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2)フューエルインジェクション(電子制御装置)
 フューエルインジェクションシステムはインジェクタをインテークマニホールドに装備して燃料を直接インテークマニホールドヘ噴射する方式で、噴射量などの制御を電子制御装置で行うものである。この電子制御装置では、燃料噴射制御と点火時期制御をエンジンの運転状態に合わせて総合的に制御するシステムを採用しており、大別すると2・323図に示すように制御系統、燃料系統、点火系統及び吸気系統の4系統で構成されている。また、このシステムを図式的表すと2・324図のようになる。燃料噴射量はエンジンコントロールモジュール内で吸気流量メータ、吸気圧センサ、冷却水温センサ、吸気温センサ、スロットルポジションセンサ及びパルサコイルからの信号と各種マップにより演算の上決定される。
 
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2・323図 電子制御装置系統図
 
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2・324図 電子制御装置図式図
 
(1)噴射量制御の種類と特徴
(1)流量方式(2・327図
 エアフローメータで直接検出した吸気量とエンジン回転速度のマップから噴射量を決定する方式で、3方式の中で最も正確であるが、エアフローメータの設置場所が必要である。
(2)負圧方式(2・326図
 インテークマニホールドの吸気圧とエンジン回転速度のマップから噴射量を決定する方式で、流量方式より単純であるが、吸気圧は他のセンサの検出値を利用して補正が必要であり、また2サイクルエンジンの脈動特性には適していない。
(3)スロットル開度方式(2・325図
 スロットル開度とエンジン回転速度のマップから噴射量を決定する方式で、他の方式に比べて正確さは劣る。
 
2・325図 スロットル開度方式
 
(2)吸気系統
 吸気系統には、適正な混合気を作るために、正確な吸入空気量を検出する吸入空気量検出装置、エンジンの冷却水温度やエンジンに対する各負荷により、アイドル回転速度を制御するアイドル回転速度制御装置(アイドルスピードコントローラ:ISC)がある。
 エンジンには吸入空気量に見合った燃料を供給する必要があり、また、この要求する燃料の量はエンジンの運転状態によって異なる。このため吸入空気検出装置により、エンジンの運転状態に見合った空燃比(混合比)になるよう吸入空気量を検出している。この吸入空気量を検出する方法には、エンジンに吸入される空気量を、バキュームセンサを用いてインレットマニホールド内の圧力によって求める方法(2・326図)と、エアフローメータを用いて直接計量する方法(2・327図)とがある。
 
2・326図 バキューム・センサ方式
 
2・327図 エア・フロー・メータ方式
 
 アイドル回転速度とは、エンジンが無負荷で空転している状態をいい、冷間時では、温間時と比べてアイドル回転速度を高くしなければエンジン回転が安定しないため、アイドル回転速度を調整する必要がある。このため、2・328図に示すアイドル回転速度制御装置はこの時エンジンの運転状態に見合ったアイドル回転速度になるように、バイパス通路を流れる吸入空気量をアイドルスピードコントロールバルブ(ISCV)により制御している。ISCVにはステップモータ式を採用している。
 
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2・328図 アイドル回転速度制御装置
 
 始動時とアイドリング時(スロットルバルブが全閉の時)ISC内に装備されたISCVによってバイパス内の空気が制御される。
 暖気時にはISCVが開き、エンジンに空気を供給して回転速度を上げる。また、暖気終了後には、このバルブは閉じてエンジン回転速度が下がり、規定のアイドリング回転速度が保たれる。
 急減速時にスロットルバルブが全閉位置まで急激に戻されると、スロットルバルブが全閉になる直前にISCVが開き、ダッシュポットに役割を果たしてエンストを防止している。
(3)燃料系統
 燃料系統は2・329図に示すように低圧燃料ポンプ、燃料レール、フューエルインジェクタ、プレッシャレギュレータおよび燃料クーラで構成されている。燃料は低圧ポンプでベーパセパレータタンクに送くられた後、高圧ポンプにより0.3MPaに加圧される。加圧後の燃料は燃料レールを通りながらフューエルインジェクタを介してインテークマニホールド内に噴射される。なお、インジェクタに掛かる燃料レール内の燃料圧力はプレッシャレギュレータによってインテークマニホールド圧力に対して一定圧(0.3MPa)高く保たれている。余分の燃料はプレッシャレギュレータから燃料クーラを通過して冷却され、ベーパセパレータタンクに戻される。
 
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2・329図 燃料系統
 
 フューエルインジェクタ及びプレッシャレギュレータの構造をそれぞれ2・330図および2・331図に示す。
 
2・330図 インジェクタ
 
2・331図 プレッシャレギュレータ







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