C. MSC海上保安作業部会第2回中間会合(平成14年9月9日〜13日)におけるPSC関係部分の議事概要
1. 議題3(SOLAS第XI章改正案及びISPSコード案第A部の完成)関連、議題4(ISPSコード案第A部から除外された提案箇所及び審議未了箇所の審議)関連、議題5(ISPSコード案第B部の準備)関連及び議題7(海事保安事項の提案文書の審議)関連
事務局及び本ワーキング議長作成のSOLAS条約改正及び「船舶及び港湾施設の保安に関する国際コード(ISPSコード)」の審議用資料(MSC 76/ISWG/3, MSC 76/ISWG/3/1, MSC 76/ISW6/5)をベースに各国提案等を審議することが合意された。
審議に先立ち、WG本体審議と分離して詳細検討を行うためのコンタクトグループ(CG)の設置が了承され、AIS、船舶の保安警報及びロングレンジトラッキングシステムを検討するCG(議長は英国K.Fisher氏。)、並びに前回MSC 75で継続審議となったSOLAS条約改正案新第11−2章第9規則「監督(Control)」を検討するCG(議長はパナマO.Allard氏。)の2つのCGが設置された。
また、SOLAS条約改正案の案文等作成のためのドラフティンググループ(DG。議長はサイプラスN.L.Charalambous氏。)もあわせて設置された。
(1)SOLAS条約改正案・第5章第19規則(AIS)関連
(イ)AISの早期導入
AISの早期導入時期(4オプション)については、締約国会議で決定することがMSC 75で決定されているため、今次会合では審議されることはなかった。
(ロ)AISの常時作動要件
前回MSC 75で今般のSOLAS条約改正案に導入されたAIS常時作動要件に関し、当該要件が免除される国際基準に船長判断によるAISのon/offを規定するA.917(22)が含まれるとMSC 75において合意がなされたが、当該適用関係を明確にするため、A. 917(22)を改正する欧州提案(MSC 76/ISWG/7)とSOLAS条約第5章第19規則を改正するICS等提案(MSC 76/ISWG/7/11)の審議がなされた。適用関係の明確化については、各国が賛成したが、今般のSOLAS条約改正案に導入することには内容的にその必要性がないとの結論に至り、本件に係るMSC 76への提案が各国に要請された(詳細はNAV48で検討)。
また、上記以外のICS等から提案されたSOLAS条約第5章第19規則の改正提案については、その提起した問題は認識されるも、上記同様、今般のSOLAS条約改正案に導入する必要はないとの結論に至り、今後必要な検討を行うことが合意された。なお、議場外において、ICS提案第13項[2.4.10]に関し、我が国からICSに対し、「AISにより得られた情報はVTS業務遂行のため、AIS非搭載船舶に対し提供することは当然あり得る」旨説明したところ、ICSは了解した。
(2)SOLAS条約改正案・第11-2章第1規則「定義」関連
(イ)「Designated Authority」の定義
「港湾施設及びシップ・ポート・インターフェースに関する」ものとの限定を付す我が国提案については、サイプラス、デンマーク、ノルウェーの支持があり、「Designated Authority」の定義にこの限定を付すこととなった。
また、DGより、当初案は、政府が指名した組織又は政府機関とされていたが、政府機関に限定すべきとの修正案が示された。これに対し、ノルウェーからは、当該組織を含むことは今次会合で一旦合意されたことを、我が国からは、Designated Authorityに当該組織を含めると港湾施設の保安計画の承認を当該組織でできなくなり、施設数が多い我が国としては問題である旨の発言をした。この結果、政府が指名した組織を含むか否かはMSC 76に委ねられた。
(ロ)「Recognized security organization(RSO)」の定義
用語中の「Security」を削除すべきとの我が国提案については、「Recognized security organization(RSO)」が、他のSOLAS条約に規定される「recognized organization(RO)」との規定との関係、並びにその実施内容及び性格がROと何ら変わらないものであることは、理解されたが、サイプラスよりフィロソフィーの問題である旨の意見が表明され、結果、原文のままと修正を加えないこととなった。また、RSOに、SOLAS条約第1章第6規則で定義される認定団体を任命することができるという記述を含めるべきとの欧州諸国の提案については、ガイダンスに含めるべきとのサイプラスの発言に支持が集まり、この件は、ガイダンスに含めることとなった。なお、「designated authority」が港湾及びシップ・ポート・インターフェースに限定されたところ、認定保安団体の定義から、「or the designated authority」を削除すべきとオーストラリアから発言があったが、ノルウェーが今次会合において決定すべきでないと主張したため、MSC 76で再度検討することとなった。
なお、コードBパラ4.2.2に関し、船舶の認証関連を行う場合にはRSOに港の操業に関する経験を求めるのは不適当であると指摘したところ、議長より経験ではなく関連する知識を求めるべきとされた。
(ハ)「port」の定義
サイプラスから「港湾」がSOLAS条約付属書等改正案の各所中で使用されているため、「港湾」の定義を残すべきとの意見があり、他方、デンマーク(MSC 76/ISWG/7)から、保安計画は港湾施設についてのみ言及しているため、スクエアブラケット([ ])を付されている「港湾」の定義を削除すべきとの発言があった。欧州各国、我が国が削除意見を支持し、圧倒的多数ではあったが、米国、ロシア等が定義の必要性を主張したところ、スクエアブラケットを付したまま、MSC 76に検討が委ねられた。
(3)SOLAS条約改正案・第11−2章第2規則「適用」関連
(イ)「small port」の取扱い
我が国から、「強制要件を課す港湾施設は当該船舶を頻繁に取扱っていると締約国政府がみなすものに限ることとし、頻繁に取扱わない施設(いわゆる「small port」)については強制要件の適用の範囲を検討する、との規定を設けること」とする提案(MSC 76/ISWG/7/14)(第2.1.2規則及び第6.5規則の修正)について、まず、我が国がしたところ、キプロスサイプラス、豪、デンマーク(MSC 76/ISWG/7による)等から、「small port」については一旦アセスをした上で強制要件を適用するかどうかを検討して絞り込むべきであり、この趣旨で第6.5規則を修正すべきとの意見が出された。この意見が多数を占めたため、議長の采配により、第2.1.2規則を修正するのではなく、第6.5規則のみの修正を検討することとなった。
修正案の検討に当たっては、我が国同様に「small port」について懸念している欧州諸国と協力をしつつ検討案の作成に努めた。
検討の結果、第6.5規則は、港湾施設の適用に関わる内容であるため、第.2.2規則として位置づけ、以下の観点から修正された。なお、(b)のアセスについては、スクエアブラケット([ ])を付してで両案併記のままMSC 76に委ねられた。
(a) |
強制要件の適用範囲のを検討のできる対象施設が「内航船用に設計され、意図された施設」に限定されていたが、これ当該部分を削除し、単に「国際航海に従事する船舶を頻繁に取扱わない港湾施設」を対象にすること |
(b) |
これらの施設について、アセスをした上で本条約・規則強制要件の適用を検討すること(但し、アセスは「港湾施設保安評価」(米国の強い要請による)とするか「港湾施設に対する脅威の程度に関するアセス」とするか両案併記) |
|
(ロ)強制要件を適用する港湾施設が取扱う国際航海に従事する船舶の範囲
第2.1.2規則中の「port facilities serving[such]ships engaged on international voyages.」における[such](第.2.1規則の船舶)について、我が国(MSC 76/ISWG/7/14)及び欧州(MSC 76/ISWG/7)は、「such」を削除した場合、漁船等全ての船舶が対象となり適用港湾施設が膨大になりすぎ、対処が困難であることなどから、スクエアブラケット([ ])を外し、「such」を活かすべきと発言した。これに対して、米国及びアンテイクア・アンド・バーブーダは、500GT未満の外航貨物船小型の外航船はリスクが大きいため、当該船舶が寄港する港湾施設にも本条約・規則強制要件を適用すべきとして「such」削除を主張したが、スクエアブラケットを外し、「such」を活かすべきとの意見が圧倒的に多かったため、「such」を活かしてSOLAS条約適用第11−2章第2.2.1規則の船舶(500GT以上の外航貨物船等)が寄港する港湾施設に限定することとなった。
(4)SOLAS条約改正案・第11−2章第3規則「船舶の要件」関連
(イ)第11−2章第3規則本文
(a)船舶は、港に入る場合及び港にいる間、寄港国が設定した保安レベルが主管庁が設定した保安レベルより高い場合、寄港国が設定したレベルに適合する必要があること、及び(b)船舶の保安レベルが引き上げられた場合には、船舶は当該レベルに適切に対応する必要があることを念頭におき、条文の修正案が作成された。
(ロ)検査及び証書(ISPSコード第A部第19節)
我が国より、ISMコードの検査スキームと整合性を図ることが適当であることから、年次検査ではなく中間検査が適当である旨表明したところ、支持を得、これが採用されることとなった。また、検査と証書の調和の観点から現行SOLAS条約附属書第1章にもある「短航海」の規定を追加すべき旨提案したところ、これについても採用された。
(ハ)船舶の保安職員(ISPSコード第A部・第B部)
オランダより、STCWの訓練要件との関係について意見があり、STW 34で、船舶の保安職員の訓練モデルコースの検討が行われることと、MSC 75で決まっていることが事務局から紹介された。
ノルウェーより、保安担当について、ISPSコード第B部の要件がすべて適用になるようになっているが、船舶の保安職員と同様の規定振りにすべき旨の提案がなされ、了承された。
訓練について、ノルウェーより、最低毎月実施することとされていることについて多すぎるとの意見がなされ、パナマ、米国、サイプラス等が、船員交替がある等の理由から、反対したものの、ICFTUが、港湾施設の要件との並び等の理由から賛成し、例外を入れる形で原案が修文された。
(5)S0LAS条約改正案・第11−2章第5規則「船舶保安警報」関連
米国提案(MSC 76/ISWG/7/16)をベースに審議なされ、同国が提案した新規第5項の追加が合意された。なお、ICS等の言及により、既に船社が緊急連絡体制を構築している実態を踏まえ、警報の連絡先に「会社」が含まれることとなった。その他の、ICS等提案(MSC 76/ISWG/7/5)については、特段の支持がなく、SOLAS条約改正案等に盛り込まれることはなかったが、当該提案に係る我が国の対応は次のとおりであった。
(イ)我が国から、ICS等提案、14項目、5.7に関連し、「the location of the
activation point for the ship」の意味を照会したところ、船内の船舶保安警報の発信ボタンの設置位置の意味である旨の説明を受け、「本ボタンの設置位置に関する情報は旗国以外が要求することはない」との意味であることを確認した。
(ロ)我が国から、ICS等提案、14項目、5.8に関連し、「誤発信を防止するため、現在COMSARにおいて実施しているGMDSS誤発信の防止対策(アンケート・質問票の作成等)に倣い、船舶保安警報の誤発信の際には、事後、報告書の提出を求める等の防止対策も検討すべき」との指摘を行った。これに対し、本年9月末に香港で開催されるICAO/IMO合同作業部会の審議事項として、誤警報防止対策、警報通報手続等が策定された。
(ハ)我が国から、ICS等提案、14項目、5.9、5.10等に関連し、「領海上の船舶に対する管轄権は沿岸国が有するものの、公海上の船舶に対する管轄権は当該船舶の旗国のみにあり、テロ警報が発信された際の措置について、管轄権の観点からの検討が必要である」旨意見表明した。本ICS等提案に対しては各国の支持を得られず、SOLAS条約第11−2章第5規則に採用されるには至らなかった。なお、公海上の船舶に対する管轄権について、議場外にて、CG議長及び米国代表団に照会したところ、「当然、旗国が管轄権を有する」との回答を得た。
(ニ)ICS等提案の運用上に関する課題については、本年9月末に香港で開催されるICAO/IMO合同作業部会の審議事項として、誤警報防止対策、警報通報手続等が策定された。
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