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(14)第11−2章第11規則「代替保安協定」(旧第7規則)
(イ)MSC 76での実質審議
 仏国共同提案(MSC 76/4/17)を踏まえ、MSC 76提出の原案(MSC 76/4/1)第7規則「代替措置及び同等措置」に関し、内容的な整理から、2つに分けること(第7規則「代替」/第7規則bis「同等」)が合意された。
 また、仏国共同提案(MSC 76/4/17)が言及する定期航路(routine routes)及び短国際航海に従事する船舶の特殊性を考慮して、必要な案文が作成された。
 なお、第3項の「当該協定(agreement)で担保されるいかなる船舶も、協定で担保されていない船舶とship to ship activityを実施してはならない。」との規定について、通常的に船舶が行うbunkering等の他船舶との共同作業との整理が論点となったことから、ISPSコード第B部において、本件の解釈を規定することとなった。
(ロ)締約政府会議での審議
 本規則案に対して特段意見する国はなく、所要の編集上の修正(旧第7規則を第11規則に移動等)を検討した上で、本会議に提出された原案(SOLAS/CONF. 5/3/Rev. 2)を基本的に維持することが合意された。
 
(15)第11−2章第12規則「同等保安措置」(旧第7規則bis)
(イ)MSC 76での実質審議
 同等措置の対象を船舶のみとすること(港湾の同等措置は削除)以外は、編集上の修正を加え、MSC 76提出の原案(MSC 76/4/1)第7規則「代替措置及び同等措置」第2項を本規則として採用することが合意された。
(ロ)締約政府会議での審議
 港湾施設の同等措置に係る新第7規則terを追加するドイツ及びオランダ共同提案(SOLAS/CONF. 5/17)に対し、欧州各国が支持の意見をなし、審議の結果、当該提案を採用することが合意された。一方、サイプラスより、当該第7規則terと提案の第7規則bis「船舶の同等措置」は、実質的に同内容であることから、当該2規則を1規則にまとめるべきとの意見がなされ、当該意見に基づき、船舶及び港湾施設の代替措置を1規則にまとめることが合意された。
 
(16)第11−2章第13規則「情報の提供」(旧第8規則)
(イ)MSC 76での実質審議
 第2項の港湾施設の保安計画一覧のIMOへの通知に関し、報告の基準日をどこに置くかについては、圧倒的多数により「採択日」ではなく「発効日」とすることが合意された。
 また、報告期限については、日本、中国、トルコ及びロシアが「発効日から一年以内とする案」を支持する発言を行った。他方、米国等からは、早急に措置を実施すべきであり、「発効日までに報告すべきとする案」が提案され、多数の国が当該案を支持したが、具体的にはワーキンググループ(WG)で審議することになった。WGでは、プレナリの審議結果を受けて、議長から、船舶保安対策期限(発効日まで)との整合性及び船舶保安対策と港湾施設保安対策との一体性の観点から、「発効日までにIMOへ報告する案」が提案された。これに対して、米国、サイプラス、フランス、英国等多数国が同案を支持し、当該提案が合意された。なお、発効日以降に保安計画が作成された港湾施設については随時IMOに報告すればよいとのことであり、この旨が我が国の発言により明確に規定された。
(ロ)締約政府会議での審議
 オーストラリア提案(SOLAS/CONF. 5/19)の編集上の修正を除き、本規則案に対して特段の意見をする国はなく、所要の編集上の修正(旧第8規則を第13規則に移動等)を検討した上で、本会議に提出された原案(SOLAS/CONF. 5/3/Rev. 2)を基本的に維持することが合意された。
 
2. 船舶及び港湾施設の保安に関する国際コード(ISPSコード)の審議(議題7関連)
 
(1)ISPSコード第B部第4.5項関連「認定保安団体(Rso)の要件」
 認定保安団体の要件はその特性に応じ適用すべきとの我が国の修正提案(SOLAS/CONF. 5/11/Rev. 1)については、第11−2章第2規則の修正提案と同様な議論がなされたが、船舶に係る事項のみ、港湾施設に係る事項のみ、又はその両者の事項を担う3形態のRsoの区分けに必要との理由から、受け入れられ、結果、必要な修正をした上で、本項に規定することが合意された。
 また、ICS等共同提案(MSC 76/)のRsoの要件から、「knowledge of ship design and construction」を削除することについては、特段支持する国はなく、当該事項を維持することが合意された。
 
(2)ISPSコード第A部第9.8節及び第9.8.1節[船舶の保安計画の監督(PSC)」(旧ISPSコード第A部第9.7.1節及び第9.7.2節)
 船舶が違反する場合を除き船舶の保安計画を監督(PSC)の対象外とするか否かについて、欧州各国は公になることによる船舶への脅威の増加の懸念から、船舶の保安計画の秘匿性を確保するため、完全に監督(PSC)の対象外とすること(MSC 76/4/7)を主張したが、米国は、計画を監督しなければ船舶の適合性が確認できないとして、監督の対象とすることを主張した。欧州各国以外は、米国意見を支持したため、欧州側の懸念も踏まえ、原則、船舶の保安計画は監督の対象外とするが、船舶の不適合の明確な根拠がある場合は、当該不適合の是正目的に限り、旗国の合意のもと、船舶の保安計画は監督の対象とすることが合意された。
 
(3)船舶の保安計画と安全管理システム(ISM)の組み合わせ(旧ISPSコード第A部第9.3節)
 MSC 76において、ブラケットが付されている船舶の保安計画と安全管理システム(ISM)の組み合わせができることを規定するISPSコード第A部第9.3節について、我が国は提案文書(SOLAS/CONF. 5/11/Rev. 1)に基づき維持を主張し、一方、船舶の保安計画の秘匿性確保の観点から、欧州各国は削除(提案文書MSC 76/4/7)を主張した。欧州以外の各国は、維持することを主張したことから、引き続きブラケットを付した状態で、本項を維持することし、また、欧州側の意見も踏まえ、本項を「The Administration may allow a ship security plan to be combined with the safety management system・・・」と修正することが合意された。
 一方、本会議において、欧州各国は、再度、船舶の保安計画の秘匿性確保の観点から、本節の削除を主張した。当該意見に対し、ドラフティング委員会議長国であるサイプラスより、MSC で修正された第9.3項の実施は、「may allow」と規定するとおり、各主管庁の判断となっていること、また、仮に本節がなくても、本項の内容を実施することは可能であるとの説明がなされた。本節を規定として、維持するか否かが議論となり、ISPSコード第A部第9.8節において、船舶の保安計画は、原則、監督(PSC)の対象外とすることが決定されたことから、結果、本節を削除することが合意された。
 
(4)ISPSコード第A部第12節「船舶の保安職員」
 ノルウェー提案(MSC 76/4/13)は、一部ISPSコード第B部(非強制勧告要件)の部分を含むということで合意されなかった。
 
(5)ISPSコード第A部第13節「訓練及び操練」
 ICCL提案(MSC 76/4/10)は、一部修正の上、合意された。ノルウェー提案(MSC 76/4/13)の回数/頻度に議論が集中し、ノルウェーが同一内容で一部表現を変えた(繰練と訓練を別にした)修正案を提案し、ブラケット付き合意された。
 
(6)ISPSコード第A部第19節「検査及び証書」
 船舶の第11−2章及びISPSコード第A部の要件への適合性を確認する検査及び条約証書の発給について、国際安全管理システムコード(ISMコード)との関連性・類似性から、ISMコードに規定する検査及び証書システムを導入する韓国提案(MSC 76/4/11及びMSC 76/4/12)が、各国の支持を受け、当該提案に基づく本節の所要な修正をすることが合意された。
 なお、韓国が提案した暫定国際船舶保安証書(Interim International Ship Security Certificate)の導入については、米国が暫定的なものは保安上問題があり、検査の完全性の確保する必要があるとの理由から、導入に反対の意見をなしたが、欧州各国が会社(Company)の変更及び船舶の転籍の際のsafe guardとして有効な手段であると導入に賛成の意見をなし、結果、導入すること(第19.4節)が合意された。なお、先の米国の懸念を考慮した、暫定国際船舶保安証書に係る米国、韓国等の共同提案(SOLAS/CONF. 5/21)が本会議に提出され、当該提案に基づき、規定を作成することが合意された。
 
3. 締約政府会議決議の審議(議題8関連)
 締約政府会議において採択された決議の概要は以下のとおり。
 
(1)決議3「海事保安の強化に関する機関の更なる作業」
 IMOに対し、以下の事項に対する見直し及び進展に係る作業を要請している。
(イ)船舶の保安職員、会社の保安職員、港湾の保安職員等のトレーニングガイダンスの作成
(ロ)ロングレンジトラッキングシステムの性能基準やガイドラインの作成
(ハ)船舶の監督に関するガイドラインの作成 等
 なお、フィリピンより、本決議に関し、提案文書(MSC 76/4/5)に基づき、今後の作業として、safe manningに係る総会決議A.890(21safe manning)の見直しを行うべきとの意見がなされ、ICFTUがこれを支持し、サイプラスが当該事項は総会でも議論があったとの主張が行われ、結果、今後の作業事項として、本決議に含むことが合意された。
 
(2)決議4「SOLAS条約附属書第11−1章及び第11−2章の更なる改正」
 今後のセキュリティリスク等の変化よって、SOLAS条約第11−1章及び第11−2章の規定が、遅滞無く改正されていく必要性があることに言及するとともに、条約を改正する際には、拡大海上安全委員会で採択ができるようにすることを勧告している。
 なお、本決議は、本会議に提出された原案では、第11−2章のみを対象としていたが、第11−1章も保安に係ると米国等の意見により、第11−1章も含めることなった。
 
(3)決議5「技術協力及び援助の推進」
 テロ対策の統一的な推進については、技術協力等が不可欠であることに言及し、締約政府に対して、機関への協力及び統合技術協力プログラムの活用等を促している。
 
(4)決議6「海事保安を高める特別の措置の早期履行」
 改正条約等の早期履行の必要性を言及するとともに、締約政府に対して、早期履行のため講じるべき具体的な方策を勧告している。
 
(5)決議7「条約が適用されない船舶、港湾施設等の保安を高めるための適切な措置の実施」
 今回の条約の対象となる船舶及び港湾施設のみの対策では、テロ対策としては不充分である可能性を示唆するとともに、適用除外である船舶及び港湾施設に対しても締約政府の判断に基づき所要の措置が講じられるよう促している。
 また、そのような措置をとった場合には、機関に報告することが要請されている。
 
(6)決議8「ILOとの協力を通じた保安強化」
 今回結論を得るに至らなかった船員の本人確認文書や港湾保安の広範な問題に係る作業について、機関に対し、ILOとの合同作業部会を設立する等協力して検討を進めていくことを要請している。
 
(7)決議9「WCOとの協力を通じた保安強化」
 WCOに対してコンテナの国際運送についての保安強化の方策の早急な検討を要請するとともに、WCOの検討の結果に基づいて、必要がある場合には、条約のさらなる改正を視野に入れることを示唆している。
 
(8)決議10「ロングレンジでの船舶識別及び追跡の早期実施」
 締約政府に対し、ロングレンジでの船舶識別及び追跡について、優先事項として何らかの措置を執ること等を要請している。
 なお、会議に提出された原案では、ロングレンジでの船舶識別及び追跡の手段として、インマルサットCのみが言及されていたが、欧州等の意見により、「other available systems」が追加された。また、ICS等共同提案(MSC 76/4/21)に基づき、ロングレンジでの船舶識別及び追跡検討の導入に伴う問題点の検討の要請が追記された。
 
(9)決議11「人的要素」
 本決議は、ICFTU提案(MSC 76/4/6)に基づき作成された。シートレードの重要性及びそれに関わる船員の安全保障、人権を考慮し、本改正に伴う条約の履行に関し、人的要件に係る留意事項について締約政府及びその他の機関がIMOに対して報告することを求めている。
 
(10)その他の決議案の審議結果(SOLAS/CONF. 5/30関連)
 サイプラス及びマルタ提案(SOLAS/CONF. 5/30)の船舶、港湾施設等に脅威を与えるデモ行動を行う非政府組織に対するIMOにおけるconsultative statusの扱いを要請する決議案については、欧州各国の反対により、否決された。なお、同提案国より、本決議案の趣旨は、適切な委員会等において今後も検討すべき事項であるとの意見がなされた。
 
4. その他審議結果
(1)フィリピン提案文書(MSC 76/4/5)及びICFTU提案文書(MSC 76/4/6)の審議
 フィリピンより、提案文書(MSC 76/4/5)に基づき、出年の船員の業務量に対応した、配乗の必要性について説明があり、議長は、STW34がMSC 77へと議論をするため、MSC 76のワーキンググループ(WG)で議論することとし、フィリピンは了解した。引き続き、ICFTUより、提案文書(MSC 76/4/6)に基づき、フィリピンと同様の趣旨及びRecent Workの観点から、preambleの修文等について、提案したところ、デンマークより、フィリピン提案文書の議長の扱いについて、SOLAS条約第5章の改正の可能性を含め、配乗に関する事項として疑問が述べられ、サイプラス、バハマ、ギリシャ、アルゼンチンより、ICFTU指摘の賛同が述べられると供に、パナマより、additional crew manningについても触れる意見が述べられ、引き続き検討することとなった。
 
(2)ILO提案文書(MSC 76/INF. 3)の審議
 議長より、INF文書なので、時間的問題もあり、特に議場で意見を求めない旨述べられ、ILOは了解した。
 
(3)国連危険物輸送専門小委員会の報告(SOLAS/CONF. 5/24関連)
 提案国の英国より、審議時間がないことから、提案を取り下げるとの表明がなされ、あわせて、今後の適当な委員会等に対し、文書を再提出すると意見がなされた。







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