(3)「椎葉らしさ」の考え方
ア 椎葉らしさについて
特産品づくりに活用する地域イメージ=「椎葉らしさ」については、第3章で示した活性化の基本的考え方に基づき、村が有する地場資源から導かれる豊かな自然の恵み、山村生活、神秘性といったイメージを集約化して提示する必要がある。その際に、社会的ニーズ(市場ニーズ、消費者ニーズ等)に沿ったイメージづくりが重要であり、「椎葉村民が消費者に訴求したい地域イメージ」ではなく、「消費者(例えば都市の人)が本村に期待する地域イメージ」を「椎葉らしさ」として提示する必要がある。
図表6−46 「椎葉らしさ」の集約化
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社会的ニーズから「椎葉らしさ」をもった特産品を考えると、都市型社会に暮らす(あるいは暮らさざるを得ない)消費者に「癒し・安らぎ」を提供できる商品づくりが重要であり、都市・都会とは対極にある温かみや安心感のある「地方」的な商品づくり、日本人の心に訴求する「伝統・文化」的な商品づくりがあげられる。この「地方」性と「伝統・文化」性の2つには、グローバルスタンダード、ナショナルスタンダードにみられる画一化・標準化された生活様式・文化潮流から一線を画し、日本らしさ、地域らしさを守りぬいている本村の「純粋性(purity)」を特性として訴求することが、「椎葉らしさ」の純化に、より一層寄与することが期待される。
したがって、都市・都会が抱えるマイナス面に汚染されていない温もりや実直が残された「地方の純粋性」、世代を超え、守り、継承されてきた正当な技術や芸能である「文化・伝統の純粋性」、この2つの「純粋性(purity)」から21世紀の新たな「椎葉らしさ」(ブランド・イメージ)を再構築する。
図表6−47 「椎葉らしさ」を考えるキーワード
■地方の純粋性
地方の風土、人、モノがもつ(もつことが期待されている)、素朴さ、純真さ、暖かさなどをテーマとした商品開発を行う。
■伝統・文化の純粋性
何世代にもわたり、守り、継承してきた伝統・文化を活かした、偽装・欺瞞のない正当・本物の商品開発を行う。
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イ 「椎葉らしさ」を構成する訴求要素について
椎葉らしさ(「地方」と「伝統・文化」が侵食されず「純粋性(purity)」を確保していること)を基本的考え方とした商品開発を進めるにあたり、「地方」と「伝統・文化」の2つの純粋性を支える4つの要素を消費者に訴求することで、地域産品、特産品のイメージの向上を図る。
「地方」の要素としては、(1)人格性、(2)故郷性を訴求する。「人格性」は、清く美しい心が宿る椎葉の人の手による生産イメージから、消費者を裏切らない生産者の確かな信頼性を訴求する要素とする。「故郷性」は、商品に椎葉の山里の風景などを重ね、日本人の心に共通して宿る故郷の光景や懐かしさをイメージさせ、商品の親しみやすさや温かさを訴求する要素とする。
図表6−48 2つの「純粋性」を構成する要素
■地方の純粋性
(1)人格性(清く美しい心がある)
(2)故郷性(日本人の心に宿る懐かしさがある)
■伝統・文化の純粋性
(3)伝統性(歴史が育んだ確かな技能がある)
(4)風土性(豊かな自然の恵みがある)
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「伝統・文化」の要素としては、(3)伝統性、(4)風土性を訴求する。「伝統性」は、歴史の試練に耐え、研鑽の中から継承されてきた技術・技能が、高い品質を確保した商品の信頼づくりをイメージさせる要素とする。「風土性」は、椎葉固有の自然(森・水)がもたらした豊かな恵み、本物の特産物など、清らかな自然環境がもたらすを本物の素材、商品をイメージさせる要素とする。
(4)「椎葉らしさ」に基づく地域産品の考え方
「椎葉らしさ」を構成する4つの訴求要素に基づき商品のタイプを明確化し、商品の属性(品質、価格、特性)、販売戦略(販売対象、他商品・他地域との差別化等)、販売場所などの方向性を定める。
「地方」性を担保している商品は、既存の商品でいうと、平家本陣、大神館などで販売している加工食品、村内旅館・食堂のそば、猪鹿料理などがあるが、温かみ、懐かしさを感じさせる商品性が強いため、旅行客・観光客に販売する土産品、記念品などが中心となる。
「伝統・文化」性を担保している商品は、伝統的生活品、儀礼・儀式用品(正月飾り、松飾、注連縄等)、伝統料理(高級料理)が該当し、既存商品でいうと、焼畑農法によるヒエ・アワ・そばなどがあるが、現状では商品数が少なく、今後の新規開発が必要な商品分野と考えられる。
「地方」「伝統・文化」の両性を確保している商品は、他地域にない独自性、競争性、市場性を担保しており、地域の特産品に該当するものである。既存商品でいうと、干椎茸(花どんこ)、伝統工芸品(能面・神楽面)が考えられるが、現状では全国有数、宮崎県といったトップランクに位置づけられるブランド商品の開発がない。
図表6−49 「椎葉らしさ」と地域産品の考え方
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(5)椎葉村における特産品開発の基本方針
ア 開発にあたっての条件
特産品開発にあたって考慮すべき開発条件としては、村の地場資源及び生産体制の現状、特産品の全国及び県内の動向などから、次の諸点が重要と考えられる。
特産品の属性面
(1)一定の社会的需要が見込める商品
(2)椎葉の地場資源を活用した商品
(3)椎葉の地域イメージを体現した商品
生産・販売面
(1)既存の地域経済活動との役割分担、機能連携(相互補完等)が可能な体制
(2)高齢者・農林業者等の参画が可能な生産体制
(3)商品情報の豊富化
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(1)特産品の属性面
特産品がもつべき属性については、第一には一定の需要が見込め、採算性が確保できる商品であることが必要である。特に同じ消費者が、一定期間に商品を消費し、繰り返し購入することが期待される商品が好ましく、例えば短期の賞味期間食品や季節系商品(中元・歳暮の贈答品、正月用品等)などが該当する。
ただし、本村の商品づくりにおいて、原材料、生産技術など本村の地場資源が活用された商品づくりは絶対条件であり、一定の社会的需要があっても本村の地場資源が活かされない商品は特産品づくりからは除外すべきである。
また、本村の地域イメージについては、前掲の「本村らしさ」に基づき、地域性や伝統・文化性を担保した高質で本物の商品づくりが必要であり、商品を通じて本村全体の周知度並びにイメージアップが可能な商品づくりが求められる。
(2)生産・販売面
生産販売面においては、既存の地域経済活動との役割分担、機能連携が可能な調和のある体制づくりが重要である。特に村内において成果をあげている活動、長所と考えられる活動については、そうしたプラス面を最大限に活用した特産品づくりが必要である。例えば、現在の加工グループの生産活動は、村民の生きがい・社会参加の創出に重要な役割を果たしてきているため、こうした活動との役割分担、機能連携は極めて重要である。
また、生産活動に関わる労働力が減少する中で、女性、高齢者、農林業者といった特産品づくりに参画可能な住民層を労働力として確保することが重要であり、季節ワーク、タイムワーク、在宅勤務などの就業形態や生活サイクルなどに応じた生産体制を確保し、潜在化している労働力が参画しやすい生産環境の確保が必要である。例えば、高年齢者などについては、力作業や長時間労働の限界、高度又は最新の生産技術の習得の困難などがあるため、こうした点に配慮した参画のあり方、農林業者については、繁忙期・閑散期に応じた参画のあり方を検討する必要がある。
また、食の安全性、他地域産(外国産、村外の国内産等)との違いなど、消費者が生産者に商品情報の提供を強く求める時代となってきており、また、消費者の購買意欲を刺激する商品情報の提供により、大きな成果をあげている特産品も多い。こうした商品情報の豊富化については、本村の地域産品に共通する弱点・課題であり、特に特産品づくりにおいて早急に整備されるべき条件である。
イ 開発の基本方針
本村では、前掲でみたとおり、現在、農林畜産品、加工食品、非食品などで構成される100種以上の地域産品が既に産出されている。今後の特産品開発については、(1)既存の地域産品の中から一定の条件を有するものを抽出し特産品化を図ること(既存商品の特産品化)、(2)未利用・低利用の地場資源を活用して新たな特産品の開発を図ること(新規商品の特産品化)、の2つの方針により進めていく。
特産品開発の2つの基本方針
■既存商品の特産品化
・主力の農林畜産品のうち、本村らしさを具備しているもの(乾椎茸、ホウレンソウ、トルコキキョウ、椎葉牛等)に対して、知名度の向上、商品性能の一層の向上を図り、全国的に認知されるナショナルブランド商品に押し上げる。
・平家本陣、大神館、その他村内物産販売所において観光客相手に販売されている既存の加工食品、土産物、農産物などについては、生産者側の意向(やる気、生産体制等)を踏まえたうえで、消費者ニーズに基づいた品質面の向上、商品属性(商品コンセプト、商品名、分量、価格等)の大胆な見直しを行い、都市部のデパート・小売店、県の物産販売所(KONNE等)など、大都市圏において販売が可能な商品への転換を進める。
■新規商品の特産品化
・継承されている伝統・文化(神楽、焼畑、狩猟等)のうち、他地域にない独自性を有するものについては、本村の伝統・文化の優位性を活かした商品開発を進め、特産品化を図る。
・自然資源などの未利用・低利用の地場資源のうち、商品化によって都市部で一定の需要を見込むことが可能なものについては、本村の地方性を打ち出した(=「椎葉らしさ」を体現した)商品化を進める。
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図表6−49 特産品開発の基本方針について
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