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(6)第11−2章第3規則「保安に関する締約政府の責任」
 ノルウェーより、本会議に提出された原案(SOLAS/CONF. 5/3/Rev. 2)第3規則第4項(船舶の保安レベルの設定)及び第6規則第3項(港湾施設の保安レベルの設定)は、保安レベルの設定という点では同趣旨であることから、1の規則にまとめるべきとの意見がなされ、審議の結果、第3規則としてまとめることが合意された。
 
(7)第11 -2章第4規則「船舶及び会社の要件」(旧第3規則)
(イ)MSC76での実質審議
 アルゼンチン提案(MSC 76/4/22)及びICS等共同提案(MSC 76/4/24)を特段支持する国はなく、MSC 76提出の原案(MSC 76/4/1, annex 1)を維持することが合意された。
(ロ)締約政府会議での審議
 本規則案に対して特段意見する国はなく、所要の編集上の修正(旧第3規則を第4規則に移動等)を検討した上で、本会議に提出された原案(SOLAS/CONF. 5/3/Rev. 2)を基本的に維持することが合意された。
 
(8)第11−2章第5規則「会社の特別な責任」(旧第10規則)
(イ)MSC76での実質審議
 所要の編集上の修正を加えた上で、MSC 76提出の原案(MSC 76/4/1, annex1)を基本的に維持することが合意された。
(ロ)締約政府会議での審議
 本規則案に対して特段意見する国はなく、所要の編集上の修正(旧第10規則を第5規則に移動等)を検討した上で、本会議に提出された原案(SOLAS/CONF. 5/3/Rev. 2)を基本的に維持することが合意された。
 
(9)第11−2章第6規則「船舶保安警報装置」(旧第5規則)
(イ)MSC 76での実質審議
 「この規則のすべての要件に適合することを条件に、船舶保安警報装置の要件は、第IV章の要件に適合した無線設備を使用することにより、適合することができる。」との新規第7項を追加するノルウェー提案(MSC 76/4/13)について、ロシア、シンガポール、ブラジル、フランス及びスウェーデンが支持をし、審議の結果、当該提案を採用することが合意された。
 また、スクエァブラケットが付されていた第3項及び第4項の2案の規定振りについて、実質的に同じ内容であり、規定の明瞭さの観点からは、MSC 76/4/1, annex1紙面上下段の案が適切であるとの判断から、当該案を採用することが合意された。
 なお、各国より、船舶保安警報装置の性能基準の作成が要請され、米国提案(MSC 76/4/2)を考慮の上、専門家グループに対し、性能基準案の作成が付託された。作成された性能基準案(MSC 76/WP. 8)は、来年1月の第7回無線通信及び捜索救助小委員会(COMSR 7)で精査した上、同年5月のMSC 77で採択される予定である。
(ロ)締約政府会議での審議
 本規則案に対して特段意見する国はなく、所要の編集上の修正(旧第5規則を第6規則に移動等)を検討した上で、本会議に提出された原案(SOLAS/CONF. 5/3/Rev. 2)を基本的に維持することが合意された。
 
(10)第11−2章第7規則「船舶への脅威」(旧第9規則bis)
(イ)MSC 76での実質審議
 仏国籍船Limberg号テロ事件を踏まえた対策を規則化する仏国等共同提案(SOLAS/CONF. 5/10)について、各国より、提案趣旨を支持する意見がなされ、提案の第9規則bisを規則化することが合意されたが、当該第9規則bisの内容は、他の国際法等との整合の観点から、参加各国の法律専門家から構成される法律グループで精査することとなった。IMO法律グループの見解(MSC 76/J12)等を踏まえ、締約国は周辺海域における保安レベルを設定すること、領海内を航行中の船舶又は領海に入ることを表明している船舶に対して、その保安レベルの情報を提供すること、船舶から通報を受けるための窓口を設定すること、及び脅威の存在を認めた場合には、船舶やその旗国政府に現在の保安レベル、船舶が執るべき保安措置、沿岸国が執ろうとしている措置について助言することが義務づけることを旨とする修正第9規則bisが合意された。
(ロ)締約政府会議での審議
 MSC 76での実質審議結果を踏まえ、仏国から、仏国等共同提案(SOLAS/CONF. 5/10)の趣旨は、MSC 76で修正された第9規則bisに反映されていることから、同提案を取り下げることが表明された。
 上記以外、本規則案に対して特段意見する国はなく、所要の編集上の修正を検討した上で、本会議に提出された原案(SOLAS/CONF. 5/3/Rev. 2)を基本的に維持することが合意された。
 
(11)第11−2章第8規則「船舶保安に係る船長の裁量」(旧第4規則)
(イ)MSC 76での実質審議
 特段の審議なく、一部編集上の修正を加えたノルウェー提案(MSC 76/4/13)及びICS等共同提案(MSC 76/4/24)に基づき、本規則を修正することが合意された。
(ロ)締約政府会議での審議
 本規則案に対して特段意見する国はなく、所要の編集上の修正(旧第4規則を第8規則に移動等)を検討した上で、本会議に提出された原案(SOLAS/CONF. 5/3/Rev. 2)を基本的に維持することが合意された。
 
(12)第11−2章第9規則「監督及び適合措置」
 
(イ)MSC 76での実質審議
 次を除く、各国提案については特段支持する国はなく、MSC 76提出の原案(MSC 76/4/1)を維持することが合意された。
 
(i) 「船舶の検査(inspection of the ship)1(第1.1項、第1.3項及び第2.5.3項関連)
第1.1項に明示的に「inspection」を加える米国提案(MSC 76/4/15)に対し、我が国は、提案文書(SOLAS/CONF. 5/11)に基づき、「contro1」の概念に「inspection」が含まれるとの説明をしたところ、米国は、第1.1項への「inspection」の追加の必要性を再度主張した。審議の結果、我が国の主張に従い第1.1項から削除することは合意されたが、米国意見を踏まえ第1.3項の不適合船舶に対する監督措置(control measure)の例示に新たに「船舶の検査(inspection of the ship)」が追加されることとなった。
第2.5.3項に不適合船舶への手順(step)に例示される「船舶の検査(inspection of the ship)」に関し、我が国は、提案文書(SOLAS/CONF. 5/11)及び第2.5.1項の不適合是正要求との整合性から削除を主張したが、維持を提案する欧州各国(MSC 76/4/7)からの意見及び第1.3項において「船舶の検査(inspection of the ship)」を明記したことから、維持することが合意された。あわせて、欧州各国共同提案に従い、法的整理から、「船舶の検査(inspection of the ship)」(航行停止等に至る前のより詳細な検査という趣旨)を実施できるのは、「船舶が入港しようとする港の締約政府の領海内にある場合」であることが明記された。
(ii) 監督措置の発出(may/shall)(第1.2項関連)
不適合船舶への監督措置の発出を「shall」又は「may」のいずれとするかについて、我が国は、提案文書(SOLAS/CONF. 5/11)に基づき、監督(PSC)は沿岸国の権利であることから、「may」とすべきことを主張し、いくつかの国々が我が国を支持した。一方、欧州各国は、欧州各国共同提案(MSC 76/4/7)に規定するとおり監督の結果として所要の措置を執ることは寄港国の義務であるとの立場から、「shall」とすべきことを主張した。抽象的論争(「権利」か或いは「義務」か)となり、「shall」を主張する国が優勢となり(米国からの発言なし)、結果、「shall」とすることが合意された(ただし、従来のPSCにおいても、監督そのものは寄港国の権限であるが、いったん不適合を発見した場合は、何らかの措置をとることとなっており、その観点から、問題はないと思料される。)。
(iii) 旧第1.4項、旧第1.5項、旧第2.6項及び旧第2.7項の削除(第3.2項bis及び第3.2項ter関連)
米国提案(MSC 76/4/15)に従い、同様な規定振りである旧第1.4項及び旧第2.6項を第3.2項terに、旧第1.5項及び旧第2.7項を第3.2項terに、それぞれ統合することが合意された。
(iv) 第2.1項に規定する情報の船内保存期問(第2.3項関連)
MSC 76提出の原案(MSC 76/4/1, annex 1)において未作成であった本規定について、船内に6ヶ月間備置すべきとの欧州共同提案(MSC 76/4/7)をベースに案文の作成が行われ、結果、過去10港分とすることとなった。
(v) 第2.5項(入港しようとする船舶に対する監督措置)
船舶が入港しようとする沿岸国の領海内にある際に、第2.4項に規定する監督措置を執る場合には、沿岸国は当該船舶に対し、監督措置を執る意向を通報することとし、通報を受けた船長は入港申請の撤回を行うことができることとした。このような撤回を行った船舶に対しては本規則の適用を受けないことが規定された。
(vi) 旧第3.4項「他の国際条約との関係(saving clause)」
他の国際条約との関係については、本規則のみならず章全体にかかるとの認識が支持され、本項を削除した上で、第2規則第4項に同内容の規定が新たに追加することが合意された(上記第2規則第4項を参照)。
(vii) 第3.6項
監督措置が執られている場合に、人道上の観点から船上の人間の生命保証のためのアクセスが認められていたが、ICFTU提案(MSC 76/4/6)により、この条件を緩和して人道上の観点全般とすることが合意された。
 
(ロ)締約政府会議での審議
 所要の修正をした上で、本会議に提出された原案(SOLAS/CONF. 5/3/Rev. 2)を基本的に維持することが合意された。
 
(13)第11−2章第10規則「港湾施設の要件」(旧第6規則)
(イ)MSC 76での実質審議
(i) 第6規則2項「管轄内」と「領域内」の選択について
他の規定部分との整合性の観点から「領域内」となった。
(ii) 本規則の実施時期について
第XI−2章第8規則関係(港湾施設保安計画のリストのIMOへの報告)において審議(同規則の審議内容を参照)。
(iii) 港湾施設保安評価及び港湾施設保安計画作成の実施主体について
評価及び計画作成の実施主体については、欧州共同提案(MSC 76/4/7関係)から、認定保安団体(Rso)を含めることとし、さらにRsoが承認もできることとすべきとの発言があった。Rsoが評価又は計画作成を行ったものをRsoが承認することは適切でないとする意見があり、プレナリーにおいて、Rsoは港湾施設保安評価及び港湾施設保安計画作成を実施することができるが、これらの承認はできないものとして合意された。
 
(ロ)締約政府会議での審議
 本規則案に対して特段意見する国はなく、所要の編集上の修正(旧第6規則を第10規則に移動等)を検討した上で、本会議に提出された原案(SOLAS/CONF. 5/3/Rev. 2)を基本的に維持することが合意された。







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