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(3)体験したい農林漁業体験
−食関連の体験や、のんびりと自然に親しめる体験への関心が高い−
 「食品づくり体験」の要望が最も多く、食への関心が高いことがわかる。「森林散策などの自然体験」や「のんびりする」も続いて高い関心があり、豊かな自然に触れながらゆっくり過ごしたいと思う人が多いといえる。
 
図表5−20 最も体験したい農林漁業体験
資料:
(財)都市農山漁村交流活性化機構『都市生活者の農山漁村との交流に対するニーズ調査』
 
(4)体験ツアープログラムに関する要望
−プログラム内容の充実と個人向け農山村体験のための情報提供−
 体験ツアーは、比較的気軽に参加できる形態であるが、ツアープログラムに関するニーズをみてみると、以下のようなものが挙げられている。ツアープログラムに関することでは、「ツアーの中身を充実してほしい」「地元の食材を使った郷土料理を食べたい」といった要望が最も多く、地域資源を活かした地域独自の充実したプログラムを開発することが重要といえる。
 「体験コースを選択できるようにしてほしい」、「自由時間も入れて欲しい」にみられるように、決められたプログラムをこなすだけでは満足できず、それぞれが自分流のふるさと体験を望む傾向がある。
 「詳細な情報がわかるように」との要望も多く、都市住民への詳細な情報提供が必須である。
 
図表5−21 体験ツアープログラムに関する要望
資料:
(財)都市農山漁村交流活性化機構『都市生活者の農山漁村との交流に対するニーズ調査』
 
(5)体験ツアーヘの要望
−プログラム内容や観光基盤の充実、地元住民との交流促進、清潔感・安心感の確保−
 体験ツアー参加者へのアンケートによると、参加者の満足度に影響を与えたものとしては、「体験プログラムの内容」のほか、「地元の人との交流」、「豊かな自然」が多く挙げられている。同様のアンケートで、体験ツアーに対する評価としては、「案内看板等のアクセス情報」や「おみやげ品の品揃え」が不評で、観光客を受け入れる基本的な条件整備が必要といえる。((財)地域活性化センター『「ふるさと体験」事業参加者へのアンケート調査結果』平成14年)
 また、平成12年の『月刊 世論調査森林と生活』によると、「森や山などへ行ったことがある」人に、整備して欲しいと思った施設を3つまで選んでもらった結果、「トイレ等の衛生施設」が約6割と多く、次いで、「遊歩道やベンチ」、「案内板」の要望が多いことから、安心して過ごすため最低限の設備が要望されていることが分かる。
 
図表5−22 満足度に一番大きな影響を与えたもの
(拡大画面:94KB)
資料:
(財)地域活性化センター『「ふるさと体験」事業参加者へのアンケート請査結果』(平成14年)
 
(3)一般的な都市住民と農山村体験参加者のニーズの比較
−体験参加者はふれあいや地域の文化を吸収しようとする−
 一般的な都市住民(インターネット上で行ったアンケート調査の対象で、全国の都市在住者)と農山村体験参加者(農山村体験プログラムの参加者)双方に対して、「休日に田園地域や漁村、山間部などの自然豊かな地域に出かける場合」について、その目的や希望する活動等を質問したところ、「自然景観や農村景観を楽しむため」がそれぞれ約半数を占めているが、双方を比較してみると、都市住民はのんびりすごしたい人が多いのに対して、体験参加者はより人とのふれあいを求めたり、地域の文化を吸収しようとする傾向がみられる。
 
図表5−23 休日に自然豊かな地域に出かける場合の目的
(拡大画面:112KB)
資料:
(財)地域活性化センター『地域が望む、利用者が望むふるさと体験事業』(平成14年)
 
(7)修学旅行のニーズ −実施校数は増加傾向だが、限られた時間内での体験−
 近年、修学旅行に体験学習を取り込む学校が増加している。中学校では平成12年度で約4割、高校でも平成11年度で約4割の学校で体験学習を実施している。日数が限られているため(高校の修学旅行における体験学習の平均配当時間は全国平均で4.3時間)、体験できる内容は限られたものとなってしまうが、中には2〜3日滞在して生活体験を行う学校も出てきている。
 
図表5−24 修学旅行のニーズ(体験学習実施率の推移)
(拡大画面:56KB)
資料:『月刊レジャー産業資料』(2002年3月号)
 
ウ まとめ:都市住民の中山間地域に対するニーズ
■都市住民は農山村に対して、都市では味わえない、豊かな自然、新鮮な食材、人情といった農山村にしかない良さに関心を持っている。こういった地域資源を活かした自然や農業の体験であれば、地域住民が主体的に関わることができ、活性化への効果が期待できる。また、農山村体験は、すでに観光の一つの形態として定着してきたので、今後は、地域資源をいかにうまく活かして、差別化を図るかが重要となってくる。
■体験プログラムの内容やサービスの充実に加え、目的地へのアクセスのわかりやすさや、清潔感、安心感、豊かな自然環境等、受け入れるための基盤整備をしっかりとすることが、観光客をひきつける重要な要素である。また、地域住民とのふれあいやアフターサービスを行うことにより、地域へのリピーターやサポーターも期待できる。
■子どもに対する農業体験・自然体験のニーズが高まっている。こうした子どもたちは、学校5日制やハッピーマンデー等により連続した休暇が可能になった。さらに、地球温暖化などを背景に環境学習の必要性も合わせて考えると、ファミリー客や学校、ボーイスカウトなどが体験型観光のターゲットとして期待できる。
■人々の価値観の多様化に伴って、観光客それぞれが思い思いの時間を過ごしたい傾向がみられるので、体験プログラムにおいても、決まった型に押し込めるようなものではなく、ある程度自分流に過ごせるようなものにする工夫が必要である。
■人々は、体験をしていくにつれ、より深く山村文化を吸収したいと思うようになる。また、初めて体験する場合は、楽しみ方がわからず戸惑う人も多い。このように、ターゲットとする人によって体験プログラムの内容も変わってくるので、いろいろなタイプの人に対応できるよう、農山村の良さをより理解してもらうためのガイドの養成も必要である。
  







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