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平成14年度
ホスピスナース養成研究事業助成報告書
特別医療法人 栄光会 栄光病院
6.1 事業の目的・方法
1)目的
 末期がんやその他の重篤疾病による死亡者が年々増加する中、ホスピスや緩和ケア病棟に従事する熟練ナースの不足は深刻である。この事は、とりもなおさず一般病院・一般病棟におけるターミナルケアに対する認識・取り組み・経験が未熟であることを示している。ホスピス・緩和ケア体制の充実のためには、その事に関心のあるナースを育成し、ターミナルケアの裾野を広げることが先決であると考える。
 したがって、
(1)一般病棟における、ターミナルケアに対する意識の向上
(2)一般病院・一般病棟における緩和ケアの充実
(3)ホスピス・緩和ケア病棟に従事するナースの充足
(4)ホスピス・緩和ケアの教育体制の充実
を、目指すことを目的として、研修活動を実施する。
 
2)方法
(1)笹川医学医療研究財団及び日本看護協会が選考した看護師に対し、指定された期間に実習を実施する。
 
(2)ホスピスナース養成研修実習要項の発送
 (資料1〜3参照)
 
(3)研修申込書に基づき受入れ準備
・緩和ケア病棟・宿泊寮
 
(4)研修担当者による打ち合わせ
・スケジュールについて
・実習担当について
・期間中の世話係について
 (以上資料45参照)
・その他の資料による案内
 「栄光病院のごあんない」「手と目と(病院機関誌)」「ホスピス通信『いのち輝く』」「ホスピスのあんない」
 
(5)研修開始
・実習の進行状況把握、調整
・研修の目的が達成できているか、毎週金曜日に懇談会を持ち確認を行い修正する。
・希望に基づき、講義を行う。
 
6.2 研修内容・実施経過
1)研修内容
実習
(1)日勤・夜勤を勤務ナースとともに、患者・家族と接しながら、その技術的対応の仕方、精神的関わり、方法について体験する。
(2)症状コントロールの実際を担当ナースと実践する。
(3)インフォームドコンセントの必要性・留意点を学ぶ。
(4)チームの役割・チームアプローチについて実際を学ぶ。
(5)ボランティア活動に参加し、活動の実際を知る。
(6)回診に同行して、コミュニケーションの取り方・患者の反応を学ぶ。
(7)在宅ケアに同行して、実際を学ぶ。
 
講義:希望時・必要時行う
(1)全人的ケア
(2)疼痛・症状コントロール
(3)スピリチュアル・ケア
(4)コミュニケーション
(5)ボランティアのかかわり など。
 
2)実施経過
 
1)ホスピスナース養成研修スケジュールを土台に実施
(1)オリエンテーション
○研修全期間のスケジュール・内容
○研修期間中の心得
(2)病棟におけるオリエンテーション
○病棟の構造
○一日の流れ(日勤・夜勤)
○研修体制・担当者の紹介
○患者紹介
(3)実習開始
○担当ナースと行動をともに実践
(4)進行状況をチェックし、講師と時間調整を行う。
(5)毎週末に、懇談会を行い効果的な実習になるように調整・修正する。
 
2)評価
(1)研修生と担当者・関係者と懇談
○研修全体について、評価・反省・感想を尋ね
○目的が達成されたかを確認
(2)研修レポートの提出を要請
(3)レポートの内容と、実習状況より評価を行う。
 
3)修了式
 修了証書授与
 記念品贈呈
 
6.3 成果
 14年度は「看護協会の緩和ケアナース養成研修6週間」の内3週間の実習を担当させていただくことなり、(1)講義がないこと (2)1週間短縮したこと (3)募集業務がなくなったこと、でとても楽になりました。
 しかし、研修生の多くは、現場での実際に即した講義も希望されるため、特に聞きたいテーマについて対応させていただきました。
 主に1. 栄光病院のホスピスの特徴である全人的ケア
2. スピリチュアルケア
3. 疼痛コントロール、などで
4. ボランティア活動、については講義に入っていないのでご紹介し
5. 訪問看護、もぜひ、体験していただきたく2日間組み込みました
 やはり、講義ではつかめない「ホスピスケアの実際」「患者さまの反応」「コミュニケーションの取りかた」などに関心と不安があるようです。でも、2週目に入ると会話も弾むようになり、看護の喜びを感じられるようになってこられました。このころに担当患者さまを決めて深く関わっていただき、3週間目には夜勤を組み込み、夜間帯の患者さまの状況や訴えを理解していただきたいと計画いたしました。
 皆さん、看護婦としての経験とすばらしい素質をお持ちなので、病棟に・患者さまに・そしてご家族に溶け込まれ、1日1日を有意義に過ごされていました。最後の時は別れ難く、あいさつ回りはなみだ、涙で幕となるのが常でした。
 3週間は、慣れるに従い早く感じられるようでもう少し時間が欲しいと思われる方が多いようです。
 現在ホスピスに関わっている方は1名、予定されている施設が1ヶ所という状況ではありますが、全員の方が「これが看護だ!」と感激し、今後に生かしたいと感想を述べられます。「ホスピスは、ゆっくり時間が流れゆとりがある」といわれますが、スタッフは「忙しい、忙しい!何とかしてしてください」という。このずれはなんだろうか?
 3週間という短い時間では有りますが、その中でホスピスケアの大切なところをしっかり学んでいかれたと感じました。
1. 症状コントロールの大切さ、その方法
2. コミュニケーションの必要性、傾聴のもたらすもの
3. スピリチュアルペインの存在
4. 家族ケアの重要性
5. チームの絆とアプローチの大切さ
6. 家族会や行事の意味 等など
 患者中心の看護のあり方に気付き、そこから生まれる看護する喜びを体験され、互いに癒し、癒される関係が存在するのだと言うことを忘れないでいただきたい。この感動がどのようにそれぞれの施設で生かされるか分からないが、「少しでも患者のために!」という思いをもって研修報告を聞いていただきたいと思います。忙しい中、貴重な3週間という長い期間を送り出されたのですから・・・。
 
 出来ることならもっと緩和ケア病棟で日々「これでいいのだろうか?」と不安を抱えて努力している人を研修生として受け入れて欲しい。現場がしっかりしていないと緩和ケアは発展していかないのではないでしょうか。そして、その前に研修に出せるゆとりが欲しいし、受け入れるゆとりも欲しいとつくづく思っているところです。
 
以上







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