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(2)点検と整備
(イ)プランジャとプランジャバレル
(i)プランジャの点検
 プランジャ外周面の摩耗、縦傷、焼付、腐蝕などは圧力漏れや作動不良を生ずるので十分点検する。プランジャとバレルの組立スキマは非常に小さくて一般の計測器具では測定できない。最も良好な状態はプランジャを1/2程度引き出して約30゜〜45゜に傾けた時、プランジャが自重でゆっくりとバレル内にすべり落ちる位が良い。スキマが多くなるとすべり落ちる速さが早くなると同時にプライミング時の圧縮が少くなる。
(ii)プランジャの耐圧テスト(プランジャとバレルの摩耗の検査)
a)集合形燃料噴射ポンプ
 燃料ポンプ専用のテスタに取り付け、テストするシリンダのデリベリ押えに2・93図に示すように圧力計を取り付け、ラック目盛りをゼロの位置におき、ポンプの回転数を300min-1(300rpm)位にして、ラックを増の方向に動かしながら圧力計の指示が49.0MPa(500kgf/cm2)以上に上昇するかを確認する。
 確認が終わったら速やかにラック目盛をゼロに戻し、テスタを停止する。
 もし昇圧しない場合はプランジャを交換する。
b)フランジ形燃料噴射ポンプ(大形エンジンの1例)
 2・93図の如くテストをしたい燃料ポンプの燃料高圧管を取り外し、圧力計を付けた専用の計測用具をデリベリホルダに取り付ける。次にラック目盛りを通常の使用位置に上昇させ止めておき、プライミングハンドルかターニングモータで燃料ポンプを数回突き上げ、その時の圧力を確認する。
 通常、3.9〜4.4MPa(40〜45kgf/cm2)以下であればプランジャバレルを交換する。
 
2・93図 プランジャの耐圧テスト
 
(ロ)デリベリバルブ
(i)デリベリバルブの点検
a)デリベリバルブの吸戻しカラー部やシート部に傷、打痕、摩耗等が認められるものは、セットで交換する。
b)デリベリガイドシート部底の孔を指でふさいで、デリベリバルブを挿入し、上から指で軽く押し、指を離した時、バルブがはね返ってくれば良好である。不良の場合は、交換する。
c)同様にデリベリガイドシート部底をふさいでいた指をはずした時、バルブが完全に自重で閉じればよい。
(ii)デリベリバルブの耐圧テスト
a)プランジャ耐圧テストと同様にして、圧力計の指示が約11.8MPa(120kgf/cm2)になったら、ラックをゼロへ戻しテスタを停止する。
b)圧力が9.8MPa(100kgf/cm2)から8.8MPa(90kgf/cm2)まで降下する時間を測定し、1.0MPa(10kgf/cm2)の降下時間が20秒以上であれば良い。
c)降下時間が早い場合は、デリベリバルブを洗浄して再テストし、それでも早い場合は新品と交換する。
(注)デリベリパッキンは、新品と交換しておく。また、圧力時間等についてはメーカの指示によること。
(ハ)コントロールラックとピニオン
 コントロールラックを手で動かし軽く円滑に作動すれば良い。途中で固くなったり動きが悪い場合はラックの曲りやこじれ、ピニオンの変形、噛み合い不良などが原因であり点検し修正する。ピニオンの変形や噛み合い不良は交換する。
(ニ)噴射時期の調整
 燃料の噴射時期は、プランジャとプランジャバレルの上、下の相対位置を変えることによって調節でき、以下に示す方法で行われる。
a)噴射ポンプ本体の取付位置(プランジャバレル)をシムにて上、下させる方法。
 単独ポンプに用いられる方法でポンプ本体の取付面に、調整シムを入れ、その厚さを加減して行なう。ポンプ本体の取付シムの厚さを少くすれば噴射時期は早くなり、シムを増せば遅くなる。これは簡単で安上りではあるが噴射ポンプの取外し、取付けを伴うため小形にしか用いられない。
b)プランジャをネジにて上、下させる方法。
 これは列形、単独形のいずれにも用いられている方法であり、2・94図(a)に示すタペットの長さを調節ネジで変化させ、プランジャの上、下位置を変える方法である。この方法はシリンダ毎に噴射時期を調節する場合に用いられる。
 列形ポンプの場合は、サイドカバーを外して行うがシリンダ毎の噴射時期が狂った時はポンプテストスタンドに取付けて調整する。
c)噴射ポンプ本体の取付け角度を変える方法。
 列形噴射ポンプの場合に用いられる方法であり、2・94図(b)に示すとおりポンプの本体取り付け角度を若干変更して、一度に全シリンダの噴射時期を調節する。カム軸の回転方向へ噴射ポンプ本体を廻すと、噴射時期は遅くなり、反対側へ廻すと早くなる。
 そのほかポンプカム軸接手の取付ボルトを弛めカム軸を若干回転させて、一度に全シリンダの噴射時期を調節するタイプもある。
 
2・94図 噴射時期の調整法
(拡大画面:23KB)
 
(ホ)噴射時期の点検
 噴射時期の点検は一般に吐出弁(デリベリバルブ)を取付けた状態で行う方法と取外した状態で行う2つの方法があり、メーカの指定した方法で点検する。
(i)デリベリバルブを取外した状態で点検する方法
 燃料ハンドルを高速位置に置き、集合形ポンプおよびフランジ形の場合はNo.1シリンダを、又単独形の場合は点検するシリンダを圧縮上死点とする。そしてNo.1又は点検するシリンダの噴射管を取外し吐出弁バネおよび吐出弁を抜き取り、吐出弁ホルダのみ元通り軽く締めつける。
 クランク軸を逆回転方向へ燃料が溢れ出すまで廻し、溢れ出したらクランク軸を止め徐々に回転方向へ戻す。勢いよく溢れ出ていた燃料は次第に少なくなり、ついにはピタリと止まる。この時がプランジャでバレルの燃料吸入孔を塞いだ位置であり、このとき指針とはずみ車に刻印された噴射始めのタイミングマークが合っていれば良い、狂っている場合は前記の方法で調整する。
(ii)デリベリバルブを取付けた状態で点検する方法
 調整桿の2点マークを2・95図(a)のようにポンプ本体の端面に合わせておくか又はレギュレータハンドルを運転の位置にしてハズミ車を回転方向に廻し、噴射音の出始めた時期をハズミ車上の目盛で読みとり噴射時期を知る方法である。
 プランジャや燃料噴射弁などが悪く相当早くハズミ車を回さないと噴射しない場合、または噴射の音の出始めをハズミ車上の目盛で読みとりにくい場合は燃料高圧管を取りはずしハズミ車を回転方向に廻し燃料が吐出弁ホルダ孔より出始める時期をハズミ車上の目盛で読みとる。
 
2・95図 噴射時期の点検
(拡大画面:14KB)
 
 2・95図(b)のような噴射時期測定用具をデリベリホルダに取付けて測定すると燃料の出始めが比較的正確にわかる。この出始めの時期は燃料噴射ポンプの作動時期で燃料噴射弁から噴射するいわゆる噴射時期ではないが、噴射時期とほぼ同じなので燃料噴射ポンプの作動時期をもって噴射時期と考えてよい。







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