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(3)新しい居住様式とライフスタイルの変化
(1)高齢社会の到来
 我が国の高齢化率は急速に高まっており、すでに総人口の6人に1人が65歳以上の高齢者となっている。
 国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(平成14年1月推計)」における中位推計の結果および参考推計結果によれば、高齢者数は今後も増え続け、2043年に3,647万人でピークを迎える。また、高齢化率は2015年には25%を越え、2054年に36.0%でピークを迎えるものの、2100年になっても32.5%であり、4人に1人が高齢者という時期が21世紀の大半を占めると予測されている。
 また、国連の定義でいう高齢化社会(高齢化率7%)になってから高齢社会(同14%)になるまでに、欧米諸国がおよそ半世紀以上かかっているのに対し、我が国は24年間で高齢社会に突入した。
 このように急速に高齢化が進んだために、我が国では社会的な対応が十分に整っているとは言いがたい状況である。社会全体で介護を支える「介護保険制度」が2000年4月に施行されたものの、介護の対象となる以前の高齢者に対する支援制度の充実はもちろんのこと、いざというときには地域に住む人々同士で支え合えるまちづくりが求められている。
 
(2)高度情報化社会の進展
 現在、携帯電話の普及や、インターネット利用者の急速な増加、光ファイバー網の整備展開、インターネットのブロードバンドb接続の普及など、私たちの社会に大きな影響を与えるものとして高度情報化が進展している。
 
a 問題解決のための提携や協力関係のこと。
b データ伝送の分野において,広帯域のこと。近年は,単に高速度で大容量のデータ転送のことを指すことが多い。動画の伝送など,ネットワーク上の高度なサービスを実現する。
 
 一方、政府においても、ITa革命の推進を21世紀における日本経済と国民生活の繁栄を決定づける最重要の戦略課題として位置づけ、「e-Japan戦略b」等に基づき、重点的かつ戦略的にIT施策の推進を図ることとしている。
 また、このようにIT社会の構築が進む一方で、いわゆるデジタル・ディバイドcの問題などの取り組むべき課題も生じており、その解決に向けた施策展開が必要とされている。
 
(3)SOHO型住宅への要請
 少子・高齢社会の到来や、情報通信技術の発達を鑑み、職住近接のまちづくりを視野に入れていく必要がある。そうしたまちづくりのために注目されているのが、自宅やその近くに小規模事務所を構えるスモールオフィス・ホームオフィス(SOHOd)である。
 SOHOとはSmall Office・Home Office を略したもので、通勤等に要する負担から解放され、個人の能力や家族の事情にあわせて勤務の形態を選ぶことが可能になるなど、仕事の効率の向上、ひいてはゆとりある生活の実現に貢献できるものとして注目されている就業形態である。
 さらに、県においても、(財)福井県産業支援センターによる「ふくいSOHO支援事業」が行われており、SOHO事業者のための有効な支援施策を推進することを目的として、各種の支援事業を実施、運営している。
 
図表1−6 ふくいSOHO支援事業
支援事業名 事業内容
ふくいSOHO★CO 企業とSOHO事業者とのビジネスマッチングe、またSOHO事業者同士 のコミュニケーションを支援するWeb上のシステム
SOHO サロン SOHO事業者が利用できるスペースの提供(打合わせや、SOHO事業者同士の情報交換などの場所)
SOHOインキュベート OAデスク、ロッカーなどが備え付けられ、館内ネットワーク設備等 が利用可能なSOHO向けのインキュベ一トfルームを、事業化の可能性により最長3年間まで低家賃で貸す事業。ルームタイプには、約 6.5m2のブース型と約27m2の個室型の2つがある。
SOHO交流会 SOHO事業者間や、SOHO事業者と県内企業との情報交換・人的交流・取引機会の創出を日的とする事業(計画中)
SOHO事業者実態調査 IT関連のSOHO事業者を対象に、訪問面接調査によって営業上の悩みや成功要因を探り、そのデータをもとに県内SOHO事業者のための有効な支援施策を推進するための調査
資料: (財)福井県産業支援センターホームページより作成
 
a 情報技術(Information Technology)。情報通信技術からその応用利用場面まで広く利用され、コンピューターやインターネットの進化と広がりで、工学的技術から企業経営、人文・社会科学、コミュニケーションまでその応用範囲を広げている技術・手法を総称していう。
b 日本を世界最先端のIT国家にしようとする国家戦略(平成13年1月策定)。
c 情報を持つ者と持たない者との格差のこと。富裕層がデジタル機器を利用し情報を得てさらに経済力を高めるため,貧困層との経済格差が広がるとされる。〔アメリカ商務省が1999年に発表した報告書での造語〕
d 小規模な事業者や在宅勤務を意味するが、社会的に定着した定義は存在しない。情報通信白書(平成14年版)においては『Small Office Home Officeの略。企業に属さない個人起業家や自営業者等が情報通信ネットワークや情報通信機器を活用し、自宅や小規模な事務所で仕事をする独立自営型のワークスタイル。情報通信を活用した遠隔型のワークスタイルである「テレワーク」の一形態と考えられる』とされる。
e 発注企業と小規模企業・個人事業主との間に立ち仕事の仲介などを行うこと。
f ベンチャービジネス等を軌道に乗せるまでの施設・機器・資金などの援助を行うこと。もとは、卵をかえす意味。
 
(4)地域産業構造の転換
(1)グローバル化が進む社会経済の動向
 輸出主導により産業の発展を実現してきた日本経済は、グローバルな競争環境の中で、生産コスト削減のために生産拠点の海外移転や部品の海外調達を進め、いわゆる産業の空洞化が問題にされるようになった。また、業界の再編、企業経営の合理化を進め、競争力を高める努力が行われている。
 しかるにそうした現象は、規格の統一された製品や差別化が難しいまたはできていない製品などを中心として、価格競争に陥っている産業・企業に傾向的に多いと考えられる。これに対し、先述のように、現代は心の豊かさを求める時代であり、本当によいもの、安定して高品質なものを求める動きも見られる。例えば、地域の特質を生かして差別化した商品や、新鮮で信頼できる農産物の地産地消(域内生産・域内消費)などが注目を集めており、価格以外の要素による差別化の工夫・努力が求められている。
 
(2)地域の生活実態に対応したサービス産業への要請
 価値観が多様化する中で、地域の生活に密着し、地域のニーズに対応できる産業の展開が求められる時代となっている。
 この背景には、ものの豊かさに加え、心の豊かさを求める成熟した生活への要請があり、少子高齢化が進展する地域社会において、手軽に身近に接することのできるサービスを求める地域の実情が見られる。
 こうした社会的な状況が、女性の社会進出に伴う子育て支援や、高齢者や障害者に対する介護サービス、地球温暖化防止やリサイクル等の環境ビジネスなど、地域の実情に応じたサービス提供が産業への要請となっている。







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