日本財団 図書館


3)2サイクルエンジンの掃気
 2サイクルエンジンはシリンダ内への自吸作用がないので、クランクケースなどで圧縮してから、シリンダに新気を入れ同時に燃焼ガスを押し出す。この作用を掃気といい、この掃気の良否は2サイクルエンジンの性能に大きく影響を与えるものである。掃気の形式には次のようなものがある。
 
 
 ここでは、船外機用エンジンに使われている反転掃気及び横断掃気について説明する。
(1)反転掃気
 現在の船外機用エンジンの殆どに採用されている反転掃気は、2・276図に示すように、一般に排気ポートと反対側の方向へ掃気を吹い込み、シリンダ内を反転してガスが流れる形式である。この形式は新気の素通りが少なく掃気効率が良好である。掃気ポートの数や位置などによって2・278図に示すように種々な形式がある。2・278図(2)に示すタイプはシュニーレ式で、現在小型2サイクルエンジンの大部分がこのタイプを基本にして、改良を加えたものを広く使用している。反転掃気の特徴は次のようになる。
(1)新気の吹き抜けが少なく掃気効率が良好で、燃料消費率も良好となる。
(2)ピストンヘッドの形状がなめらかなため熱負荷が小さく、バランスも良好である。また、軽く振動が少ないので高速向きである。
(3)放熱性が良く異常燃焼がおきにくい。
(4)3流掃気、4流掃気にすると掃気ポート面積が広くでき高速型エンジンに適する。
(5)掃気導入路がシリンダ外側に張り出すので、シリンダブロックなどの構造上多気筒エンジンには不利となる。
 
2・276図 反転掃気
 
2・277図 横断掃気
 
2・278図 反転掃気の種類
 
(2)横断掃気
 横断掃気は2・277図に示すようにシリンダ内で掃気ポートと排気ポートが向かい合って設けられており、ガスがシリンダを横断して流れる形式である。ポートが向かい合っているため、新気の素通りが多く掃気効率が悪い。素通り損失を少なくするために、ディフレクタ式あるいは上向きポート式などがある。ディフレクタ式は2・277図にあるように、ピストンヘッドにディフレクタを設け、ガスの流れを上向きにするものである。
 横断掃気の特徴は次の通りである。
(1)ディフレクタ式の場合は燃焼室の形状が悪く、また、ディフレクタのためピストンの熱負荷や質量が大きくなり、高速回転には向かない。
(2)上向きポート式は掃気ポートの上下方向の幅が大きくなるため有効ストロークが小さくなる。
(3)シリンダの掃気ポート側と排気ポート側の温度が不均一になるため、歪みを起こしやすい。
(4)構造が他の形式より簡単である。
 
3)掃気効率及び給気効率
 2サイクルエンジンは、4サイクルエンジンに比べて構造が簡単であるが、給排気を同時に行うため、シリンダ内のガス交換を完全にすることは難しい。一般にガス交換はクランク室内に吸い込んだ新気を掃気ポートを通じてシリンダ内に導き、前サイクルの燃焼ガスを排気ポートから押し出す。この時、新気の吹き抜けをできるだけ少なくし、必要十分な新鮮な混合気をシリンダ内に満たす必要がある。この作用を掃気作用という。この作用は掃気方式、ピストン頂部形状、ポート位置、ポート形状の他掃気圧力、排気圧力及び回転速度などによっても影響される。この掃気作用の良否を表すために次式で表される掃気効率を用いる。
 
 掃気効率ηs=新しいガスの質量/圧縮の始まったときの全ガスの質量=Gn/Gg
 
 また、送り込んだ新しい混合気がどれだけシリンダ内に残ったかを示すために、次式で表される給気効率を用いる。
 
 給気効率ηt=シリンダ内に残った新しいガスの質量/送った全給気の質量=Gn/Gsuc
 
4)2サイクルエンジンの排気管効果
 2サイクルエンジンの掃気や排気はポート前後の圧力差によって行われるので、排気管内の圧力波を適切に利用すると、諸効率を向上させることが可能であり、特に次の効果を上げることができる。
(1)掃気を促進させる(給気比の向上)
(2)新気の吹抜けを防止する(給気効率の向上)







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION