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3)高出力三菱舶用ディーゼルエンジンS6D−MTK2型
三菱重工業株式会社
High Performance Mitsubishi Marine Diesel Engine S6D−MTK2
 
 国内漁船用エンジンは船の大きさにより搭載可能なエンジンの排気量が制限されている。今回5トンクラス漁船が対象となるエンジンを開発し、クラス最大出力を誇るS6D−MTK2を完成させ発売を開始したのでその概要を紹介する。
 
1. 製品仕様
 表1にエンジンの主要諸元を、図1にエンジン外観を示す。
 
表1 エンジン諸元
項目 仕様
漁船法馬力数 90
シリンダ径×行程 直6−φ124.9×144mm
総排気量 10.586l
連続定格出力 449kW(610PS)/2.370rpm
実用最大出力 493kW(670PS)/2.450rpm
正味平均有効性 2.3Mpa(23.2kgf/cm2)/493kW時
ピストンスピード 11.8m/s/2,450rpm時
出力率 26.8Mpa.m/s(274kgf/cm2・m/s)
全長×全高×全幅 1,790×1,l12×867mm
乾燥質量 1,580kg
出力当り質量 3.2kg/kW(2.4kg/PS)
逆転減速機 MGN133×(新潟コンバータ製)等
 
図1 エンジン外観
 
2. 用途
 全高を低く抑えたローライン設計により漁船用のほか、遊漁船やプレジャーボートと幅広い用途に対応可能である。
 
3. 特徴
(1)構造
 燃料噴射系に高圧噴射が可能な三菱製ユニットインジェクタを採用し、オーバヘッドカム駆動で優れた噴射特性を示している。また、補機クーラ類をすべてエンジン右手側脇部に集約し、全高を低く抑え船体への搭載性が改善した。後述の整備性に関しエンジン左手側は補機類が一切ないので、ユーザの機関室への出入り及び整備の作業性を向上させている。
(2)性能
 吸気系は過給機に高効率・高圧過給の三菱製ターボチャージャを採用した。シリンダヘッドは4弁方式で、吸気ポートが独立した2エントリタイプの優れた流入特性と、高圧燃料噴射との最適化により、漁船として要求される低速から高速までの範囲で低燃費でクリーンな排気を可能とした。以上の結果最大出力はクラス最大の493kW(670PS)/2,450rpmを達成した。船速に大きく影響するエンジン質量でも出力当り質量が3.2kg/kW(2.4kg/PS)と脅威的なレベルで他社を圧倒している。また電子制御式オールスピードカバナの採用により高いレスポンスで操船時にエンジン応答性の向上が図られている。
(3)信頼性
 ピストンは一体型アルミ溶湯鍛造品とし、アルミピストン本来の利点を生かしつつ高い燃焼圧力下での熱負荷にも十分耐えるものとした。シリンダヘッドはFCV材とし疲労強度の向上を図り、十分なヘッド厚さと最適なボルト配列により燃焼ガスのシール性を確保した。軸受部には高面圧仕様の合金メタルを採用し、クランク軸はフィレットすみ肉R部を高周波焼き入れし疲労強度を高めた。ターボチャージャはロータ軸受部の水冷却で高回転での耐摩耗性を向上させた。
(4)整備性
 6気筒一体型ロッカケースは、アルミ材の採用で分解時の重量問題を解決し、オーバヘッドのカム軸を内蔵したまま取外し可能な構造とした。シリンダヘッドは1気筒毎の単体式とした。またサイドカバー付クランクケース、大端部斜め割りコンロッドを採用して船内でピストン抜取り可能とした。
(5)安全性
 高温部には遮熱カバー、回転部には保護カバーをそれぞれ設置し、更に燃料油の配管部には飛散防止カバーを設けユーザの安全性に十分な配慮をする一方で、エンジンの警報装置を各種装備し故障の未然防止にも万全な措置を施している。







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