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2 観光・交流の全国動向と周辺環境の変化
(1)都市住民の中山間地城に対するニーズ
 ここでは、中山間地域や農山村体験に対する都市住民の関心について整理し、中山間地域における観光のターゲットといえる「都市住民」のニーズを把握する。
 
ア 都市住民が中山間地域に求めるもの
(1)農山漁村に対するイメージや期待 −豊かな自然とのふれあいや新鮮な食材への期待−
 都市住民が農山漁村に対して抱くイメージや期待は、「自然環境とのふれあい」が約78%と最も高い。「新鮮な産品を取り寄せる」も約半数の回答がある。都市住民は農山漁村の豊かな自然とそこで採れる地場の新鮮な産品にあこがれを抱いていると考えられる。
 『都市生活者の農山漁村との交流に対するニーズ調査』((財)都市農山漁村交流活性化機構)によると、農山漁村で行われている交流活動のうち、「朝市での買い物」や「郷土料理レストラン」など「食」に関係する活動への関心が年齢を問わず高くなっている。
 若い世代においては、他の世代に比べて「手作り体験」への関心が高い。一方、50〜60代では、金銭面時間面での余裕があるせいか、買い物、宿泊、ツアーへの参加などの関心が高いが、「環境ボランティア活動」、「伝統芸能・祭りへの参加」といった積極的な活動に対しても他の年代より関心が向いている。
 
図表5−16 農山漁村に対するイメージ
資料:
(財)都市農山漁村交流活性化機構『都市生活者の農山漁村との交流に対するニーズ調査』
 
(2)農村滞在への関心 −大都市住民ほど、農村での滞在に関心が高い−
 大都市、中都市では、過ごしてみたいと思う人が約7割を占め、都市住民は日常では味わえない自然を希求している。逆に、過ごしてみたいと思わない人も3分の1以上を占めているといえる。年代的には、50歳代が比較的関心が多い。
 また、リゾートや保養地を含んだ滞在型旅行をする場合の要望として、「自然に親しめる場所」や「バラエティに富んだ食事を楽しむ」について、全体の約4分の1の人が望んでいる。(平成12年5月号『月刊 世論調査 余暇時間の活用と旅行』)
 
図表5−17 農村滞在型の余暇生活への関心
(拡大画面:78KB)
資料:
『月刊 世論調査 森林と生活』(平成12年2月号)
 
イ 都市部における農山漁村体験観光のニーズ
(1)農山村体験型観光について
 農山村では、従来の観光施設に依存する観光や、行楽型ツアーを誘致しても、経済的に地域にあまり還元されないものと考えられる。地域の真の活性化とは、すなわち、住民が生き生きと生活できることであり、そのためには、地域で住民の活躍する場があること、文化的な誇りをもてることが重要である。また、一方で、都市住民においても、健康や自然環境への関心から、農山村とのふれあいに対するニーズが高まっている。
 つまり、地域の資源や人材を活かせるような観光が望ましいものといえ、農山村体験型観光もその一つとして地域の活性化に有効なものと考えられる。農山村体験型観光は、農山村などに訪問・滞在し、その地域の農林業を体験したり自然・文化・人々との交流を楽しむというスタイルの観光で、農村・都市間の交流活動のひとつといえる。
 
図表5−18 都市住民からみた農村・都市間交流の態様
(拡大画面:136KB)
資料:
農林水産省農村振興局「グリーンツーリズムの展開方向」(平成13年)
 
(2)都市住民の農集体験・農村体験に関する意識 −農業・農村に対する関心の高まり−
 農業や農村への関心は高く、増加傾向にある。特に、農作業体験は9年間で17.5%、援農は12.0%増加しており、家庭菜園と比べて関心が急増している。また、子どもへ農作業を体験させたいとする人が8割上を占め、関心度はかなり高くなっている。
 『親子による農林漁業体験についてのニーズ調査』((財)都市農山漁村交流活性化機構)によると、親が子どもに体験させたいものは、「農作業の手伝い」「収穫体験」「野外観察や自然観察」など、自ら手足を使い、体験して学ぶようなものが多い。また、親子でやってみたいものは、「キャンプ・オートキャンプ」「農林業体験民宿」といった、宿泊を伴った都市ではできないような体験への関心が高い。
 
図表5−19 都市住民の農業体験・農村体験に関する意識
調査項目 平成2年
(2)
平成11年
(1)
(2)−(1)
自分の家や近くの市民農園などで家庭菜園をしてみたい 59.5 63.3 +3.8
自分自身体験的なものであれば、田や畑などで農作業をしてみたい 45.5 63.0 +17.5
もっと気軽に農家の手伝い(援農)ができれば協力したい 45.0 57.0 +12.0
自分の子供や孫達には、農作業を体験させたい※ 81.3
もっと気軽に農家と行き来がしたい 54.0 68.5 +14.5
もっと気軽に農家の人たちと交流を持ちたい※ 72.8
(注)
首都圏居住の非農業者400名を対象とするアンケート調査、※は、平成11年に新設された調査項目。
資料:
(株)博報堂生活総合研究所「食と農業に関する意識調査」







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