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盲導犬訓練士養成テキスト

 事業名 盲導犬訓練士養成テキストの作成
 団体名 日本盲導犬協会 注目度注目度5


7 フォローアップ
1. 要旨(フォローアップの必要性)
 共同訓練終了後、ユーザーとその盲導犬は、ユーザーの生活エリアで活動して行くことになりますが、盲導犬は新しい環境や状況に遭遇することによって新しい学習をします。その学習がユーザーにとって有益なものであれば良いのですが、必ずしもそうではありません。当然好ましくないことや誤ったことも学習して行きます。
 ユーザーは視覚的に犬の動きや様子を把握することが困難なため、盲導犬の間違った行動や判断を肯定したり、逆に正しい行動や判断を否定したりということがあります。そのようなことが続くと、盲導犬は訓練時に学習したことより、その場やその状況に応じた行動や判断をするようになります。その結果ユーザーとの歩行に危険が伴ったり、快適な生活が保てなかったりする場合があります。このような状態が固定化されてからでは、盲導犬とそのユーザーの行動や習慣を修正することはなかなか難しくなります。
 フォローアップは、問題行動が固定化される前に、インストラクターあるいはトレーナーが定期的にユーザー宅への訪問などを通じて、ユーザーと盲導犬の状態を把握し、適切な指導やアドバイスをすることで、ユーザーと盲導犬との安全な歩行や快適な生活が継続できるようサポートするものです。また、転居や転勤などで居住環境が変わった場合など、新しい居住地域のファム(ファミリアリゼーション)をすることや新しい住居での生活方法を指導することもフォローアップの目的となります。
 その他、フォローアップにはユーザーの精神的なサポートという側面もあります。インストラクターやトレーナーがユーザーと直接会って、不安なことや心配なことなどの相談を受け、話し合うことで、そのユーザーが精神的に安心することが多くあります。相談内容に例え具体的な解決策が提示できないとしても、ユーザーとしては悩みごとをインストラクターが聞いてくれ、自分の気持ちを理解してくれたことで、気分的に落ち着く場合があるものです。またユーザーが些細な悩みごとで落ち込んでいるときなどは、励まし、自信が持てるような言葉がけをすることで、その状況を脱することができる場合もあります。
 フォローアップには、いろいろな目的がありますが、最も大切なことは盲導犬協会がユーザーとその盲導犬の状態を把握することにあります。そのためには盲導犬協会とユーザーがいつでも連絡を取り合える関係を維持継続していることが大切です。
 
2.1 共同訓練直後のフォローアップ
 共同訓練直後のフォローアップは、ユーザーと盲導犬の戸惑いをインストラクターがユーザー宅に同行し、指導やアドバイスをすることで、ユーザーと盲導犬に安心感を与え、これからの安全な歩行と快適な生活をするための基礎づくりをするものです。
 共同訓練を終了したばかりの新しいユーザーは、盲導犬との生活や居住地域での歩行は初めて遭遇することばかりです。共同訓練で指導を受けたことがうまく実践できなかったり、実践できたとしてもそれがこの環境に合っているものか判断がつかないことが多くあります。また盲導犬自身も新しい環境に戸惑いぎみになり、共同訓練どおりの反応を示さないことも多くあります。直後のフォローアップでは、できる限りユーザーと盲導犬が間違った行動や学習をしないように指導することが重要です。特に犬は最初に学習したことの印象を強く持ち続け、その行動を繰り返すことが多くありますので、それが誤ったことやその不都合なことであると、後々修正することが難しくなります。そのためインストラクターは盲導犬をまだ完全にコントロールできないユーザーをサポートしながら、その場所や環境に合った学習を盲導犬にさせることが必要となります。具体的には自宅内での犬の様子把握、排便の実践、歩行方法やルートの指導などを行います。
 またユーザーが家族と同居している場合は、その家族に対しても指導やアドバイスをする必要があります。おおよそ10年間、盲導犬とその家族は一緒に生活していくことになるため、“ユーザーと盲導犬との関係”や“盲導犬との接し方”などを説明し理解してもらう必要があります。基本的には家族がユーザーとその盲導犬に対して最大の協力者であるように指導します。視覚に障害があるユーザーに代わって、盲導犬の病気の早期発見や誤った学習の回避など、家族が盲導犬との生活や歩行に協力的であることはユーザーと盲導犬にとっても有効であるはずです。
 その他にユーザーと盲導犬がその地域で歩行や生活がしやすい環境になるような働きかけをする必要もあります。具体的には役所の福祉課、警察署、保健所にユーザーと共に訪問して挨拶や説明することで、地域的な受け入れを促します。また職場への通勤に盲導犬を使用する場合は、その職場への挨拶と説明をすること、入店したいお店がある場合は、この機会に入店して受け入れ依頼をすることで、ユーザーと盲導犬がその地域で歩行や生活がしやすくなります。そのようなサポートも共同訓練直後のフォローアップには必要です。
 
2.2 定期的なフォローアップ
 共同訓練終了後は1ヶ月目、3ヶ月目、6ヶ月目、1年目など比較的頻繁に定期的なフォローアップを行い、ユーザーとその盲導犬との歩行や生活を指導・アドバイスをする必要があります。2年目以降は年1回ユーザー宅へ赴き、フォローアップをすることが必要です。
 ユーザーと盲導犬は2年、3年と年月を重ねるごとにそのユニット独自の癖が出てきます。意識的に独自性を作り上げるユニットもありますが、だいたいは知らず知らずのうちに基本から外れ、自己流で歩くあるいは生活していることが多いようです。その自己流の歩きや生活が、盲導犬を使う上で問題がなければ良いのですが、もし少しでも問題があれば修正する必要があります。インストラクターあるいはトレーナーの視点からユーザーとその盲導犬との歩行や生活が基本から大きく外れていないか、また危険性がないかをチェックをすることが、この定期的なフォローアップの主な目的です。もし危険がある場合は基本から大きく外れていることがあれば、指導・アドバイスをしてより良い歩行状態や生活環境に戻すことが必要です。時としてユーザーが独自で試行錯誤の上に習得した歩きや生活方法を披露する場合があります。そのような場合、基本から大きく外れていても、その歩きに危険性がない、かつその環境に合理的なスタイルであると判断できれば、その歩きや生活を認めることも必要です。しかし事後に認めるよりは、事前にフォローアップを行い、その環境に適した歩きや生活方法を指導することが必要です。
 
2.3 高齢な盲導犬あるいは病気の盲導犬を使用するユーザーへのフォローアップ
 8才あるいは10才を越えた盲導犬は高齢のため運動機能の低下などが目立ち始め、ユーザーとの歩行がうまくできなくなってきます。バスのステップや階段の昇降などで躊躇することやユーザーの歩行速度より遅くなったり、いろいろなところでの反応が鈍くなったりします。人間と同じくその犬によって老化の進行具合は異なるため、8才から10才を目安に、最低でも年1回以上高齢犬としてフォローアップを行い、ユーザーとの安全な歩行あるいは快適な生活ができるかを判断する必要があります。
 また、老化による運動機能の低下以外に高齢になると病気による各種機能障害も発生しやすくなります。例えば白内障などの視力低下、聴力低下、股関節形成不全による足腰の弱りなどです。若年でも慢性病などの病気を発症する盲導犬もいます。病気になると安全な歩行の確保が難しい上、ユーザーの医療費負担が大きくなります。またユーザーサイドからの視点だけでなく、盲導犬サイドからの視点としても、各種機能障害を持ち続けて、盲導犬としての作業を継続させることは望ましいことではありません。そうなると盲導犬をリタイアさせる必要が出てきます。リタイアさせるかどうかの判断はもちろんイントラクターがしなければなりません。そのため高齢な盲導犬あるいは病気の盲導犬を使用するユーザーヘのフォローアップはリタイア時期を見極めることが主な目的であり、“その盲導犬で安全な歩行ができているか”、“生活の負担になっていないか”、“盲導犬自身の状態はどうか”などをよく観察する必要があります。さらに担当している獣医師のアドバイスを受けることも必要です。最低でも年1回以上のユーザー宅でのフォローアップと共に、盲導犬協会とユーザーと獣医師の3者で連絡を取り合うことが必要になります。
 
2.4 ユーザーからの要請
 ユーザーが盲導犬と共に歩行あるいは生活するなかで、どうしてもユーザーだけでは解決できない問題に遭遇することは多くあります。例えば“転居して知らない町に引越をしたため目的地までの道がわからない”、“結婚して家族が増えたので家族に対しての説明をしてほしい”、“子供が入学したので子供との通学方法を指導してほしい”などです。また盲導犬の病気などで、歩行に問題が起きたときなど、盲導犬に対するケアとユーザーへのサポートが緊急に必要となる場合もあります。このように緊急性がある場合などはユーザーから盲導犬協会にフォローアップの要請がきますので、早急に対応しなければなりません。
 
2.5 第三者からの要請
 ユーザーやその家族以外から、ユーザーのフォローアップを依頼されることがあります。例えば“あのユーザーの歩きは見ていて非常に危なっかしいので何とかしてほしい。”とか、“あのユーザーは盲導犬の扱いがよくないので協会から注意してほしい。”など、盲導犬協会に電話などで連絡あるいは苦情が寄せられることがあります。第三者からフォローアップの要請があった場合は、“何時、何処で、誰が、どうしたと具体的なことを聞き、できれば第三者の名前と連絡先も聞いた上で、それが事実かどうかの確認を取り、フォローアップが必要かを判断します。その上でフォローアップを行います。
 その理由として社会的にまだまだ多くの人々が、盲導犬や視覚に障害がある人のことを正しく理解できていないため、そのような不理解の人、つまり第三者からの連絡や苦情をよく確認をせずにフォローアップを行うと、事実は全く違っていて、ユーザーを不快な気持ちにさせる場合もあるからです。そのため第三者からの要請があった場合は事実確認を確実にしてからフォローアップを行うことが重要です。
 もし第三者からの要請でフォローアップを行うことになった場合、そのユーザーに対してどのようにフォローアップを申し出るかはとても難しい問題です。第三者から要請があったことを正直に伝えるか、あるいはそれを隠して連絡するかになりますが、その時の状況やユーザーにより異なる対応が必要となります。
 
3.1 犬の健康状態
・体重、被毛、目、耳、口、四肢、腰、皮膚など健康状態に異常はないか(特に高齢域に達した犬については特に注意します)。
・性格に変化はないか(稟性を再チェックします。)
 
3.2 ユーザーの状態
・健康状態は問題ないか(進行性の病気を持つユーザーや高齢のユーザーは特に注意します)。
・精神的に安定しているか(精神状態と盲導犬への満足度等を把握します)。
 
3.3 ユニットとしての状態
・ユニットとして問題なく歩行できるか、あるいは生活できているか。
 
3.4 家庭内の状況
・犬の管理方法に問題はないか。
・家族のユーザーに対する接し方や盲導犬に対する接し方は問題ないか。
 
3.5 歩行の状態
・安全かつ効率的に歩行できているか。
・歩行ルートは適当か。
 
3.6 その他の状況
・生活地域や職場での受け入れは問題ないか。
 
4.1 現地フォローアップ
 ユーザーの自宅とその周辺でのフォローアップです。フォローアップはこの現地フォローアップが基本となります。自宅内や自宅周辺でのユーザーとその盲導犬の状態を把握でき、具体的な指導やアドバイスができる。
 
4.2 電話や電子メールによるフォローアップ
 現地フォローアップが時間的にできない場合、電話や電子メール等でユーザーに盲導犬の現況を報告してもらい指導やアドバイスをします。時間や費用があまりかからず、短期間に多くのユーザーのフォローアップができますが、実際の様子はわからないため、効果的な指導ができないなどの欠点もあります。
 
4.3 アンケートや報告書によるフォローアップ
 聞きたい内容をアンケートなど質問紙にして郵送し、それに解答してもらう方法です。そして返送された解答の中で、問題があると感じたユーザーに対して現地フォローアップや電話によるフォローアップなどを行います。これも短期間に多くのユーザーの現況を把握することができますが、直接ユーザー本人との受け答えができないので、形式的なものになりがちです。
 
4.4 訓練センター来所時のフォローアップ
 あるユーザーに対して計画的に訓練センターに来所してもらう、あるいはユーザーがセンターに何かの都合で来所した時にフォローアップを行います。具体的な問題を指導するというより、ユーザーと盲導犬の状態を把握することが大きな目的になります。
 
4.5 催し物や集会においてのフォローアップ
 催し会や集会で多くのユーザーが集まった場を利用して、ユーザーと盲導犬のフォローアップを行います。これも具体的な問題を指導するというより、ユーザーと盲導犬の状態を把握することが大きな目的になります。
 
 フォローアップを行った場合は日時、場所、フォローアップの種類、フォローアップの内容などの記録を必ず取って保存します。そのユーザーと盲導犬に対する協会のフォローアップ状況の把握やユーザーあるいは盲導犬の問題点を検証できるほか、代替訓練時の参考資料となったり、またユーザーが事故などに遭遇した場合、各機関に提出する書類作成のための資料にもなります。フォローアップはユーザーの精神的なサポートも重要な役割の一つと記述しました。ユーザーと直接話しあうことで、ユーザーの不安、心配ごと、悩みごとの解消をはかり、励ましや元気づけを行うことができます。しかし盲導犬のインストラクターとしてできるユーザーへの精神的なサポートはごく限られています。盲導犬に関する事象のみと考えたほうがよいでしょう。それから逸脱したプライベートな相談やサポートの要請を受けた場合などは地域の相談員や専門知識をもつ医師あるいは力ウンセラー等に依頼することが必要です。安易にユーザーとの関係に深入りしたり、専門外の知識で接したりするなど、その場しのぎの応対をすると、後々解決しがたい問題を生む原因ともなります。そうならないようフォローアップに関わるインストラクターあるいはトレーナーは自らの仕事の範囲を認識してユーザーあるいはその家族と接する必要があります。
 
 フォローアップはユーザーの精神的なサポートも重要な役割の一つとして記述しました。ユーザーと直接話しあうことで、ユーザーの不安、心配ごと、悩みごとの解消をはかり、励ましや元気づけを行うことができます。しかし盲導犬のインストラクターとしてできるユーザーへの精神的なサポートはごく限られています。盲導犬に関する事象のみと考えたほうがよいでしょう。それから逸脱したプライベートな相談やサポートの要請を受けた場合などは地域の相談員や専門知識のもつ医師あるいはカウンセラー等に依頼することが必要です。安易にユーザーとの関係に深入りしたり、専門外の知識で接したりするなど、その場しのぎの応対をすると、後々解決しがたい問題を生む原因とのもなります。そうならないようフォローアップに関わるインストラクターあるいはトレーナーは自らの仕事の範囲を認識してユーザーあるいはその家族と接する必要があります。







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更新日: 2019年3月9日

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