3)シリンダヘッド
シリンダヘッドは、シリンダの上部に取り付けられ、シリンダライナ、ピストンでもって燃焼室を形成している。
(1)4サイクルガソリンエンジン
水冷エンジンでは一般的に2・46図に示すように数シリンダー体形で燃焼室の一部を形成し、その内部には冷却水を通すためのウォータージャケットが設けられており、外部にはインレットマニホールド、エキゾーストマニホールド、バルブ機構、スパークプラグなどが取り付けられている。シリンダヘッドは常に高温高圧にさらされているため、熱伝導性及び冷却効果が高いことを要求されるので一般的にアルミニュウム合金製が用いられている。
2・46図
燃焼室の形状はバルブ及びスパークプラグの位置、ピストン上面の形状など多くの要素により異なり、エンジンの出力や有害排気ガスの発生にも大きな影響を与える。ガソリンエンジンの燃焼室には次のようなものがある。
(1)くさび形(ウエッジタイプ)
くさび形燃焼室は、2・47図のような形状で、くさび先端部の混合気が圧縮時にピストンによって押し出されるため、燃焼室内の混合気に過流が与えられる。
(2)湯船形(バスタブタイプ)
湯船形燃焼室は、2・48図のようにインレット及びエキゾーストバルブの部分を窪ませたもので、シリンダヘッドの構造が簡単である。
(3)半球形
半球形燃焼室は、2・49図のような形状で、インレット及びエキゾーストバルブの大きさを大きくすることが出来るが、バルブ機構はくさび形や湯船型に比べて複雑になる。
(4)多球形
多球形燃焼室は、2・50図のように複数の球形を形成するような形状で、バルブを大きくでき、混合気に過流を与えることが出来る。
以上のような燃焼室が基本となっているが、有害排気ガスの発生を減少させるため、くさび形及び半球系の燃焼室に副燃焼室を設けたものや半球形の燃焼室に壁を設けたものもある。
2・47図 くさび形(ウエッジタイプ)
2・48図 湯船形(バスタブ・タイプ)
2・49図 半球形
2・50図 多球形
(5)屋根形(ペントルーフタイプ)
屋根形燃焼室は、2・51図のように燃焼室が家屋の屋根のような平面で構成され、4バルブ配置、スパークプラグの中央配置及びスキッシュエリアの形成に適した燃焼室であり、現在主流になっている4バルブエンジンの燃焼室の多くは、このタイプを基本形状としている。
2・51図 ペントルーフ形(4バルブ)
(2)2サイクルガソリンエンジン
空冷式では各シリンダ別体形シリンダヘッド、又水冷式では一体形シリンダヘッドが多く用いられ、構造は4サイクルガソリンエンジンより簡単なもので、一般的にアルミニュウム合金製である。
燃焼室は、2・52図に示すようなスキッシュドーム形、半球形及びジョッキキャップ形などが用いられている。
2・52図 燃焼室の形状
(3)ディーゼルエンジン
シリンダヘッド上部には吸排気弁を動かす動弁機構を納めた弁腕室があり、ヘッド下面には吸排気弁、燃料噴射弁、空気始動弁などが設けられ、ヘッド内部には吸排気ポート及び冷却のための水路があるほか、副室式機関では、予燃焼室や渦流室などの副室部分が設けられた複雑な形状をした部品であり鋳鉄で造られる。
最近の高速高出力機関には、高速時の充填効率を高めるために吸排気弁の数を多くした3弁式、4弁式のものが多く採用されている他、形状的には1シリンダ毎に造られた独立形と、数シリンダを一つにまとめた一体形のものとがある。(2・53図・2・54図)
2・53図 シリンダヘッドの形状
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2・54図 吸排気弁の数
(シリンダヘッドの締め付けについて)
(1)シリンダヘッドは、片締めにならぬようメーカで指定された締め付け順序で、2、3回に分けて徐々に締め付け、最後はトルクレンチを使用して規定トルクで確実に締め付ける。
なお機関によっては、締め付け角度、或いはボルトの伸びを計測して締め付けるものもあるので、その場合はその指示に従うこと。締め付け順序の一例を2・55図及び2・56図に示す。
(2)上記ヘッドの締め付けボルトには、ねじ部、及び座面にメーカで指定したオイル又は、潤滑剤を塗布して締め付ける。
(3)トップクリアランスは、銅パッキンかガスケットパッキン又は連接棒フートライナにより規定の寸法に調整する。
(4)ディーゼルエンジンの場合ガスケットパッキンは、ヘッドを分解したときは必ず交換する。また銅パッキンも交換することが望ましいが、再使用する場合は必ず焼きなまして使用する。
2・55図 一体形シリンダヘッド締め付け順序例
2・56図 独立形シリンダヘッドの締め付け順序例
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