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6. 共同訓練について
1. 要旨
 共同訓練とはインストラクターがユーザーとなるクライアントに対して盲導犬との歩行方法や生活方法を指導することです。トレーナーによる訓練が終了した犬(候補犬)を、クライアントに渡してもすぐ盲導犬として使用することは難しいことです。例えば、車の免許証もっていない人に車を渡しても、車の操作方法や交通ルールを知らないため、公道を走ることはなかなか難しいことと同様です。
 クライアントがその犬の性格を知り、生活の方法や歩行の方法、歩行ルールなどをマスターして、盲導犬との安全で効率の良い歩行や快適な生活ができるようになります。そのために約4週間の「共同訓練」という訓練期間が必要となります。
 約4週間という限られた期間で訓練を進めていくためには、事前面接で得られたデータをもとに、計画的なカリキュラムを立てることが必要です。また、実際の共同訓練に際しては、犬の状態を良く観察すること、クライアントの心理状態を把握することなどが重要な要素となります。
 共同訓練中クライアントは、住み慣れた家を離れ不慣れな場所に来ています。その上、十分理解できない候補犬の癖、訓練上の様々な課題、指導を受けるという立場などに、さまざまな緊張感や不安感を抱きます。インストラクターはクライアントの緊張感や不安感をできる限り軽減し、リラックスして訓練を受けることができるように配慮することが求められます。
 
2.1 共同訓練の形態
 宿泊訓練 各訓練施設には候補犬と一緒に過ごせるように配慮された宿泊の設備があります。新規クライアントはこの宿泊訓練を基本としている場合がほとんどです。
 訪問訓練 代替クライアントや新規クライアントで宿泊訓練よりこの方法が有効と判断した場合に、クライアントが住んでいる地域にインストラクターが直接出向き、訓練を提供する形態です。
 通所訓練 クライアントが比較的訓練施設に近い場所に居住していて、この方法が有効と判断した場合に実施します。
 
2.2 共同訓練の期間
 基本的には、新規のクライアントは4週間以上、代替クライアントは2週間以上を訓練期間としています。訪問訓練や通所訓練など時間的に制約が生じる場合、クライアントの習得状況などによっては期間延長をするなど柔軟な対応も必要となります。
 
3.1 訓練前段階
3.1.1 訓練センター館内ファミリアリゼーション
 
<写真 館内fam>
 
 宿泊訓練の場合、訓練センター内のファミリアリゼーションを行います。ファミリアリゼーションとは知らない場所を単独で移動してもらうために、いろいろな情報や手がかりを説明し、その場所を理解してもらうことです。
 
3.1.2 用具の説明
 
<写真 必要な道具>
 
 訓練および盲導犬との生活に必要な各用具類の名称・使用法の説明をします。
 
3.1.3 命令語の指導
 命令語の発音、意味の確認、使用法の説明をします。
 
3.1.4 服従訓練
 服従訓練の意義の説明(主従関係を保つ、犬のコントロール)や服従訓練課目と実際の訓練指導を行います。服従訓練の課目としては“HEEL つけ”、“SIT 座れ”、“DOWN 伏せ、“WAIT 待て”、“STAY”などがあります。
 
3.1.5 リード歩行
 ハーネスを装着しない時、あるいはハーネスを持たずに犬と歩行する時にリードだけで犬と歩く場合があり、その方法を指導します。例えば訓練センターの館内の移動、犬の排便の時、手引きを受ける時などです。
 
3.2 日常必要な事項
排便
 犬の排便方法の指導を指導します。また便による犬の健康管理ができることも説明します。
ブラッシング
 犬のブラッシング方法を指導します。
シャンプー
 犬のシャンプーの方法を指導します。
ハウス(クレート)管理
 居室でクレート(犬舎)などを使用して犬を管理する方法を指導します。
食餌(給餌)
 犬への食餌の与え方を指導します。
テーブルでの管理
 クライアントの食事の時やお店に入店する時の犬の管理方法を指導します。
 
3.3 歩行(モビリティー)訓練
3.3.1 ハーネス(ハンドル)ワーク
 歩行前段階として、犬に装着していないハーネスをインストラクターが手で持ち、犬の動きや操作法、命令のタイミング、足の動かし方などを指導します。基本姿勢やポジション、右左折の方法、持ち替えの方法、段差の時のハンドルの動き方など実際場面をシュミレーションすることが可能です。
 
<写真 ハンドルワーク>
 
3.3.2 直線歩行(基本歩行)
 
<写真 基本姿勢1>
 
<写真 基本姿勢2>
 
 歩行の導入として、歩行の基本姿勢を保つことや犬の動きに慣れるために、単純な直線道路を使用して指導します。







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