肺壁に肺炎様の陰影。4月中旬、右のリンパ線メタ。腰痛・腹満出現を見た。徐々に全身衰弱が進行。ベット上生活が多くなった。6月には起きていることが苦痛となってきた。7月乳房のtumorは徐々に増大。疼痛があると臨床。鎮痛剤が効いていると笑顔で会話。徐々に傾眠傾向。9月初旬、微熱、疼痛が持続。会話もなくで臨床していることが多く、NSAIDSが効きにくくなってきた。乳房のtumor、脱宮リンパ腫がさらに増大。疼痛コントロールがつかないため9月17日硫酸モルヒネ開始。疼痛は右前胸部中心で、乳癌骨メタによる疼痛と考えられた。9月下旬、傾眠がちで穏やか。少量だが経口摂取もでき、新聞を読んだり、スタッフとの会話も日によってよくするようになった。しかし、徐々に衰弱が進行した。11月に入って尿量減少。意識レベルも低下。悪液質の状態で、一般状態が悪化した。12月4日午後、血圧80台に低下。そのまま回復せず、呼吸状態も不良となりPM6:10死亡した。
 
4. コメント 1年11ヶ月
 向精神薬 フルニトラゼパム0.5mg
 穏やかな痴呆の人。乳癌の転移。硫酸モルヒネ20mgでなんとかコントロール。
 穏やかな死亡。
 
症例15 資料
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症例 15 図表記
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