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2.6 燃料装置
 ピストンの圧縮行程で高温高圧となった燃焼室内に燃料を燃焼し易いように細かい霧状にして送り込む装置で、2・87図に示すように燃料タンク、油水分離器、燃料供給ポンプ、燃料コシ器(フィルタ)、燃料噴射ポンプ、燃料高圧管および燃料噴射弁からなっている。
 
2・87図 燃料油系統図
 
(拡大画面:40KB)
 
1)燃料噴射ポンプ
(1)構造と機能
 燃料噴射ポンプはエンジンの回転速度や負荷に対して敏感に反応し、適量の燃料を適当な時期にシリンダ内に送り込む機能をもつものである。そのため燃料の量の調節、噴射時期の選定、加圧の動作を適切に行わなければならない。
 燃料噴射ポンプの種類は次のように分類される。
 
(イ)ボッシュ形燃料噴射ポンプ
 ボッシュ形燃料噴射ポンプは、エンジン本体のカム軸上にフランジで取付けられたフランジ形と、全シリンダの噴射ポンプを一つにまとめ専用のカムと一体で組立てた集合形(インラインポンプ)のものとがある。ポンプの断面を2・88図に、また各部の名称を2・7表に示す。
 
2・88図 ボッシュ形燃料噴射ポンプ
(拡大画面:51KB)
 
No. 部品名称 No. 部品名称
1 プランジャ 11 スプリング上部受金
2 プランジャバレル 12 プランジャ位置調整シム
3 デリベリバルブ 13 スプリング下部受金
4 デリベリバルブスプリング 14 ラックガイドネジ
5 デリベリホルダ 15 デフレクタ
6 コントロールラック 16 タペット
7 ポンプ本体 17 カムシャフト
8 コントロールスリーブ 18 取付フランジ
9 プランジャガイド 19 スナップリング
10 プランジャスプリング 20 油溜室
 
(i)作動
 2・89図はボッシュ形燃料噴射ポンプの主要作動部で、プランジャはカムによりタペット、プランジャガイドを介して押し上げられ、プランジャ、スプリングで押し戻される一定の運動を繰り返し行う。
1)燃料油は、ポンプ本体とバレル外周によって作られた油溜室に充満されている。そしてプランジャの下降行程で、バレルの吸排油孔より吸込まれ、プランジャ室を満す。
2)プランジャの上辺がバレルの吸排油孔を塞いだとき(静的噴射始めという)、油溜室とプランジャ室は遮断され、プランジャの上昇と共に燃料油の圧力が上昇する。(A)
3)更に、プランジャが上昇し、圧縮された燃料油がデリベリバルブを持ち上げて、燃料噴射弁へ圧送される。
4)プランジャの下部リードが吸排油孔に覗いた瞬間、高圧燃料油はプランジャの縦溝より吸排油孔を通り急速に油溜室へ戻され噴射は終わる。(B)
5)この噴射始めから噴射終わりまで、実際に燃料油を圧送している期間を有効ストロークという。
6)プランジャの縦溝と吸排油孔を一致させることにより、無噴射となる。(C)
 
2・89図 燃料噴射ポンプ作動図
(拡大画面:22KB)
 
(ii)噴射量の調整
 2・90図は噴射量増減機構を示し、構造で説明した如くコントロールラックの動きに従ってコントロールスリーブが廻り、同様にプランジャも廻り有効ストロークを変化させ、噴射量を調整することができ、次のことがいえる。
有効ストロークが長いとき・・・噴射量が多い
有効ストロークがやや短いとき・・・噴射量が少ない
有効ストロークが最も短いとき・・・噴射量が最も少ない
有効ストロークがないとき・・・噴射しない
(iii)噴射量と噴射時期の関係
 燃料噴射ポンプのプランジャには下部リードだけのものと、2・91図の如く上部リードの両方がついているものがある。上部リード付きのものは、上部リードによって噴射時期を噴射量に従って次のように変えることができる。
噴射量の多いとき・・・噴射時期を早める。
噴射量が少ないとき・・・噴射時期を遅くする。
 
2・90図 噴射量調整機構
 
 
2・91図 上部リード
 
 なお、大形エンジンでは噴射時期を変えることによって、爆発圧力をコントロールすることを目的で適用され、外部からバレルを回転させてそのタイミングも調整できる、可変タイミング形の燃料ポンプがある。
(iv)燃料噴射量の調整機構
 燃料噴射量はプランジャを廻すことによって変りますが、この操作はエンジンの回転速度と負荷に直接結びついているので結局調速装置(ガバナ装置)によりこれを操作することになる。
 調速機(ガバナ)と連結した状態を2・92図に示す。
 2・92図で、レギュレータスプリングでガバナレバーを引張った状態にしておくと、
(1)エンジンの回転が早くなるとガバナウェイトが遠心力によって外側に開き、ガバナレバーを介してコントロールラックを矢印の右方向に押してコントロールスリーブを回転させる。コントロールスリーブの回転によってプランジャが右回転すると上・下部リード部は有効行程の小さい方に移動するので燃料の噴射量は少なくなる。従って回転速度は下がるわけである。
 
2・92図 燃料噴射量の調整機構
(拡大画面:24KB)
 
(2)エンジンの回転が低くなるとガバナウェイトがレギュレータスプリングによって内側に閉まりガバナレバーが矢印の左方向に動きプランジャを左回転させるので上・下部リードは有効行程の大きい方に移動する。これにより噴射量は多くなり回転速度も上がってくる。(形式によってプランジャの切り欠き方向の異なるものがあり、従ってラックの動きと燃料噴射量の増減の方向が逆になっているものもある)。







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