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4)ピストン及びピストンリング
(1)ピストン
 ピストンはシリンダ内を往復運動して、燃焼室内で発生した燃焼圧力を、燃焼室の一部を形成する頂面で受け、連接棒(コンロッド)を介してクランクシャフトに回転力を与えると共に、シリンダ内の燃焼ガスの排出、新しい空気の吸入、並びにシリンダ内の空気を圧縮する役目をしている。なお、2サイクルエンジンではシリンダの各ポートを開閉してバルブの働きもしている。
 ピストン頂面は常に高温高圧にさらされながらシリンダ内を高速で往復運動するため、軽量で高温強度に優れ、かつ熱膨張が少なく熱伝導の良い材料が要求される。そのためピストンは、高温強度の高いローエックス合金や熱膨張係数の小さいハイシリコンアルミ合金を金型鋳造して造られる。
 
2・284図 ピストンの形状
 
 ピストンの形状はピストン各部の温度は均一でないため、2・284図に示すように、高温で熱膨張の大きい頭部を小さくし、下部へ移るに従って徐々に大きくなるようにテーパー加工されている。また、ピストンピンボス部は肉厚を増しているため熱膨張が異なるので、この部分を若干小さくし上から見ると楕円形に加工されている。
 ピストンピンボス方向のスカート部の形状には、ソリッドスカートとスリッパスカートがある。(2・51図参照)一般的に質量を軽くするため、スカート部のボス方向を切り欠いたスリッパスカート形状を採用している。
 ピストンリング溝は4サイクルガソリンエンジンの場合、一般に圧縮リング溝2本とオイルリング溝1本の3本溝構成であるが、2サイクルガソリンエンジンでは圧縮リング溝2本の構成であり、また、ピストンリングの合口が各ポートに干渉して折損するのを防ぐために2・285図に示すように廻り止めノックピンにより合口の位置を固定している。
 
2・285図 廻り止めノックピン
 
(2)ピストンピン
 ピストンピンはピストンとコンロッドの小端部をつなぐ中空円筒形のもので、ピストンから大きな力(燃焼ガス圧力)を受けるため、強い特殊鋼で造られており、表面は浸炭焼き入れにより表面硬化され、強じん性と耐摩耗性をもたせている。
 ピストンピンの取付方法には、半浮動式と全浮動式がある。半浮動式ではピストンピンをコンロッド小端部へ圧入するためピストンとピストンピンの間のみで回転する。全浮動式ではピストンピンとコンロッド小端部及びピストンの間にはクリアランスがあり、全嵌合部で回転するため、2・286図に示すように、ピストンボス部両端の溝にサークリップを取り付け、ピストンピンが抜け出さないようにしている。
 
2・286図 ピストンピンの取付方法
 
 4サイクルエンジンでは一般に半浮動式が採用されている。また、2サイクルエンジンでは小端部に飛沫式潤滑でも高回転高負荷に耐えられるニードルベアリングが使用されるため、全浮動式が採用されている。半浮動式の組み付けには2・287図に示すような特殊工具が必要である。
 
2・287図 特殊工具
 
(3)ピストンリング
 4サイクルエンジンのピストンリングは2本の圧縮リングと1本のオイルリングで構成され、圧縮リングは燃焼室の気密を保持し、圧縮漏れやガス漏れを防止すると共にピストンが受ける熱の大部分をシリンダを通して冷却水へ逃がす役目を受け持っている。一方、オイルリングはシリンダ内壁を潤滑した余分なオイルをかき落とす役目(オイル制御機能)を持ち、一般に2・288図に示すような組み合わせ形オイルリングが使われている。
 
2・288図 オイルリング
 
 2サイクルエンジンのピストンリングは一般に2本の圧縮リングで構成され、4サイクル同様、燃焼室の気密を保持し、圧縮漏れやガス漏れを防止すると共にピストンが受ける熱の大部分をシリンダを通して冷却水へ逃がす放熱作用を行っている。一般に断面形状はキーストンリングがトップリングに多く使われている。キーストンリングは2・289図に示すように、プレーンリングに比べるとガス圧の分力によってシリンダ壁への密着力が増しブローバイを減少させる。更にリングの移動によってサイドクリアランスが変化することからカーボンの堆積を防ぎリング膠着を防止する。合口形状は2・285図に示すような上面ノック式が採用されている。表面処理は一般に、トップリングには高温、高圧に耐え摩耗を少なくするために摺動面のみに硬質クロームメッキを施している。またセカンドリングには油膜の保持及びシリンダとのなじみを良くするためにリング全面にパーカライジングを施している。(2・290図







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