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6)ハンシン中速ディーゼル機関、MX28型機関
阪神内燃機工業株式会社
 
1. まえがき
 MX28の前身である中速機関、MUH28形は1971年に初号機を出荷して以来、当初のシリンダ当たり出力300PSから、順次改造して375PSまでパワーアップを行い、過酷な使用を強いられる漁船用主機関を中心に、数多くの就航実績を持っています。1991年、このMUH28形のストローク340mmを380mmに延長することをメインに全面的にモデルチェンジしたのがMX28形機関です。
 MX28形機関の設計にあたっては、MUH28形の就航実績を精査すると共に、FEM(有限要素法)を駆使して各部の応力を計画段階で評価し、最適な形状を見つけ出すという手法を取り入れました。また、実際の設計に先立って、6MUH28形の試験機関を一台製作して6MX28の設計出力の2700PSの運転を行い、一般性能のほか燃焼室回りの温度計測、主要部の応力の検証を行い、その結果を踏まえて設計した信頼性の高い高性能・高出力機関です。
 
2. 機関主要目
 MX28形機関には6シリンダと8シリンダの2種類のモデルがあり、それぞれの主要目を表−1に示す。
 
表−1 機関主要目
機関呼称   6MX28 8MX28
形式   縦型4サイクル単動ディーゼル機関
(過給機及び空気冷却器付き)
 
定格出力 kW 1838 2427
回転速度 rpm 730
シリンダ直径 mm 280
ストローク mm 380
平均ピストンスピード m/s 9.25
シリンダ最高圧力 MPa 15.2
正味平均有効圧力 MPa 2.152 2.842
燃料消費率 g/kWh 188(A重油、42700kJ/kg)
潤滑油消費率 g/kWh  
冷却方式 シリンダ   清水冷却
ピストン   潤滑油冷却
過給機   清水冷却
全長(機関単体) mm 3277 4137
全高 mm 3136 3509
据付幅 mm 1170 1170
機関質量(単体) ton 18.0 24.0
 
 
図−1 8MX28形機関
 
3. 機関の構造と特長
1)機関構造物
 機関の構造物は鋳鉄製で、台板と架構(シリンダと一体型)の2分割形である。架構とシリンダを一体化することにより、エンジンの剛性を上げ、さらに吸気管、冷却水主管、カム室も架構と一体の構造とした。
 
図−2 断面図
 
2)クランク軸及び軸受け
 クランク軸はピン、ジャーナル径を太くし、軸受け面積に余裕をとると共に、主軸受けに作用する慣性力を軽減する目的で、全筒にバランスウエイトを取り付けている。主軸受け冠は4本のボルトで固定し、さらに冠の剛性を上げるために、台板との合わせ面を特殊な形状としている。
 連接棒は3つ割り構造を採用してクランクピン軸受けの軸径を大きく取り、軸受け剛性を上げている。
 クランク軸の端からは100rpm当たり360PSの動力取り出しが可能である。
 
図−3
 
3)ピストン
 薄肉、軽量のダクタイル鋳鉄一体型のピストンを採用し、慣性力の軽減をはかっている。ピストン上部の熱負荷を軽減するために、システム油を強制循環させ冷却している。ピストンリングはコンプレッションリングを3本で、そのうちのトップリングには特殊形状合口のガスタイトリングを採用して燃焼ガスのブローバイを効果的に防いでいる。
オイルリングはコイルエキスパンダー付きの高面圧リングを2本上部に装着して燃焼室へのオイルアップを防ぐと共に摺動面は十分潤滑してシリンダライナの摩耗、ピストンの焼き付きを防止している。
4)シリンダライナ
 特殊鋳鉄製で、十分な強度を確保するために厚肉にし、その結果冷却がされにくくなった燃焼室周辺の温度の適正化をはかるため、ボアクーリングを行っている。
5)シリンダカバー
 鋳鉄製で、広い吸排気通路面積を確保するため十分な高さとし、中間棚を設けることで高いシリンダ最高圧力に対処できるカバー剛性を確保している。
シリンダカバー取付ボルトは油圧締めの採用により均一な締め付けを可能にし、分解・組立を容易にしている
シリンダカバーには全閉型の動弁装置覆いを装備して、潤滑油の飛散と騒音の軽減に貢献している。
6)吸排気弁
 吸気・排気それぞれ2組の4弁式で、すべての弁及び弁座のシート面にはステライト盛金を施し、バルブローテータとステム部の強制注油により、高い耐久性を保持している。
 
図−4
 
7)燃料ポンプ
 高圧形ポンプを採用し噴射管を短くすることで噴射効率を向上し、燃料カムはプランジャースピードを上げて高圧、短期間噴射を行うための最適なプロファイルとしながら、ローラとの接触面圧は適正なレベルとした。太いカム軸は運転中のカム軸の捩れを最小限にしている。
8)過給機
 急速な負荷変動への追従性が良好で、且つ低負荷運転にも適している動圧過給方式とし、高効率過給機を採用している。
 一般的に、8シリンダ機関の動圧過給では過給機のガス入口は4口になり、6シリンダの2口に比べて過給機効率が低下するのが通例であるが、8MX28では4本の排気管を過給機の手前で2本にまとめるパルスコンバータ方式を採用して、6シリンダと同等の高い効率を保持することができた。
 
図−5
 
4. あとがき
 中速エンジンは低速エンジンに比べて、小形で大出力が得られ、プロペラ回転数を自由に選べるという利点から、漁船やフェリーボート、作業船などの船舶の主機関として適している。
MX28形機関はこれらの船舶の過酷な使用状況を踏まえ、当社の長年の技術を集大成して設計したエンジンで、現在までに多くの船舶に採用され、良好な性能で高い評価を受けている。







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