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資料 1
A. 第10回旗国小委員会(平成14年4月8日〜12日)におけるPSC関係部分の議事概要
1. PSC地域協力(議題6関連)
 事務局からFSI10/6に基づき、各MOUの活動が報告されるとともに、ペルシャ湾地域におけるMOUの設立準備がなされていること、及び本年7月にIMO本部において第2回MOUワークショップが開催される予定であることが報告された。
 英国がパリMOUを代表して2000年の活動結果の報告を行った。米国からFSI10/INF.10に基づき、2000年のPSC活動の報告がなされた。アルゼンチンがラテンアメリ力MOUを代表し、席上配布された資料を基に2001年の活動結果の報告を行った。最近、ホンジュラスが本MOUに参加したことも併せて報告された。本件に関連し、チリより、チリが本MOUにおいて積極的に活動しているとともに、東京MOUのオブザーバーとしても活動しており、本年には東京MOUへの正式参加を求める旨発言があった。ジャマイカより、力リブ海MOUの持ち回り制度に基づき、2002年は同国が事務局業務を行うことが報告された。ナイジェリアからはアブジャMOUの委員会が2002年2月に開催されたことが報告された。また、マルタから地中海MOUの第5回委員会が2002年3月に開催されたことが報告された。香港から東京MOUの2000年活動結果が報告された。南アフリカからインド洋MOUの2000年活動結果が報告された。
 EQUASISについて以下の議論が行われた。事務局より理事会の承認に基づき、IMO事務局がEQUASIS委員会のオブザーバーとなっていることが報告された。いくつかの代表より、現在のEOUASISに掲載されているPSCのデータはパリMOU、東京MOU及び米国コーストガードからのみ提供されているところ、他の地域のデータがないこと、及び旗国からのディテンションに関するコメントが反映されないことが問題であると指摘があった。他の地域のMOUのPSCデータの取り入れについては、EQUASIS側に受け入れの用意があるので必要に応じて相談したいという意向があることが紹介された。
 
2. PSC遅延、分析及び報告の評価に関する報告手続き(議題7関連)
 文書の提出はなかったが、バヌアツ、サイプラス等からディテンションに関する報告が条約上要求されているにも関わらず、寄港国から旗国に通報されずにIMOのディテンションデータにより、初めてわかる例が多々あり、旗国として十分な措置を執ることができないことが問題である旨指摘があった。
 バヌアツは、旗国がら通報がなされていないディテンションについてはIMOのディテンションリストから削除するべきである旨発言がなされ、サイプラスからは、IMOから回章しているディテンションリストについて旗国からのコメントを付加できるようにするべきである旨発言があった。
 我が国からは、通報が円滑に行われるようPSCについての情報を一元的に取り扱う各国の窓口のFAX、E-mailのリストを事務局が作成するべき旨発言した。
 さらに、サイプラスから、米国のQUALSHIP21制度はSAFの結果を米国に提出することを義務づけており、旗国に対して差別的な取り扱いをしている旨発言がなされた。これに対して、米国より、同制度はインセンティブスキームであって、懲罰的内容を含むものでないと反論がなされた。
 ニュージーランドから、旗国による寄港国の通報遅延に関する不満はIMOの場でなく、2国間で行うべきである旨指摘がされたが、サイプラスから、IMOのディテンションリストに掲載されて初めてわかるディテンションについてはIMOの場で議論するべきと反論があった。
 ワークショップに関しては、何を議題とするのかという質問が出され、ワークショップはFSI小委員会の下部組織ではないので議題は独自に決められるものとの前置きの下、各MOU間での情報交換のためのコードの共通化やフォーマットの共通化に関する意見交換が行われる予定である旨説明があった。さらに、本ワークショップはTCのプログラムとして開催されることが報告された。
 議長から、PSCの統計の統一化を図るために本小委員会としてドラフティンググループによる検討を行いたいとの提案があったが、サイプラス、パナマ、バハマ等より文書提出もなく、何を基に検討を行うかわからないようなグループは不要との指摘があり、さらに、蘭から、世界レベルでのPSC統計の必要性とどんな目的でその統計を利用するかを明確にした上で、統計に関する作業を行うべきとの指摘がなされた。
 結果、PSCに関する世界統計を作成する必要性、どの範囲の情報が必要であるか範囲と目的を決定すること、及び本小委員会の活動に資すると考えられる他の情報があるか否かについて検討するため、ニュージランドをコーディネーターとするコレスポンデンスグループを設置することが合意された。
 
3. 船底防汚塗料に関する検査・証書に関するガイドライン(議題13関連)
(1)プレナリーでの審議(WG開催前)
 審議冒頭、事務局より、本件の重要性及び緊急性に鑑み、新たにWGを設置し、その詳細を行うことが要請された。新規WG設置は、特段の異論なく了承され、次の事項を検討することがWGに対し指示された。
防汚方法の検査に関するガイドラインを作成すること(我が国提案(MEPC 46/5/17)とともにノルウェー提案(FSI 10/13/2)を原案とし、IACS提案(FSI 10/13/1)を考慮すること)。
ガイドライン作成は、想定される次のシナリオを考慮して、検討すること。
  建造中又は建造後の船舶について、条約附属書1に基づき管理される防汚方法が適用されていない場合
  条約附属書1に基づき管理される防汚方法が船舶に適用され、これが除去されている場合
  条約附属書1に基づき管理される防汚方法が船舶に適用され、シーラーコート上塗りがなされている場合
  条約附属書1に基づき管理される防汚方法が船舶に適用され、除去又はシーラーコート上塗りを実施する必要がある場合
防汚方法の簡易サンプル採取に関するガイドラインの作成を開始すること(我が国提案(FSI 10/INF.7)を原案とし、イラン提案(MEPC 47/7/1)、我が国提案(MEPC 47/INF.16)及びドイツ提案(MEPC 44/3/7)を考慮すること。)。
IACS提案(FSI 10/13/1)の次の指摘事項にコメントをすること。
  条約附属書1の対象物質(organotin compounds which act as biocide)の明確化。(FSI 10/13/16.1項)
  防汚方法の有害性を示す書類。(FSI 10/13/16.2項)
 
(2)WGでの審議
 WGでの審議の結果、防汚方法の検査に関するガイドライン(検査ガイドライン)案が作成された。なお、WGでの審議概要は、概ね次のとおり。
 
(イ)防汚方法の検査の方法(基本原則)
 ノルウェー提案を原案に審議がなされ、防汚方法の検査手順として、船主から検査申請時に提出される防汚方法の内容証明書類により防汚方法の条約適合性を確認の上、船舶に適用する防汚方法と検査申請されたものとの同一性を確認することとし、主管庁は必要に応じ、防汚方法のサンプル(塗料単体又は塗装中若しくは塗装後の塗膜)採取及び試験をすることが合意された。本件に関し、我が国は、船舶検査は、通常、主管庁と船主の間で行われることを言及し、各国の合意を得るところとなり、結果、検査に係る責任の明確化を図る観点から、検査の申請者は船主である旨の必要な修文を行った。
 また、防汚方法の内容証明書類について、ノルウェー提案が例示するMSDSは、当該書類が海事利用を目的としたものでないこと、各国によって記載内容・様式が異なり、検査に際しての各国共通した判断の確保が困難なこと等の懸念が示され、結果、内容証明書類には、条約の適合性を確認するに必要な最低限の防汚方法(塗料)に関する情報をガイドライン本文中に記載することで合意された。
 
(ロ)防汚方法の適用状態別の検査区分
 船舶の防汚方法の適用状態を考慮し、新造船及び現存船((1)条約附属書1に基づき管理される防汚方法が適用されていない船舶、(2)条約附属書1に基づき管理される防汚方法が船舶に適用され、これが除去されている船舶、(3)条約附属書1に基づき管理される防汚方法が船舶に適用され、シーラーコート上塗りがなされている船舶、(4)条約附属書1に基づき管理される防汚方法が船舶に適用され、除去又はシーラーコート上塗りを実施する必要がある船舶)それぞれの検査を考慮したガイドラインの検討がなされた。
 本件に関し、現存船に既に塗布されている非有機スズ系船舶用の内容(条約適合性)を確認する手法が論議となったが、各国の判断に委ねることとし、検査ガイドラインには詳述しないことが合意された。なお、主管庁が必要と認める場合を除き、防汚方法の微細な修理は、検査対象から除外することが合意された。
 
(ハ)条約発効前の適合性確認
 条約発効後の検査を円滑に実施するため、現存船についての条約発効前に条約を満足している旨の適合証明書を発効する必要性が合意された。係る証明書発給のための確認は検査ガイドラインを準用し、各国政府は確認の上、Statements of complianceを発給することができることとされた。
 
(ニ)IACS提案の指摘事項
 条約附属書1の対象物質の明確化については、次回海洋環境保護委員会(MEPC 48)に対し専門家の意見書が提出されることとなり、当該会合で検討することとなった。なお防汚方法の有害性を示す書類については、上記のとおり検査ガイドラインの中で審議された。
 
(ホ)防汚方法の簡易サンプル採取に関するガイドライン
 第一に一般的な問題の整理が必要との認識から、今回は意見交換にとどめることとし、技術的な問題を含む詳細な検討は、MEPC 48にて行うことで合意された。
 TBT船舶用塗料は、将来的になくなるであろうことを考えると、サンプル採取・分析方法を検討する必要性が乏しいの意見もあったが、我が国を含む大勢は、当該方法の確立が条約の実効性確保のために必要であること、現状の技術で対応が可能であること、また、複数の国においてサンプル採取・分析の統計的な評価を実施することが必要である旨の意見・主張であった。また、没水部のサンプリングが難しいとの意見があり、簡単なケースでコンセプトを確立すべき必要性が認識され、検査方法に多くの知見を有する我が国に対し検討するよう要請がなされた。
 
(ヘ)まとめ
 検査ガイドラインについては、WGにおいて大きな進展があったが、検討時間の制約もあり、MEPC48で各国からの提案を持って、より一層の修正をする必要があることが合意され、その旨プレナリーに報告されることとなった。
 
(3)プレナリーでの審議(WG開催後)
 検査ガイドラインについては、WGにおいて大きな進展があったが、検討時間の制約もあり、さらに検討すべき課題があることがWG議長から報告された。我が国から、現行案は上記〈1〉のシナリオに必ずしも十分に沿った内容になっていないこと、及び2008年以降については現行案では問題が発生する恐れもあること等を指摘し、今後具体的な提案をする旨発言した。今回のガイドラインはMEPC48で各国からの提案を持って、より一層の修正を行うことが合意された。
 
4. その他の議題(議題16関連)
(1)船舶識別番号関連
 FSI10/16/1に基づき香港等の共同提案により提案された船体にIMO番号プレートを付加する旨のSOLAS条約第XI章の改正についての審議結果は以下のとおり。
 香港より、FSI10/16/1の説明がなされ、100GT以上の旅客船、及び300GT以上のその他の船舶にIMO番号を付けるものの、取り付け方法や場所については船主に任せればよいとの説明がなされた。また、大型コンテナ船、VLCC等については適用の必要ではない可能性があるとの発言があった。
 これに対し、FSI10/16/2に基づきICCLは旅客船にはエンジンルームのパネルのみ、FSI10/16/3に基づきBIMCOは費用対効果等を考えるべきとの考えが発言された。
 我が国は、シージャック、ファントム船問題の重要性を認識しつつ、ICCL及びBIMCOの問題点を理解した上で、代替案としてAISを設置する方法もあり、香港提案によるプレートの方法に限定する必要はない旨指摘の上、AIS中のIMO番号等の静的情報は暗証番号等により変更出来にくいシステムとなっており、プレートについても簡単に偽造できるきとを勘案するとAISも本対策上有効であるとの考えを示した。
 しかしながら、我が国の考えに同調したのは韓国等4カ国程度であり、EUを中心に香港等提案を支持する発言が10カ国程度あった。特に英、デンマークは、AISは電源を切った場合無効であり、電子機器等は信頼性に乏しいとの発言をし、AISの活用に強い反対を示した。
 一方、パナマ、バハマ等を中心に10カ国程度は、本AISに関する提案はテロ対策でMSCにおいて現在審議が行われているところ、その審議結果を見届けた上で本件について審議するべきことを示した。
 議長より、本件はテロ対策の一部と重複するものであり、MSCの審議に資すると考えられること、及びMSC75の文書提出の締め切りが今週末の4月12日(金)であることから、事務局が本FSIのレポートの内保安に関連する審議内容のレポートを作成し、FSIとして確認の上、MSC75に提出することが提案され、これを各国が了承した。
 なお、本件に関して米国から発言は無かった。







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