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1.9 軸系アース装置
 船尾周辺にはプロペラなどの銅系部品に起因する船体の電食を防止するため防食亜鉛やアルミニウムが船体に取付けられている。この時の防食電流の軸系の電流回路は3・26図に示すようなものと考えられる。軸系は回転中は各軸受に潤滑油膜が形成されて浮遊状態になるため船体との金属接触がなくなる。したがって海中にあるプロペラまたはプロペラ軸スリーブなどの銅合金鋳物と船体鋼材との間にイオン化傾向の違いによる電位差が生じ海水中の軸系と船体間の接近したところに短絡的に電流が流れ、有害な電食現象が起こる。この電食現象を防止するために3・27図に示すような軸上に巻きつけたスリップリングとブラシで構成される軸系アース装置を設けて軸系と船体間の電位差を減少させるものである。
 
3・26図 防食電流回路
 
3・27図 軸系と船体アース装置
 
 
1.10 軸系強度に関する規則
 軸系の強度即ち中間軸径、プロペラ軸径、継手フランジの厚さ、カップリングボルト径などは船舶の主要部品であるので、船舶機関規則などによって、それらの最小要求値の算定式が規定されている。それらの計算式については、船舶機関規則を参照することとし、ここでは軸系の強度に関する考え方について述べる。
 
1)中間軸
 中間軸は、主機関出力によるトルクおよび軸の自重による静的曲げモーメントのほかねじり振動、縦振動などの振動に対して十分なる強度を有するものでなければならない。静的曲げモーメントは中間軸受の間隔を適当にとれば、無視しても差しつかえないものである。一般に中間軸径はディーゼル機関の場合は、船舶機関規則の計算式で算出した値に対して、ねじり振動の付加応力を考慮して、軸径を増大する場合が多い。
 
2)プロペラ軸
 プロペラ軸の径は船舶機関規則の計算式によって規定されている。プロペラ軸の後端には、プロペラが装備されるので、主機関から伝達される静的および変動トルクやプロペラ軸の自重およびプロペラ重量による静的曲げモーメントの他にプロペラが発生する
種々の変動力および変動曲げモーメントが考えられる。しかし、プロペラが発生する種々の外力などは様相が非常に複雑であるので、プロペラ軸径は静的伝達トルクをもとにし、プロペラの取付構造の違いにより決定される。
 
3)軸継手および軸継手リーマボルト
 一般に軸継手には軸と一体で鍛造されるか、または組立型軸継手が使用されているが、軸継手のフランジの厚さ、フランジの根元の丸味半径、軸継手リーマボルト径などは船舶機関規則によって計算式が規定されている。
 
4)船尾管軸受および張出軸受
 船尾管軸受および張出軸受はプロペラの重量を支えるので、軸受の構造については船舶機関規則により規定されている。海水潤滑軸受あるいは、油潤滑軸受の形式の違いにより軸受長さが規定されており、更に油潤滑軸受の場合は軸受内部の油の温度を確認する装置および重力タンクの低油面警報装置などの設置が規定されている。
 
5)プロペラ軸スリーブ
 海水潤滑方式の船尾管の場合3・10図に示すようにプロペラ軸に青銅スリーブが焼ばめされている。プロペラ軸のスリーブの厚さは、プロペラ軸径の関数で船舶機関規則に規定されている。プロペラ軸のスリーブは一般に遠心鋳造法によって一体に製作されるが、スリーブの長さが長い場合は2個以上に分割鋳造し、溶接構造として、予備試験を受けたものは一体のスリーブと同等とみなすと規定されている。







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