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3. 船外機の構造・機能
 船外機は基本的に船外機本体のみで船舶のエンジン(推進器)としての機能を備えている。その構造は、2・273図に示すように頭部にパワーユニットを配し、バーチカルドライブシャフト及びベベルギヤを介してプロペラシャフトにつながるロワーユニットの2つの部分で構成されている。
 パワーユニット部には2サイクル又は4サイクルガソリンエンジンが縦置きに配置されている。2・273図よりわかるようにクランクシャフトが縦置きに配置され、ピストンが横方向に動く構造で、付随するシリンダヘッド、キャブレータ、スパークプラグなども立てに配置されている。
 船外機のエンジンは、その生い立ちから高出力、構造簡単、小型軽量、コストが安いなどの特徴を持つ2サィクルガソリンエンジンが主流を担ってきたが、最近ではエンジン音、燃費、排ガスなど環境問題で有利な4サイクルガソリンエンジンが主流になってきている。
 本稿では2サイクルエンジンの概要と船外機の主要構成部品を下記の如く分類し、構造と機能を主に整備や取扱上のポイントについて記した。
1. 2サイクルガソリンエンジンの概要
2. エンジン本体
3. 冷却装置
4. 潤滑装置
5. 燃料装置
6. 排気装置
7. 始動装置
8. 充電装置
9. 点火装置
10. 船外機
11. トリム及びチルト装置
12. ステアリング装置
13. リモートコントロール装置
14. 船外機の据付け及び点検
 
2・273図 断面図
 
 
3.1 2サイクルガソリンエンジン
1)2サイクルガソリンエンジンの特徴
 2サイクルガソリンエンジンはシリンダに掃気・排気ポートを設け、これをピストンの動きによって開閉している。従って、動弁機構がなく、構造が簡単であり、又、クランクシャフト1回転で1回の爆発を行うエンジンである。4サイクルエンジンと比較すると次のような特徴を持っている。
(1)クランクシャフト1回転毎に爆発行程があるため、出力向上が容易であり、また、トルク変動が少ない。
(2)動弁機構がないため、騒音が小さく、構造簡単、小型軽量でコストが安い。
(3)掃気が不完全であり、新気の吹抜け、吹返しがあるため燃料消費率が悪い。
(4)吸気、掃気、排気の期間は、いずれも短いため、低速でのガス交換が特に悪く、低速トルクが小さい。
(5)運転中常に新しいオイルで潤滑が可能であり、オイル交換が不要であるが、オイルの消費量は多くなる。
(6)排気ガス中の炭化水素は、4サイクルガソリンエンジンより数倍多く排出されるが、窒素酸化物は約1/5くらいと少ない。
 
2)2サイクルガソリンエンジンの給気法
 2サイクルエンジンでは、クランクシャフトが1回転する間に1サイクルを終了するので、4サイクルエンジンのように独立した吸気行程、排気行程はない。従って、シリンダヘの自吸作用ができず、新気によって燃焼ガスを押し出す掃気作用を行う。そのため給気法は掃気圧力を作るポンプにより次のように分ける。
 
 
 ここでは、船外機用エンジンで現在主に使われているリードバルブタイプについて説明する。
 リードバルブタイプは吸気口の開閉を2・274図に示すような吸気口の入り口付近に設けたリードバルブで行う構造である。リードバルブはクランクケース内の圧力により作動する自動弁で、2・275図に示すような構造である。リードは0.2〜0.3mmぐらいのベリリウム鋼、SUS鋼やFRP等で作られ、閉止時の衝撃を和らげるため耐油性のゴムが着座面に用いられている。また、開時の応力を均一にするためストッパが設けられている。最大リフトは7〜8mmぐらいである。
 
2・274図 リードバルブ・タイプ
 
2・275図 リードバルブの構造
 
 リードバルブの開閉時期はエンジン回転速度、負荷によって変化するが、ピストンバルブタイプと比較すると、早く吸気口を開くことが可能なので吸気期間は長くなり、また、早く閉じて掃気圧力を高めるので掃気効率が良好である。シリンダに吸気ポートがないので掃気ポートの数を増すことが可能である。リードバルブタイプの特徴は次のようになる。
(1)低速回転時の吹き返しが絶無で、給気効率が良く燃料消費が良好である。
(2)低速安定性が良好でばらつきが少なく、アイドル回転速度を下げることができる。
(3)特に低速域での給気比が、他のタイプに比較して最良である。
(4)クランクケース内の負圧が小さいのでエンジン始動が容易である。
(5)構造がやや複雑である。







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