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平成14年度
ホスピスナース養成研究事業助成報告書
財団法人ライフ・プランニング・センター
ピースハウスホスピス
 
2.1 事業の目的・方法
1. 目的
 ホスピス緩和ケアの実践の場に臨み、自らの体験を通して、また、チームを構成する各専門職からその果たす役割について直接指導を受けることにより、下記の目的を達成できるような研修プログラムを提供する。
 
研修の目的
(1)ホスピス緩和ケアの基本理念を、実践を通して理解し、チームアプローチの実際を学ぶ。
(2)ホスピス緩和ケアに必要な知識、技術、態度を習得する。
(3)自施設におけるケアの実践のための具体的な方策がたてられる。
 
2. 方法
1)対象
 日本看護協会の「緩和ケアナース養成研修」受講生、同協会「認定看護師教育専門課程ホスピスケア学科」受講生を受入れる。
 
2)方法
・日本看護協会からの研修依頼・研修名簿を受け、スケジュール調整、研修受入れのための準備をし、研修生への案内を送付する。
・プログラムにそって研修を実施し、研修の成果について、研修生とともに評価する。
・教育委員会を設置し、研修の進め方、指導方法、教材などについて検討し、研修受入れについて常に再評価しながら進める。研修担当者の学習も平行して行う。
 
2.2 内容・実施経過
1. 研修期間
 「緩和ケアナース養成研修」受講生の場合は3週間、「認定看護師教育専門課程ホスピスケア学科」受講生の場合は8週間、後者については、第1週目に当財団の訪問看護ステーションでの在宅ケア研修が含まれる。
 
2. 研修内容
 日本看護協会において基本的な講義を受けているため、研修プログラムは、両受講生とも臨床の場で、ナースと行動を共にしながら、直接体験することを中心とするが、その他、チームを構成する各専門職からその果たす役割について直接指導を受ける機会、ケアの継続を学ぶための夜間業務や在宅ケアの体験、また、各種勉強会への参加など、各人の研修目的に添って、研修生自らが選択できるプログラムを提供した。
 図1−1が基本の研修プログラムで、選択制として図1−2のプログラムを提示し、研修生が自ら学びたいものを選択して、自分の研修プログラムを完成することとした。
 
3. 研修の進め方
・教育委員会において研修プログラムの検討を行い、実際の受入れ準備は教育研究所が行う。
・研修担当ナースが、各研修の目的に添った研修プログラムの作成、日々のスケジュール調整、研修生とスタッフとの橋渡しなど、研修現場におけるコーディネーションを行う。
・研修の実際においては、担当ナースだけでなく、他の看護スタッフも研修生とともに行動し、看護以外の専門職はその役割について直接指導することがあり、また、ボランティア実習においてはボランティアが直接説明するなど、ホスピス緩和ケアに参与する全てのチームメンバーが研修生への指導に関与する。
・研修初日の研修目的の確認、最終日のまとめは、研修担当ナース、看護部長、教育研究所所長が出席して行い、研修全体の責任、コーディネーションは教育研修所所長が担う。
 
2.3 成果
1. 受講者の背景
 平成14年度の受講者は、「緩和ケアナース養成研修」受講生が14名、「認定看護師教育専門課程ホスピスケア学科」受講生が2名、合計16名であった。年齢は、26才から48才、平均32.6才で、主任以上の管理職は2名、ホスピ緩和ケア病棟に勤務している者は8名であった。
 
2. 研修生による評価
「緩和ケアナース養成研修」受講生は、事前に日本看護協会より実習報告書が渡されており、最終日に提出していただいている。この報告書の中から、実習期間、時期、プログラムの内容、実習受入れ体制、実習指導体制について、14名の研修生による評価を別紙のようにまとめた。
 今年度より、日本看護協会において3週問の講義を受け、その後の3週間の実習時期は、講義から継続するもの、いったん現場に戻った後あらためて実習にのぞむものなど、様々であった。全ての研修生が希望の時期を選べなかったようであるが、大きな混乱もなく進められた。講義を終えてすぐ実習に入る場合は、理論と実際を結びつけやすく、逆に、いったん自施設に戻った後に実習をする場合には、自施設の課題を明確にして実習にのぞめるなど、選択した時期によるそれぞれの利点を生かしていたように思う。
 プログラムの内容については、各人の研修目的にそって選択できる方法を取入れたことが高く評価されたようである。例えば、緩和ケア病棟開設準備中の者は、各専門職の講義やボランティアの組織作り、管理的な立場にある者は看護管理や教育に関心を示し、また、一般病院からの研修生は患者との関わり方や家族への対応など、ホスピスにおける看護の実際を多く体験することを希望するなど、さまざまであった。研修生自身でプログラムを完成することで、研修への自己責任の意識が高まり、取組む姿勢も積極的になり、各人の満足度を高めたのではないかと思う。
 
3. 認定看護師研修
 本研修は、今年で5年目を迎え、日本看護協会との連携が取りやすくなり、受入れ側としてもこれまでの経験を基に準備をすることで、特別な問題はなく、有意義な研修の場を提供できたのではないかと思う。日本看護協会との連携に関しては、教員が臨床の場を訪問した際、研修生、教員、受入れ側、三者の話合いの場を意識的に持ち、それぞれのずれが生じないように工夫した。受入れ側の体制としては、これまで2人の研修生にそれぞれ担当ナースを配置していたが、今年度は、研修生への直接的な関わりは1名とし、そのナースを支援する形でもう一人のナースを配置した。その結果、エネルギーの分散や指導法のずれを予防することができたように思う。いずれにせよ互いのコミュニケーションのあり方が研修成果に大きく影響することを実感した。
 また、研修生自身が自己客観視のできる成熟したナースであったこと、受入れ側のチームの体制もこれまでより成長し、よく機能できていることで、研修生と受入れ側の信頼関係が良い方向に循環し、有意義な研修へと結びついたように思う。
 認定看護師研修は、患者を受け持ち、研修生が直接看護介入していくというもので、研修生と受入れ側のスタッフ、互いの信頼が築かれていることで、患者・家族へのケアの質が上がり、それぞれの学びも深まっていくように思う。
 
2.4 おわりに
 以上、平成14年度ホスピスナース養成研究事業の成果を述べた。
 今年度より、日本看護協会のプログラムと各施設でのホスピスナース養成研修が合体することになり、当初は、看護協会から実習施設への受講生に関する連絡が遅れるなど、多少の混乱はあったが、大きな問題もなく順調に進められたように思う。
 また、一本化されることにより、全ての研修生に基本的な講義を共通に提供でき、実習施設としても、研修生募集の作業に煩わされることなく、研修受入れ指導に集中できたことは大変良かったと思う。
 本事業が5年目を迎え、受入れ側としても、全国から訪れる研修生からさまざまな刺激を受け、学び、成長の機会をいただいているように思う。一方、年間を通して研修生を受入れることで、スタッフは通常の業務以外に研修指導という業務が入り、人手不足となることもあり、研修を受入れる施設のスタッフは研修に出られないという矛盾も抱えることになる。研修体制を整えると共に、院内のスタッフの教育、支援も今後の大きな課題と考えている。
 研修プログラム、研修修了者のその後の活動状況、受入れ側の現状など、5年間の成果と今後の課題について、本事業に関わる関係者が集い検討する時期にきているのではないかと思う。







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