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平成14年
ホスピスナース養成研究事業助成報告書
社会福祉法人 聖ヨハネ会
聖ヨハネホスピスケア研究所
1.1 事業目的・方法
 本事業の目的は近年急増しているホスピスで適切なホスピスケアを提供出来る看護師の養成である。方法は従来の笹川医学医療財団から委託された各研修施設における4週間のプログラムから変更され、本年度より笹川医学医療財団と日本看護協会緩和ケアナース養成研修が合同事業となった。まず看護協会が5月(東京)、11月(神戸)の2回、それぞれ50名に対して必要な講義を3週間行い、その後全国の指定7ホスピスで3週間の臨床研修を実施するプログラムである。
 聖ヨハネホスピスケア研究所では聖ヨハネ会桜町病院ホスピスと連携し同ホスピスで聖ヨハネホスピスケア研究所所属の看護師を専任の研修担当として配置し臨床研修を実施している。
1.2 内容・実施経過
1)第1週 ホスピスチームの働きを理解するためにホスピスボランティア、および看護助手を体験する。
 また当研究所独自に当ホスピスで行われている「遺族ケア・家族ケア」「ホスピスコーディネーターの役割」「音楽療法」「ボランティアの役割とトレーニング」などの講義も提供している。
2)第2、3週 看護師実習に入る。
(1)看護師に付いて患者・家族へのケアの在り方を1対1で学ぶ。
(2)回診に付いて医師と患者・家族とのコミュニケーションの実際と回診での看護師の役割を学ぶ。
(3)外来、往診の実際を学ぶ。
(4)ホスピスケアやその質の維持、向上のために継続的に行われている各種カンファレンスに参加し、ホスピスチームの在り方やカンファレンスの意義を学ぶ。
(5)マッサージや音楽療法などの補助的療法の実際を学ぶ。
(6)入退院検討会に参加し、どのような基準で入院が決められるのかを学ぶ。
 
1.3 成果
 今回は日本看護協会との合同事業としての研修であった。研修参加者14名に対して行ったアンケートの結果を報告する。
(1)実習期間について
適当:12名
短い:2名
(2)実習プログラムについて
大変良い:10名
良い:4名
(3)実習の受入れ体制について
大変良い:13名
良い:1名
(4)実習の指導体制について
大変良い:11名
良い:3名
 
 以上であったが、その他に提出されたレポートから研修終了者の言葉を抜粋してみると下記のようである。
(1)実習1週目、ボランティアと看護助手体験を行い今までチームの一員と言いながらも、どこか裏方としか見ていなかったことが分かり反省した。チームとは何か、その連携の在り方について具体的に学ぶことが出来た。
(2)今回の研修を通して今まで出会ってきた患者さんに申し訳なかったと思うことが多くの場面であった。でも、これから出会う患者さんのために今後自分を向上させていきたいと強く思った。
(3)今まで患者さんを看ていると思っていたが、患者さんの病気やデータは見ていたけれど患者さんのことを看ていなかった気づかされた。
(4)看護の原点とも言える「患者中心の看護」「人間対人間の看護」がチームケアの中にあった。
(5)ホスピスでは多くの職種が同じ理念を共有しながら働き活動していた。
(6)チームアプローチの実際を学んだ。
(7)一人の人間として生と死を考える機会となった。
 
 以上のように本研修は研修参加者にとって講義内容を臨床現場で確認し、さらには現場でなければ実感出来ないホスピスチームの在り方、そのケアのプロセスと実際などを生生しく体験出来ていることが分かる。また看護師としての専門性を高めると同時に人間性の向上にも大きな役割を果たしていることも分かる。本研修には十分な意義を認められる。







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