日本財団 図書館


症例8
1. 症例8の概要
B.T 年齢101歳(死亡時) 女性
病名 (1)老年痴呆 (2)両側変形性膝関節症 (3)廃用症候群 (4)腰椎圧迫骨折
 
2. 当院へ入院するまで
 生来、健康
 84歳頃より時々、夜間不穏となることがあり、当院ショートステイを利用するようになった。徐々に動くことが少なくなり、膝痛も出現。平成5年(93歳)より当院リハビリを利用。疼痛治療、起立、歩行訓練を受けるようになった。
 平成6年12月(94歳)、第7回目のショートステイ利用入院となった。12月17日、退院を前にしりもちをついて腰椎圧迫骨折受傷。在宅生活困難となり、そのまま継続入院となった。
 
3. 入院後の経過
 ご高齢であり、体力、機能を温存しながらできるだけ家庭生活に近い入院生活、QOLの上々を目指し、余計なご負担はおかけしないように、しかし、残存機能はできるだけ維持していただけるように、合併症の早期発見・早期治療と平行して愛護的ケアに努めた。
 具体的には、離床、経口摂取、アクティビティの提供、認知訓練、メンタルケア、座位耐性、基礎体力の維持、起立歩行能力の維持、ADLの自立度の維持、尊厳の尊重、ご家族との関係コミュニケーションの維持向上、等々。
 徐々にだが、特に平成13年(100歳)に入って、老衰状態、体力低下が進行。感染症も繰り返した。徐々に食欲が低下し、嚥下能力も低下した。
 9月に舌下面に原因不明の潰瘍が出現。そこに二次感染を起こして舌が著明に肥大した。対症的に補液、抗生剤治療して感染症は改善したが、嚥下困難は悪化。意識レベルも徐々に低下し、一般状態が悪化した。
 10月には下血あり。一般全身状態極めて不良となった。11月に入って昏睡、血圧低下、老衰末期状態となり、ご家族に告知。
全身浮腫あり。血管確保困難。下血していて経鼻経管栄養の適応なく、IVHも適応なし。101歳というご高齢も考慮し、静かにみとることとした。
 その後、バイタルサインに大きな変化なく経過。11月13日深夜、心房細動、努力呼吸となり、ご家族来院。その午後、心房細動改善、呼吸も平静となった。11月14日には開眼し、水分15ml摂取できた。11月15日午後、昏睡しながら呼吸平静。穏やかな表情。バイタルサイン安定。血圧は70台。
 11月19日am8:50EKG上、不整脈頻発し、呼吸停止。ついで心停止。
 Am9:14やすらかに永眠された。
 
4. コメント 7年間入院
 向精神薬はフルニトラゼパム0.5mg〜1mg 就眠薬として投与。
 短期入院を繰り返していた人だが、腰椎の圧迫骨折をきっかけに、7年間の入院となってしまった。在宅では、ここまで長生きできなかったと思われるが、最後の16日間は15cc/1日位の経口摂取で生存していた。100歳を生きられる人の生命力に私たちは驚く。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION