日本財団 図書館


6. その他
1)舶用ディーゼル機関のFEM解析技術
株式会社 赤阪鐵工所
 
1. はじめに
 近年、コンピュータ技術の発展により、世の中を取り巻く環境は加速度的に進歩しており、エンジンメーカーにおいてもコンピュータは性能計算から図面や文書の作成、部品の製造や各種データの管理に至るまで様々な形で幅広く利用されています。当社では、舶用ディーゼル機関の信頼性・耐久性向上のためにコンピュータによる有限要素法解析を用いた構造解析・熱解析等を行い、お客様にご満足頂けるディーゼル機関の開発に日々努力しております。
 ここでは、ディーゼルエンジンの主要部品であるピストンを例に取り上げて当社における有限要素法解析事例を紹介させて頂きます。
 
2. 有限要素法解析について
 有限要素法解析(Finite Element Method)は、数値解析手法の一つで現在最も広く普及しており、構造、熱伝導、熱応力、振動、流体等といったあらゆる解析が可能です。FEM解析の大きな利点は製品の開発段階において、コンピュータ上でモデルを作成し、様々な条件下で評価が出来るという点です。そのため、試作品を多数製作する費用や時間が削減されることから、大幅に開発期間が短縮され、お客様により良い製品を迅速に提供できるようになりました。またコンピュータの性能が飛躍的に進歩したことで、より複雑な形状物でも解析が可能となり、特にエンジン部品については三次元有限要素法解析を用いて、信頼性・耐久性の向上に幅広く活用しています。エンジンだけでなく陸上産業機械の設計にも利用していますが、ここではエンジンの中でも最重要部品のひとつであるピストンの解析例を紹介いたします。
 
(拡大画面:21KB)
図−1 ピストン解析の流れ
 
図−2 ピストン解析モデル例
 
3. ピストンの開発におけるFEM解析事例
 ピストンはディーゼル機関の中で最も過酷な環境で使用されており、燃焼による高温・高圧にさらされながらシリンダ内を高速で運動しています。また近年、機関の高出力・軽量化の要求が高まっており、さらなる信頼性・耐久性の向上が課題となっています。そのため、ピストンの開発には非常に高度な技術が要求され、FEM解析が必要不可欠なものとなっています。
 図−1にピストン解析のフローチャートを示します。まず構造設計を行い、諸寸法を決定します。次に図−2のようにコンピュータ上にモデルを作成して様々な条件下での解析を行い、応力や温度を評価します。その解析結果から材質や肉厚等の最適化を図り、軽量・コンパクトながら高い信頼性と耐久性が保証できる形状とします。
 
図3 舶用ディーゼル機関におけるFEM解析事例
 
4. FEM解析技術の向上
 FEM解析にて様々な条件をクリアした部品は、検証試験を経て製品化されます。検証試験では試作品を製作し、要求品質が達成されているかを評価をするために、FEM解析と同様の条件下で応力や温度の計測が行なわれます。一般的にFEM解析結果と実際の計測結果とは若干の差異を生じますが、この差異をFEM解析の段階でいかに少なくできるかが課題であり、お客様により良い製品を迅速に提供するための最重要ポイントです。そこで当社では、実際の計測結果をFEM解析にはフィードバックさせて解析手法の妥当性を確認し、解析技術の向上と解析時間の短縮に役立てています。
 
5. 次世代舶用ディーゼル機関への展開
 当社ではお客様のご要望にお応えするべく、次のようなコンセプトを掲げて、次世代ディーゼル機関の開発に取り組んでいます。
1)高出力・軽量化
2)信頼性・耐久性の向上
3)取扱い性向上
4)ランニングコスト低減
5)地球環境保護とエコシップ対応
 以上のようなコンセプトを着実に実行していくために、FEM解析は欠かせないものとなっています。次世代ディーゼル機関には従来培ってきた解析技術を余すことなく展開して参ります。
 
6. おわりに
 以上ご紹介しましたように、舶用ディーゼル機関の近年の技術革新は、コンピュータ技術と共に発展してきたと言っても過言ではなく、FEM解析技術においても今後更なる発展を遂げていくものと思われます。
 当社では最新技術と創立以来90年に渡る豊富な知識と経験を融合させた最先端の技術で、お客様に満足していただけるディーゼル機関を提供して参りますので、今後ともご指導の程よろしくお願い致します。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION