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III 研究の成果
 本研究は、緩和ケア病棟入院中の患者を看取った家族の悲嘆反応や家族システムの変化より、予期悲嘆を支える死別期の家族への援助を明らかにすることであった。その結果以下のことを得た。
(1)死別1ヵ月後の家族の思いは、【1. 死別の受け止め】【2. 死別に係る感情】【3. 家族のケア】【4. 悲嘆の癒しや克服の方法と結果】【5. 受けたケアと評価】【6. 現在及び今後の生活】の6つのカテゴリーから構成されている。
(2)【家族のケア】【受けたケアと評価】【悲嘆の癒しや克服の方法と結果】は、緩和ケア病棟でのケア体験というカテゴリーにまとめられ、緩和ケア病棟で受けたケアが、回復プロセスに影響を与えている。
(3)【死別の受け止め】【死別に係る感情】【現在及び今後の生活】は、死別による悲嘆反応というカテゴリーにまとめられ、緩和ケア病棟でのケア体験が悲嘆反応に影響を与えており、回復プロセスにも影響している。
(4)緩和ケア病棟でのケア体験や死別による悲嘆反応は、家族システムに変化を与える。
(5)家族が臨死期を実感するのは、医療従事者の言動と患者の目に見える病状変化からである。
(6)死別期に、患者本人の望む日常性を取り入れた援助は、家族によい影響を与える。
 
IV 今後の課題
 今回の研究は、特定の一箇所の病棟で行ったため、この結果を一般化するには、今後研究の場を広げ研究を継続していく必要がある。また、研究対象者が家族の中の配偶者に限定されたため、続柄を限定せず多くの事例を検討していくことが必要である。家族は、個々さまざまである。個別の家族を理解するために、顕在化している現象のみにとらわれず、その意味や潜在していることを洞察する力をもつことが家族ケアをしていく者には求められる。今後家族ケアを提供する看護師の資質も含め研究していきたい。
 
V 研究の成果等の公表予定(学会、雑誌等)
 研究成果は、日本家族看護学会第10回学術集会(期日:2003年9月27日〜28日 場所:高知市文化プラザ かるぽーと)で発表する予定である。
 
引用・参考文献
1)飯塚友道:末期がん患者とその家族のホスピスへの要望に関する調査、ターミナルケア、Vol.9, No.1, 73-79, 1999
2)鈴木志津枝:終末期の夫をもつ妻への看護―死亡前・後の妻の心理過程を通して援助を考える、看護研究、Vol.21, No.5 23-34, 1988
3)小川恵子:在宅ターミナル期における癌患者の死別後の家族と看護職による訪問看護の評価、日本看護科学会誌、Vol.21, No.1 18-28, 2001
4)吉田智美:がん終末期で症状緩和をうける患者の家族のストレス・コーピング、日本看護科学会誌、vol.16, No.3, 10-20, 2000
5)鈴木香織:在宅ターミナル期患者の家族機能、保健婦雑誌、Vol.53, No.3, 203-211, 1997
6)荒川靖子:終末期患者の家族に対する看護―家族ダイナミックスへの看護介入のあり方、看護研究、Vol.22, No.4,35-53, 1989
7)立木茂雄:家族システムの理論的・実証的研究、川島書店、188-207, 1999
8)宮本裕子:配偶者と死別した個人の悲嘆から回復にかかわるソーシャル・サポート、看護研究、Vol.22, No.4, 15−34, 1989
9)アルフォンス・デーケン:死を看取る、メヂカルフレンド社、2001
 
表1. 患者と配偶者の属性    
No 患者年齢 配偶者年齢 病名 入院期間
1 75歳 70歳 胆管癌 22日
2 59歳 54歳 胃癌 70日
3 71歳 68歳 膀胱癌 130日
4 55歳 51歳 胃癌 10日
5 79歳 72歳 骨髄腫 90日
 
表2. 死別後の家族の思い
カテゴリー コード
1. 死別の受け止め 1−1 時期
1−2 何を持って受け止めたか
2. 死別に係る感情 2−1 悲嘆・寂しさ・後悔・喪失感
2−2 困難・あきらめ・苦労
2−3 希望
2−4 受容・納得・了解
2−5 実感がない・信じられない
2−6 その他
3. 家族のケア 3−1 直接ケア
3−2 思い出づくり
3−3 その他
4. 悲嘆の癒しや克服の方法と結果 4−1 癒しや克服の方法
4−2 癒しや克服の結果
5. 受けたケアと評価 5−1 ケアと評価
5−2 環境と評価
6. 現在及び今後の生活 6−1現在の生活
6−2 将来の方針・希望
 
表3. 家族システムの変化(入院中と死別1ヶ月後)
No. 入院中の家族システム 死別後の家族システム
1 バランス型 (キッチリ・ピッタリ) バランス型 (柔軟・ピッタリ)
2 中間型 (柔軟・ベッタリ) 中間型 (柔軟・ベッタリ)
3 極端型 (融通なし・ベッタリ) 中間型 (融通なし・ピッタリ)
4 バランス型 (柔軟・ピッタリ) バランス型 (柔軟・ピッタリ)
5 中間型 (融通なし・ピッタリ) 極端型 (融通なし・ベッタリ)
 
図1. カテゴリー間の構造図
(拡大画面:19KB)
 
図2. カテゴリー別割合







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