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3.6 排気装置
 船外機の排気は基本的に水中に排気される。その方法により次の3種類に分かれる。
(1)標準水中排気
 アイドリングまたはトローリング運転時、アッパーケーシング内の半分近くまで海水で満たされているので、2・335図に示すようにアンチキャビテーションプレート下面の排出部を通して排気ガスを水中へ排出すると排圧が高くなりすぎて円滑に運転できなくなる。このためエキゾースト下部(水面上にある)排出口からアッパーケーシング内の通路を経て排気ガスを大気中に排出する。(2・336図参照)
 中、高速運転時、アッパーケーシング内の海水は排気ガスによって押し出されるので、エキゾーストパイプをでた排気ガスはアッパーケーシングで急激に膨張する。この排気ガスに海水が混入してロワーケーシングに流れてアンチキャビテーションプレート下面の排出部から水中へ排出される。
 排気ガスは狭い通路を流れ、さらに海水を混入させることによって消音される。
 単気筒機種の中にはエキゾーストパイプの無い機種がある。これらの機種ではシリンダブロックを出た排気ガスはアッパーケーシング内で膨張してロワーケーシングに流れる。
 標準水中排気では排気ガスが水面近くで排出されるので、次のプロペラボス排気に比べると消音効果が低い。
 
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2・335図 標準水中排気(シェアピン駆動)
 
(2)プロペラボス排気
 アイドリングまたはトローリング運転時、マフラ内の2/3が海水で満たされているので、2・336図に示すようにプロペラボス部を通して排気ガスを水中へ排出すると排圧が高くなりすぎて円滑に運転できなくなる。このためエキゾーストパイプ上部(水面上にある)排出口からマフラとアッパーケーシング間の通路を経てアイドルホールから排気ガスを大気中に排出する。マフラとアッパーケーシング間の通路には海水が溜められているので、排気ガスはこの中を通ることにより消音される。またこの海水はエキゾーストパイプを冷却し排気音を遮断する役目も果たしている。(ウォーターシール効果)
 中、高速運転時、マフラ内の海水は排気ガスによって押し出されるので、エキゾーストパイプを出た排気ガスはマフラ内で急激に膨張する。この排気ガスに海水が混入してロワーケーシングに流れプロペラボス部を通って水中へ排出される。
 プロペラボス排気では排圧を大幅に低下させることからエンジン性能を向上させることができる。さらに、プロペラボス後部に生ずる渦の影響を減らすことができるので、同仕様のパワーユニットでは水中排気よりも航走性能が向上する。また、水中深く排出することから消音効果も高められる。
 
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2・336図 プロペラボス排気(スプライン駆動)
 
 小、中型機種の中にはマフラの無い機種がある。これらの機種では、排気ガスがアッパケーシング内で膨張してロワーケーシングに流れる。
 トリムタブ給水式機種では航走時の動圧によってトリムタブの給水口から多量の水がロワーケーシング内へ送り込まれる。この海水を混入させることによって排気ガスの温度が大幅に低下し、プロペラダンパラバーの温度上昇を防止する。従って、たとえ極端なハイマウント条件であってもトリムタブを取り外してはならない。ダンパラバーの温度が70℃を越えるとスリップが起きやすくなる。
(3)デユアルスラストプロペラ
 プロペラボス排気では、後進運転時に排気ガスがプロペラの前側に吸い込まれるため、プロペラスラストが大幅に低下する。
 デユアルスラストプロペラの排気ガス通路は重構造になっている。後進運転時、排気ガスは2・337図に示すように反転して流れ、プロペラの後側から排出されるためプロペラスラストの低下を防止できる。
 4サイクル船外機(主としてセールボート補機用)の標準プロペラとして採用され、他の小型機種についても低速重荷重用オプションプロペラとして設定されている。
 
2・337図 デュアルスラストプロペラ(スプライン駆動)







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