1.6 機関の組立
組立は分解と同じく、取扱説明書や、整備マニュアルに従って適正な工具や、専用工具を使用して注意深く行い、最後の仕上げなので部品の組忘れや、締め付け忘れがあってはならない作業である。
組立時の一般的な注意事項は下記の通りである。
(1)機関組立時には、手袋、ウエスなどは使用しない。
(2)スキマ、バックラッシュ等、組立寸法が規定されている箇所の寸法は、必ず計測し記録する。
(3)各部品は、ゴミや埃などが入らないように気を付けて組み付ける。
(4)摺動部分の部品は、新しい洗油で再洗浄し圧縮空気で乾燥させた後、潤滑油を十分塗布して組み立てる。
(5)パッキン類は純正部品を使用する。(使用箇所により耐熱、耐油、寸法、などの規制をしている物がある)
(6)割ピン、座金等は必ず新品に交換し、回り止めに使用する舌付座金などは忘れずに確実に折り曲げる。
(7)オイルシールは、組み付け方向に注意すると共にリップに傷を付けぬよう当て金を使用して均等に押し込む。
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2・39図 オイルシールの組み付け
(8)ボルトやナットの座面及びネジ部には、メーカで指定された潤滑剤を塗布して締め付ける。
(9)締め付けトルクが指定されている主要ボルトは、片締めにならないよう指定された順番通り2、3回に分けて徐々に締め付け、最後はトルクレンチを使用して規定トルクで締め付ける。
(10)ボルトやナットは、長さと材質に注意し、決められた物を使用すること。
1.7 試運転
組立後、初めての運転であり、始動前及び始動後も下記事項に付き十分注意し事故の無いように作業しなければならない。
1)始動前の準備
(1)締め忘れ、部品の付け忘れがないか確認する。
(2)クランクケース内や、弁腕室等に、工具や部品の置き忘れが無いか確認する。
(3)潤滑油系統のフラッシングを実施する。(通常は事前に実施しておく)
(4)冷却水、潤滑油を注入し水漏れ、油漏れの無いことを確認する。
(5)燃料の噴射を確認後、燃料ハンドルを停止位置にして各燃料ポンプのラックがカット位置にあるか確認する。(列形ポンプでは停止レバーで燃料がカット出来るか確認する)
(6)ガバナ及び燃料ポンプ関係の連結リンクがスムースに作動するか確認する。
(7)潤滑油のプライミングを行い油圧の上昇を確認すると共に油漏れの有無をチェックする。
(8)クランク軸をターニングして、回転部分の異常、燃焼室内への異物混入の無いことを確認する。
2)始動直後
機関始動後、回転速度を低速にして下記に付き急ぎ点検する。
(1)潤滑油及び冷却水の圧力は上っているか又冷却水は出ているか。(不具合があれば停止して修正する)
(2)油漏れ、水漏れ、ガス漏れは無いか。(異常があれば修正する)
(3)異音の発生はないか。(発生場所によっては即、停止させる)
(4)機械音、排気色、及びミストガスの量に異常はないか。
3)始動数分後
(1)一度機関を停止して、クランク軸ジャーナルメタル他各軸受部に、異常な発熱が無いか点検する。
(2)異常がなければ機関を再始動し、異音発熱などに十分注意しながらならし運転を行う。
4)試運転(調整運転)
ならし運転が終わったならば徐々に回転を上げて負荷をかけながら試運転を行い、
(1)燃料ポンプの噴射量、噴射時期を調整して、排気温度、及び筒内最高圧力をメーカの指定する範囲内に揃える。
(2)各部に異音発熱等異常のないことを確認する。
なお、試運転中は中間軸受、船尾管軸受等、芯出しに起因する各軸受の温度上昇に十分注意する。
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