2. 連携・協働推進の手順
これらの事業や取組を日立市において推進するにあたって、市内及び周辺に立地する大学の状況も踏まえる時、連携・協働事業や取組を推進していくためには、以下の環境づくりや実施手順などが考えられる。
(1)地域の環境づくり、地域と大学における気運づくり
○大学を場とする、大学及び市民参加型のイベントの企画実施、継続的実施を通し、大学と地域との交流機会・インターフェイスを増やす。
○市行政計画(総合計画、部門別計画)において、市内大学などの地元資源としての位置付けを明確化していく。
○市報や大学における広報、掲示、学生新聞などにおいて、各地の連携事例記事や市内の人材募集情報などを継続的に広報する。
○教員の授業計画やゼミ運営計画立案にあたって、地域の各種福祉活動やまちづくり活動への参加を支援する情報を積極的に取り込む。
日立市のまちづくりや地域福祉事業への参加、あるいは交流イベントなどを通し、留学生を含めた大学や市民各層との交流を深めると同時に、地域福祉課題やまちの活性化などの具体的なテーマと方策に関して情報を共有化する。このプロセスを通して相互信頼や理解、活性化に関する活動への共通理解や共有意識、気運の醸成が図られていく。
また、市行政計画においては、日立市及び周辺地域に立地する大学などを、地域活性化の有力な戦略的資源として明確に位置付け、連携や相互協力を通した地域づくりを目標として明示していく。
また、情報の継続的広報と共有化も重要であり、大学のできごと、大学の立地する地域のニュース、ボランティア募集・参加希望などの情報を継続的に各種媒体で広報・情報提供し、それぞれの状況報告や交流の窓口を多様に持つことを通して、相互のコミュニケーションルートがより確立していく。
人材募集について、特に地域に求められることは、行政や社会福祉協議会、商工会議所などが、市民による地域保健福祉・まちづくり活動などへのボランティア参加や実習参加の募集、インターンシップ情報をより積極的に大学、学生クラブなどに広報することである。
広報については、さらに市報などの定期連載を通して、「地域と大学の連携」の先行事例紹介や市内での取組事例を紹介・顕彰するなどの方策により、市民への情報提供と意識喚起を助長するという手法もある。
また、学生参加の推進には、個々人を対象として一般広報する手法の他、(1)講義やゼミを契機とする手法、(2)サークルや体育会活動、自治会活動を契機とする手法などがある。
(1)では、最近のフィールド体験や実習の重視が叫ばれていることから、保育や福祉、栄養専攻などの学科では、情報提供面で教員や学科を支援し参加を助長することになる。(2)については、地域のニーズ情報と学生などの関心、提供できるノウハウ・技能とのマッチング機能の整備が必要である。
市のボランティアセンターの充実強化とともに、新たな市民活動のセンター的な機能の整備によるマッチング機能の拡大、大学などでのボランティアセンター機能のいっそうの充実、地域からの情報の積極的な提供などもあげられる。
(2)具体的手順・方策
○首長と大学経営責任者との包括的な協定書の締結
○常段の「連携協働」企画検討のワーキンググループを設置
○連携に関するモデル事業の企画採択と実施
○市民、大学との「市民フォーラム」の設置を通した模索と試行実施、ノウハウの蓄積
具体的な連携強化に着手するにあたっては、市民、市行政、大学関係者などの意識喚起と目標意識の共有化のために、まずは、両者トップ間の包括的な連携・協働推進の協定書を交換することが、戦略的に極めて有効なことは今回事例でも明らかになっている。
あわせて、大学、市行政、その他、主なセクターが集まっての連携・協働推進協議会、具体的な企画立案の実行部隊である常設の作業部会を双方の実務者から組成し、具体的な戦略について立案していく。
また、大学の特定教員ないし専攻学科を主体とした連携・協働の実験事業を1〜2年間継続実施して、双方が経験とノウハウを蓄積することも有効である。
さらに、市民と大学の共催フォーラムを常設し、学生や教員、地域市民が継続的にまちづくりと連携・協働に関する企画検討の場とする手法もある。各種イベントへの共催参加や独自企画開催、勉強会などの積み重ねを通し、リーダー層や担い手層を発掘・養成するとともに、それが事業実施に結びつくことも期待できる。また、地域からの大学に対する評価向上も図られることが期待される。積極的な学生参加と意欲活力への支援が大きな成功のポイントであるが、教員などの積極的な参加も不可欠な要素である。
学生の積極的な参加を図るには「参加しろ」という強制しての手法はとれず、あくまで自主的参加が主となるのはいうまでもない。学生にとっても「面白い」という要素を組み込むことが大切である。
例えば、各種分科会を設け、フィールドワークの手法も導入しながら、まちの問題を発見し解決策をワークショップ方式で検討立案し、地域に広く問題提起したり学生自身が関わるのを誘導し、その過程でリーダーとなる学生層を発掘育成する手法の展開など、試行錯誤を重ねることも必要である。
(1)県構想・計画との連携・協働、圏域内外の大学との連携・協働組織化も選択肢として確保しておく
特に市内大学などが提供する生涯学習機能に関しては、日立市が県北の中核都市機能を発揮している。単に周辺自治体から構成する日立市圏だけでなく県北圏域も利用圏域として想定したメニュー内容の企画や人材の招聘のため、圏域内および圏域外の大学などとの連携・協働、あるいはコンソーシアムの組織化、県構想・計画との連携・協働などの戦略も構想しておくことが求められよう。
(2)既存資源の活用と新たな掘り起しの仕組み
連携・協働の推進にあたっては、従来からの人材の蓄積を十分活用するとともに、新しい視点による各種の専門性や技能を持つ市民識者や技能者の発掘も同時に求められる。この両輪が十分に発揮されて初めて日立市の総合的な大学と地域の連携・協働を通した豊かな市民生活、地域力が生まれ蓄えられ、開発されるものである。
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