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2.10 減速逆転装置
1)減速逆転機
 減速逆転機には種々あるが、点検、整備の要点は、
(1)クラッチ前後進摩擦板の厚さ
(2)スチールプレートの変形量
(3)小歯車軸受と前後進軸の摩耗
であり、何れも限度寸法以上になれば交換する。
(1)減速逆転機の故障の原因と点検、整備
 3・15表 減速逆転機の故障の原因と対策に主要な不具合と点検、整備の内容を示した。
(2)油圧バメ
 前・後進軸及び推力軸は油圧バメになっているものが多い。これらは分解組立の際は3・24図、3・25図に示すように油圧バメ工具を用いて行う。
 
3・24図 油圧バメ工具の使用(分解時)
(拡大画面:11KB)
 
 分解時はストッパになる治具を取付けテーパ部に内圧をかけて離脱を計る。組立時はテーパ部に内圧をかけておいて油圧ピストンにより押圧をかけ押込んでいく。その他詳細はメーカのマニュアルを参照して下さい。
 
3・25図 油圧バメ工具の使用(仕組時)
 
2)弾性接手
(1)高弾性ゴム継手の劣化
 ゴム継手はゴムのせん断力によりトルクを伝達しており、またねじり振動を吸収しているためそのエネルギにより劣化する。
 ゴムの表面には耐油ペイント塗装を行ってあるが、環境条件によっては空気中のオゾンの侵攻でゴム表面に細い無数のクラックが入る。これはオゾンクラックと呼ばれているが、ペイントの脱落がなければまず発生しない。発生しても徐々に進行するので定期的に点検し早目に交換する。深さが1〜2mm以上になれば破断強度、ばね定数の低下があるので交換すべきである。
 
3・15表 減速逆転機の故障の原因と対策
(1)クラッチ作動油圧の低下(クラッチスリップ)
原因 対策
(1)入側コシ器のつまり。 分解掃除を行う。
(2)作動油ポンプの摩耗。 手直しまたは新品と取替える。
(3)作動油圧、調整弁のこう着。 手直しまたは新品と取替える。
(4)作動油圧調整弁バネの折損およびへたり。 新品と取替える。
(5)前後進軸後部フタブッシュの摩耗。 新品と取替える。
(6)前後進切換弁の位置不良。 手直しする。
(7)前後進切換弁の摺動部品の摩耗。 新品と取替える。
(8)油圧作動筒のOリングの損傷。 新品と取替える。
(9)油量不足。 油もれを点検して、規定量まで給油する。
(10)前後進軸シールリングの摩耗。 新品と取替える。
 
(2)異常発熱
原因 対策
(1)作動油圧の低下によるクラッチのスリップ。 1の(1)〜(10)を検討する。
(2)過負荷運転によるクラッチのスリップ。 負荷を軽減する。
(3)軸受の損傷。 新品と取替える。
(4)油量過多。 油面を点検し規定量に調整する。
(5)油冷却器の異常。 水量調整および分解点検する。
(6)油の劣化および不適。 新油と取替える。
 
(3)騒音発生
原因 対策
(1)歯車バックラッシュの過剰。 新品と取替える。
(2)軸受の損傷。 新品と取替える。
(3)ねじり振動。 危険回転速度を避ける。
 
(4)前進、中立、後進の切換不良
原因 対策
(1)クラッチ面の焼付き。 新品と取替える。
(2)作動筒押えバネの切損。 新品と取替える。
(3)配管系の異物の混入。 掃除する。
(4)遠隔操縦装置を有する場合は同装置の故障。 遠隔操縦装置の修理。
(5)遠隔操縦装置の不良。 リンク関係手直しを行う。
 
(5)つれ回り
原因 対策
(1)摩擦板の焼付き。 新品と取替える。
(2)スチールプレートのそり不足 新品と取替える
(3)油圧作動筒おさえバネの切損。 新品と取替える。
(4)潤滑油圧の高すぎ。 潤滑油調圧弁の調整を行う。
(5)潤滑油の粘度の高すぎ。 新油と取替える。また潤滑油の冷えすぎで粘度が高い場合には湯温を50〜70℃に上げる。
 
(6)潤滑油圧の異常
原因 対策
(1)油もれ。 点検手直しを行う。
(2)潤滑油コシ器のつまり。 分解、掃除を行う。
(3)潤滑油調圧弁のバネの切損、へたり。 新品と取替える。
(4)潤滑油調圧弁のこう着。 手直し、または新品と取替える。







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