1.6 事故予防と保守点検
舶用ディーゼルエンジンで最も事故発生率の高いのは小形漁船であり、そのうち主機関の事故が最も多く、小形漁船(20トン未満)の海難事故の約35%を占めている。機関事故発生の原因は多種多様であるが要約すれば取扱いと整備不良に起因するものが殆んどであり、正しい取扱いと定期点検整備を行うことにより、これらの事故を未然に防止することが十分可能である。
水産庁では、これら小形漁船の機関事故を防止するために安全基準を設け指導すると共に封印登録制度を設け行政指導の徹底を図っている。従って機関事故を予防し常に最良の状態で運転できるようにするためには封印解除による過負荷運転は絶対にしないこと。さらに正しい運転方法と定期点検整備を必らず実施することが重要である。
1)小形漁船機関の封印登録
漁船用主機関は機関型式を登録すると共に封印登録を水産庁へ申請し立合い検査に合格認定されたものしか漁船用機関として用いることができぬため工場出荷時に規定の負荷で試運転を行い封印している。封印箇所は過負荷運転による事故防止のための燃料最大噴射量制限および過回転防止のための無負荷最大回転速度制限の2箇所である。これらの封印はみだりに解除して運転すると次のような事故が発生する事があるため絶対に解除せぬように指導することが大切である。万一封印解除により事故が生じても保証対象外となるだけでなく、人命の安全さえも脅かされる結果となりかねない。
a)燃料最大噴射量制限封印
燃料噴射量の制限封印であり、解除すると制限以上の燃料が噴射され熱負荷過大による事故ならびに機械的応力過大による事故を発生するほか吐煙などを伴ない色々な機関事故を誘発する。
b)無負荷最高回転速度制限封印
機関の最高許容回転速度の制限封印であり、解除するとオーバラン状態となり遠心力が制限以上に大きくなるため、主要部の焼付きや機械的応力過大による破損事故が発生する。修理などでこれら封印を解除した場合は再封印登録者が排気温度、回転速度などをチェックしながら再封印を行うよう義務づけられており、再封印登録制度に基づいて実施しなければならない。
2)定期点検と整備
機関の事故を予防する上で最も重要なことは常日頃から機関に接して点検すると共に定期的に点検し保守整備することが大切である。常に機関に接し監視したり、保守点検整備を定期的に実施しておれば機関事故の原因となる些細な異常が発見でき、修復することにより事故を未然に防止することができるものであり、このような習慣を身につけることが事故予防に最も効果がある。
定期点検の期間や、時間は機関の使用環境条件や取扱い方などにより大幅に異るため難しいが高速機関の一例を2・4表に示す。
2・4表 定期点検表
(拡大画面:120KB) |
|
|