IV. 今後の課題
終末期に向けたケアのアウトカムを評価する指標として死別後の「介護者の満足度」を用いることの可能性と限界が示唆された。特に訪問看護師が介護者の満足度を推定する場合、介護者自身の評価する満足度にずれがある可能性がある。この推定のずれは、看護師が推定した「介護者の満足度」をアウトカムとして用いる上で検討課題であると同時に、訪問看護師が自らの死生観やケアをふりかえる上での課題ともなると考える。今後、満足度に相違があった事例についてずれの状況と要因を具体的に検討し、ずれを減少し高齢者本人および家族の満足度を高めるために、援助者側の視点に何がどのように必要とされるのかを明らかにしたいと考える。
今後の課題として、今までの調査結果の成果を踏まえ、(1)高齢者のがんに特化しない「ターミナル・ケアマネジメント・マニュアル」を刊行すること、(2)在宅高齢者のターミナルケアに関する研究交流と啓発を兼ねた公開シンポジウムを継続して開催すること、(3)インターネットを活用した患者の登録・モニタリングを含むマネジメントプログラムとそれに必要なマネジメントツールの開発することをあげ取り組んでいる。
V. 研究の成果等の公表予定
日本在宅ケア学会などでの発表と、関連学会誌への投稿予定。
参考文献
1)長寿社会文化研究会(代表=宮田和明):介護保険下における在宅高齢者の介護問題とターミナルケアに関する調査報告書. 長寿社会開発センター委託事業(2000)
2)日本福祉大学福祉社会開発研究所:在宅高齢者ケアのプライオリティに関する研究事業;在宅高齢者のターミナルケアに関する全国訪問看護ステーション調査報告書(第2次調査). 社会福祉・医療事業団・高齢者・障害福祉基金助成事業(2000)
3)日本福祉大学福祉社会開発研究所:在宅高齢者ケアのプライオリティに関する研究事業;在宅高齢者のターミナルケアに関する全国訪問看護ステーション調査報告書(第3次調査). 社会福祉・医療事業団・高齢者・障害福祉基金助成事業(2001)
4)樋口京子、近藤克則、牧野忠康ほか:在宅療養高齢者の看取り場所の希望と「介護者の満足度」に関連する要因の検討−終末期に向けてのケアマネジメントに関する全国訪問看護ステーション調査から−. 厚生の指標、48:8-15(2001)
5)丸光恵. 「看護援助の効果」研究の意義と限界. インターナショナルナーシングレビュー. 22(2)、20-21(1999)
6)Peter, A Singer,Douglas K Martin,Merrijoy Kelner. Quality End-of-Life Care. JAMA, 281(2):163-168(1999)
7)Mahon, P. Y.(1996).An analysis of the concept 'patient satisfaction' as it relates to contemporary nursing care.Journal of Advanced Nursing, 24, 1241-1248
8)吉田光子:ホスピスにおける看護婦の「死」観に関する研究−“良い看とり”をめぐって−、日本看護科学会誌、19(1):49-59(1999)
9)戈木クレイグヒル滋子. 最期の場を整える;看護技術としての子どもの死の時期の予測. 日本看護科学会誌、21(3):50-60(2001)
1. 在宅療養開始時から死に至るプロセス |
1)介護に関する評価: |
(1)できる限りのことはした (2)介護に関する後悔 (3)家族の協力を評価 (4)長い期間の介護を評価 (5)他者からの評価 (6)本人からの評価 |
2)専門職に関する評価: |
(1)プラスの評価 (2)マイナスの評価 |
3)在宅での本人の過ごし方を評価: |
(1)好きなように過ごせた、(2)基本的ニードを満たせた (3)一時的に家で過ごせた |
4)告知についての評価 |
|
2. 死の迎え方 |
1)臨死期の評価: |
(1)予期せぬ死、(2)見守りの中での死、(3)安らかな死、(4)直接死に関わる対応をした後悔 |
2)病院死を評価: |
(1)肯定的な評価、(2)やむを得ないと評価、 |
3)在宅死を評価: |
(1)望み通りの在宅死 (2)家で死ねた |
3. 「死別」に対する意味づけ・解釈 |
1)介護者の「死」に対する肯定的意味づけ: |
(1)高齢 (2)本人の気持ちを代弁 (3)死の教育的効果 |
2)死に対する尽きない悔い |
(1)心残り (2)全体的な後悔 |
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オッズ比 |
|
Exp(B)の95.0%信頼区間 |
|
|
下限 |
|
上限 |
介護者自身の評価による「満足度」 |
|
|
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|
|
介護者が配偶者以外*1 |
0.76 |
|
0.32 |
− |
1.83 |
死亡者の年齢が80歳以上*2 |
1.79 |
|
0.78 |
− |
4.1 |
死亡場所の希望は非自宅*3 |
2.94 |
|
0.32 |
− |
26.78 |
死亡場所の希望は知らなかった*3 |
2.91 |
* |
1.1 |
− |
7.67 |
死の時期の予測ができた |
0.61 |
|
0.26 |
− |
1.43 |
死への心構えや準備ができた |
3.01 |
* |
1.28 |
− |
7.13 |
できる限りの介護ができた |
5 |
* |
1.3 |
− |
19.29 |
死亡者の望みがかなえられた |
1.06 |
|
0.44 |
− |
2.59 |
死亡場所が自宅*4 |
1.55 |
|
0.69 |
− |
3.45 |
死後の専門職による支えや慰め |
2.18 |
* |
1.05 |
− |
4.54 |
訪問看護師の推定した「介護者満足度」 |
|
|
|
|
|
介護者が配偶者以外*1 |
2.99 |
* |
1.09 |
− |
8.18 |
死亡者の年齢が80歳以上*2 |
0.64 |
|
0.25 |
− |
1.64 |
死亡場所の希望は非自宅*3 |
0.57 |
|
0.11 |
− |
2.94 |
死亡場所の希望は知らなかった*3 |
0.92 |
|
0.36 |
− |
2.34 |
死の時期の予測ができた |
3.35 |
** |
1.38 |
− |
8.13 |
死への心構えや準備ができた |
1.17 |
|
0.48 |
− |
2.86 |
できる限りの介護ができた |
1.04 |
|
0.2 |
− |
5.42 |
死亡者の望みがかなえられた |
2.22 |
|
0.89 |
− |
5.54 |
死亡場所が自宅*4 |
2.47 |
* |
1.07 |
− |
5.69 |
死後の専門職による支えや慰め |
1.6 |
|
0.7 |
− |
3.66 |
**:p<0.01,*:p<0.05 |
*1:配偶者と比較 *2:80歳未満と比較 *3:死亡場所の希望が自宅と比較 |
*4:死亡場所が自宅でないものと比較 ※その他は「しなかった」「できなかった」ものと比較
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