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平成14年度
ホスピスナース養成研究事業助成報告書
国家公務員共済組合連合会 六甲病院
5.1 事業目的・方法
 現在ホスピス・緩和ケアの施設が増加する一方、ホスピスや緩和ケア病棟に従事する熟練ナースが不足している。こういった状況を危ぶみ緩和ケアの質の向上を図るため、以下の目的で研修を行った。
 
(1)緩和ケアの基本理念を理解し、実践を通して緩和ケアに必要な知識、技術、態度を習得する
 
(2)チームアプローチの実際を学び、チームの中でのナースの役割を考える
 
(3)各施設においてケアの具体的な在り方を見出し実践できる
 研修は日々の研修計画にそって又研修生の到達目的を、その主体的な動きの中で実践された
 メンバーは当緩和ケアのナース・医師・ボランティア・音楽コーディネータ・チャプレンである
 この事業を引き受けに当たり、当緩和ケアにおける教育体制の充実・スタッフの意識付けに有効であった
 
5.2 内容・実施経過
(1)研修対象者
・現在ホスピス・緩和ケアに勤務している
・ホスピス・緩和ケアの開設を準備している
・一般病棟で終末期ケアに取り組んでいこうとしている
(2)研修プログラム
〈第1週〉
・研修の目的・目標を明確化する
i)緩和ケアの特殊性を理解する
ii)緩和ケアの一日の流れがわかる
・具体的な日常生活の援助・症状マネージメントについて学ぶ
・緩和ケアに必要なケアの継続性について学ぶ
〈第2週〉
・チームにおける看護師(プライマリーナース)の役割を理解し、チームアプローチを実践できる
・前半の研修を振り返り、評価し後半の研修の目標を再確認する
〈第3週〉
・コメディカルの役割を理解する
(ボランティア・チャプレン・精神科医師・アロマテラピー・音楽療法士)
・希望時には外来診療(面談)・夜間のケアについて学ぶ
・研修の振り返り、及び評価を行い今後の課題を明確化する
 
 講義・実習内容を以下のように実施した
 
・緩和ケアの基本理念
・緩和ケアにおけるナースの役割と一日の流れ
・コミニュケーション技術
・症状コントロールの実際
・チームアプローチの方法
・家族・遺族ケア
・日常生活への援助
・ボランティア活動への参加
・緩和ケア外来の実際を知る
・入院から退院までのプロセスを知る
・看取り前後のケア
 
(1)研修期間
・日本看護協会、笹川医学医療研究財団より3週間の実践研修
・広島県看護協会からの依頼、研修は2週間とした
 
(2)研修方法
・研修生は緩和ケアスタッフと共に行動し、ケアの実際を体験する
・研修前に講義を受けている看護協会からの場合は実習を主として医療スタッフからの講義はその都度希望により取り入れた
・3週目より患者の受け持ち、実習の内容など能力に合わせて調整した
 
(3)研修者
平成14年5月 研修生 1名(関本クリニックより)
平成14年6月 研修生 2名(看護協会より)
平成14年6月 研修生 1名(鐘紡記念病院より)
平成14年7月 研修生 1名(鐘紡記念病院より)
平成14年7月 研修生 2名(看護協会より)
平成14年8月 研修生 2名(看護協会より)
平成14年8月 研修生 1名(薬師山病院より)
平成14年9月 研修生 2名(看護協会より)
平成14年10月 研修生 2名(看護協会より)
平成14年11月 研修生 2名(看護協会より)
平成15年1月 研修生 2名(看護協会より)
平成15年1月 研修生 1名(広島県看護協会より)
平成15年2月 研修生 1名(広島県看護協会より)
平成15年2月 研修生 1名(看護協会より)
平成15年3月 研修生 2名(広島県看護協会より)
 
計25名の研修生を受け入れた
4週間コース 1名
3週間コース 20名
2週間コース 4名
 
5.3 成果
(1)研修受け入れ体制の見直しができた
 今迄は研修生の目標に沿って到達可能な援助に視点を合わせていたが、平成14年度からは3週間コースを基礎としたカリキュラムを設定することにより、内容の充実を認識することができた
 
(2)研修内容の評価について
 日々の評価はその日の指導者と共に今後の課題を明確にし、中間と最終日には病棟師長と共に研修プログラムの内容と目標を再確認しながら評価を行った
 
(3)研修生からのレポートによる評価
(1)ホスピスで働いている研修生からは
・他施設で研修することで自施設との比較が出来たり、スタッフのケアを傍で見ることにより、自分のケアの振り返りが出来た
・緩和ケアとは?と原点に戻れた
・自施設のケアを客観的にみることができ、「ホスピスとはこうあるべきだ」と考えがちであるが、もっと自由でフレキシブルに考えていきたい
(2)緩和ケア病棟準備施設からの研修生より
・講義を受けても理解しづらい分野が研修により患者の心の面を理解しようと聴く姿勢が必要であることが認識できた
・患者主体であり症状のコントロールが第一と思った
・「家族の中の患者」を支援していくためには、家族自身が遺族になるときに悔いが残らないような関わり方を学んだ
・終末期の患者さんの家族への声かけの大事さを学んだ
(3)一般病棟からの研修生より
・不十分なコミニュケーションスキル等で患者さんやご家族に充分なケアが提供されていなかった
・家族が患者の死を中々受容できない時は、医療者が押し着せることはなく、自然に受け入れていく様を見守ることも大切である事を学んだ
・チーム全体で患者・家族に関わりコミニュケーションスキルの充実、看取りまできちんと責任を持って関わる看護師の姿勢を学んだ
・緩和ケア病棟でなくとも、質の差のないケアが提供されるべきと実習を通して強く感じた
・学びと体験をいかし一般病棟でも充分出来ることがあるんだと感じる事が出来たことが大きな収穫となった
 
5.4 当院における今後の課題
(1)症状コントロールやケアの実際面において研修が出来たところと出来なかったところを明確にしてチェックできるようにリストを作成
 
(2)緩和ケアスタッフも原点に戻り化学的根拠に基づいた指導が出来るように体制を構築する
 
研究・研修計画及び内容
 
研修期間(3週間) 研修の目的 ・緩和ケアの基本理念を理解し、実践を通して緩和ケアに必要な知識、技術、態度を習得する
・チームアプローチの実際を学び、チームの中でのナースの役割を考える
・六甲病院緩和ケア病棟において、ケアの具体的な在り方を見出し、実践できる
研修スケジュール
期日 達成目標 方法 指導
第一週目 ・研修の目的・目標を明確化する
(1)緩和ケアの特殊性を理解する
(2)緩和ケアの一日の流れがわかる
・具体的な日常生活の援助・症状マネージメントについて学ぶ
・緩和ケアに必要なケアの継続性について学ぶ
指導Nsと共に行動し、ケアの実際を体験する 研修報告書などの書類の配布
中間面接(1週終了後)
第二週目 ・チームにおける看護師(プライマリーナース)の役割を理解し、チームアプローチを実践できる
・前半の研修を振り返り、評価し後半の研修の目標を再確認する
指導を受けながら患者を受け持つ 希望があれば面接を行う
第三週目 ・コメディカルの役割を理解する(ボランティア・チャプレン・精神科Dr・アロマテラピー・音楽療法士)
・希望時には外来診療・夜間のケアについて学ぶ ・研修の振り返り、及び評価を行い今後の課題を明確化する
  研修終了後に面接(婦長)







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