症例10
1. 症例10の概要
K.S 年齢88歳(死亡時) 女性
病名は(1)老年痴呆 (2)廃用症候群 (3)胃潰瘍 (4)甲状腺機能低下(5)心筋梗塞 (6)解離性大動脈瘤 (7)気管支喘息 (8)腎不全 (9)うっ血性心不全
2. 当院へ入院するまで
満州にて出生。3歳頃、実母を亡くし同じ頃妹も亡くしている。父が再婚したため、おば宅へ引き取られた。その後、父と一緒に暮らすようになったが、20歳頃、父も死亡。結婚して一男一女をもうけたが、夫は再婚で亡くなった先妻との間に子供が2人いた。56歳、胆石にて手術。平成8年春頃(82歳)から年給受給の手続きができなくなり、秋にはテレビをつけながら天井をぼーっと見ていることが多くなった。平成9年3月(83歳)胃潰瘍、甲状腺機能低下症にてK病院入院。入院中、嫁の悪口を言うようになったが退院後は消失。平成9年5月心筋梗塞、解離性大動脈瘤にて河北病院再入院。攻撃的言動が多くなりヘルパーに「出てけ」「誰の金で雇っているんだ」と言ったり「家を売って嫁が盗った」「あの家には知らない人が住んでいる」など財産、金銭に関する被害妄想。退院後も訴えはあるが被害妄想、攻撃的言動が続いた。なんとか在宅療養を続けていたが、家人の病気もあって家庭介護限界となり平成11年3月22日(85歳)当院入院となった。
3. 入院後の経過
入院後は胸苦しさを訴えるものの攻撃的言動はなく、精神的に比較的安定。メンタルケア、精神療法、一般状態の改善で自宅後帰も可能となる可能性もありそれを目指した。杖歩行とつかまり歩きだが、歩行不安定。見守り介助を要する状態。グループホームケアに参加してアクティビティーの向上、役割を持つ中での社会性認知能力の向上、身体機能能力の維持・向上を目指した。徐々に不安や(入浴やグループホームケアへ参加の)拒否、頭痛、疼痛、胸苦、全身倦怠等訴えるようになり、悪態、被害的言動も目立ってきた。入院時 HDS−R16/30点だったが、徐々に認知障害が進行。平成12年10月(86歳)には今食べたことも忘れてしまい、サインもできず、肺用性の機能低下が進んで、車椅子生活でADL全般に介助を要する状態となった。平成12年12月重度の気管支喘息発作、うっ血性心不全、胸水貯留を併発。一時危篤状態となり補液利尻剤、強心剤、気管支拡張剤、ステロイドホルモン製剤・酸素吸入等にて積極的加療。平成13年1月には、下血、下肢血行不全(壊疽)も出現し重篤化したが平成13年2月(87歳)には心不全がようやくコントロールがつくようになり、食事摂取も可能となってきた。しかし、この後も、一般状態には徐々に悪化、喘息、心不全、腎機能障害、全身浮腫を繰り返し、多臓器機能不全の状態となっていった。この間、痴呆症状もゆるやかに進行。せん妄もしばしばで、満州に行っているつもりになっての話などをしていた。平成14年1月になって喘息、呼吸困難から再度重篤な心不全に移行。加療にて一旦回復し食事もできるようになったが、4月下旬下血、心不全悪化から腎不全も併発。衰弱苦明。一般状態重症(末期状態)となり、4月下旬には意識レベルも低下。回復の見通しなく、ご家族にその旨を告知した。5月4日(88歳)AM11:46ご家族に見守られ永眠された。
4. コメント 3年2ヶ月
向精神薬は、アモバルビタール0.1g、ブロムワレリル尿素0.5gを就眠薬として1年半ほど。
いろいろな訴えの多い人で、頻回のナースコール、冷や汗や不安の訴え、プラセーボが効果があった。娘の義母も当院に入院していたが、急死。
一番頭の良い子、よく出来たのに、私より先に死んで、と一言長男の嫁には皮肉。
喘息、心不全のエピソードが何回か。最後は5日間が少し呼吸苦が辛そうだった。
セディーションの適応はあったか?
症例10 資料
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症例 10 図表記
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