4)機関との伝動接手
クラッチ減速逆転機と機関の接手は一般に弾性ゴム接手を用いたものが多く用いられているが一部小形においてはギヤまたはスプラインセレーション式を用いたものもある、ユニオン式の場合は傘歯車の噛合いにより直接動力を伝達するものである。
(1)弾性ゴム接手
機関とクラッチ減速機が別体の構造(別置式)のものに用いられ、2・176図に示すように円筒形の弾性ゴムを用いて、機関とクラッチ部を連結する方法と2・177図に示すように歯車状の突起物に嵌め込んだ弾性ゴムを介して連結する方法がある。2・176図の方式は発電機との接手等一般的に多く用いられており伝達衝撃力を緩衝するだけでなく、軸芯の若干の誤差を吸収することができるため据付け後の芯確認間隔を長くできる利点があり、別置式の比較的大形機関用接手としても広く用いられている。しかしながら捩り振動に対しては損耗が激しく短時間で亀裂破損を生じるため特に注意が必要である。また耐用使用時間を過ぎると極端に損傷が早くなるため耐用期間(約2ケ年程度)に到達したものは外観上に損傷を認めなくても交換するなど消耗品的に取扱うことが必要である。2・177図の方式は弾性ゴムブロックを接手の突起部に嵌め込み弾性ゴムブロックを介して動力を伝達するので回転衝撃力などを緩和し比較的静かな運転ができるため、多くの高速機関に使用されている。なお、弾性ゴムブロックは消耗品であり、破損や摩耗が認められればその都度交換する。
2・176図 弾性ゴム接手
2・177図 ゴム(ラバー)ブロック方式
(2)金属弾性接手
機関とクラッチが間座を介して一体形構造となっている場合に用いられているものでバネ鋼板(ディスク)にトルクスプリングを嵌め込んだものが一般的に広く用いられており、比較的小形機関に多く用いられる。
2・178図はディスク方式のものであり、トルクスプリングにより衝撃力を緩衝して伝動するようにしている。
この方式は間座により機関と一体化されているので芯出しなどの必要もなく簡単に着脱できる。
2・178図 ダンパディスク
(3)高弾性ゴム継手
中大形機関の動力伝達継手として広く用いられており、2・179図、2・180図に示すように、ゴムエレメントによるせん断力によりトルクを伝達している。この方式は低いバネ定数により、ねじり振動条件を最適にすると同時に、減衰効果もあり、軸系のねじり振動対策に非常に有効である。また、すべての方向(半径方向、軸方向、角度)の軸芯の変位、据付誤差を吸収できる。ゴムエレメントの寿命は使用状況、周囲の環境や、軸系の相違等によって異なるので各メーカ指示に従うこと。
2・179図 KE継手
2・180図 ブルカン継手
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2.11 リモートコントロール装置(遠隔操縦装置)
海上輸送や操業コストを低減し採算を維持向上させるため漁撈機器を始め殆んどの船舶機械類が自動化されつつあり、舶用ディーゼル機関も同様に主機、補機ともにブリッジに於て遠隔操縦できるようになりつつある。現在では小形の一部を除き殆んどが遠隔操縦装置を設け最大限に省力化されると共に機関の運転状態の確認ならびに保護監視上必要となる警報装置などを設け、ブリッジに居ながらにして対処できるようになっている。
主機関はブリッジに於て操船するため、始動、停止、調速、クラッチ切換え操作などが行えるように操舵機のそばに各種スイッチ、レバー、ハンドルなどが配置されている。補機関の場合は機関室またはそれに隣接した監視室に制御盤を設けそこから遠隔操縦するようにしているのが一般的であり、これらの遠隔操縦を総称してリモートコントロール(略してリモコン)と呼んでいる。
船の長さが25m以上のものやCPP(可変ピッチプロペラ)付の場合は操縦場所および監視場所に主機の非常停止装置を設けるよう安全法で義務付けられている。
一般的なリモートコントロール装置は、つぎの4つに分類することができる。
また、操作方式によりつぎの2つに分類されている。
(1)ツーハンドル・リモコン
減速逆転機の前後進切換ハンドルとガバナハンドルをそれぞれ別個に動かし操作するもの。
(2)ワンハンドル・リモコン
機関操作の簡略化を図るため、1個のハンドルで前後進の切換えとガバナの操作ができる。いずれもクラッチの切換えを低速時に行い、機関の増減速操作をクラッチハンドル嵌入後に行うような構造になっており、機関の運転、減速逆転機操作が極めて簡単にできる。
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