(2)継続的取組のための要件
連携・協働事業の立上げが仮に成功しても、それが必ずしも長期的に継続されるとは限らない。そこで次に、継続的取組を可能にする要件を述べる。
(1)新たな連携・協働を模索する意欲の有無
連携・協働にも様々な手法や分野があり、新たに開拓しなけれぱ、活動意欲も衰退していく。
新たな連携・協働の模索の例としては、地域の複数の大学や行政が連携・協働事業を行うことがあげられ、静岡県西部高等教育ネットワーク会議では、地域の総合的な学術・文化の振興、向上を図ることを目的として、浜松市、磐田市、袋井市と静岡大学、浜松医科大学、静岡文化芸術大学、聖隷クリストファー大学、静岡理工科大学、静岡産業大学、浜松短期大学、浜松大学が連携して事業を行っている。これらの行政と大学は緊密に連携し、単位互換や教育研究交流、市民向け大学講座の展開、大学・地域の総合的な情報提供など、様々なテーマに挑戦している。
また、宗像市では東海大学福岡短期大学、福岡教育大学、日本赤十字九州国際看護大学の3大学合同で「むなかた大学のまち協議会」を設置し、新たな連携・協働の形態を試みており、複数の大学や行政が共同して活動することは、活動領域や地域の交流範囲を広げ、広い地域でのまちの活性化を可能にする。
新しいタイプの連携・協働事例としては、浦安市と明海大学の図書館の開放があり、大学図書館の開放は多数みられるが、市と大学の図書館の相互協力により、公共図書館と大学図書館の資料を同時に大学図書館で貸し出すという試みは全国初である。
(2)新たな連携・協働を支援する協定書の追加
包括協定書を締結しても、それは具体的な内容に踏み込むものというよりは、連携・協働の必要性への合意に留まることが多い。そのため、協定後も常に個別の事業を模索・開発し、行政と大学が新たな合意を明示していくことは、提案段階でとどまってしまうことが多い各種アイデアを具体的で確実な実現に導くことができ、また、事業の見直し・企画を続けていくことで新たな連携・協働事業が生み出される可能性も高くなる。
(3)結果のフィードバックや広報の推進
常に情報を共有化していくためには、単なる文書の共有レベルでもあって重要であり、会議や検討会などの結果を互いにフィードバックするような制度、仕組みづくりを進める必要がある。また、連携・協働事業についての外部への広報も、地域を含めて情報を発信するとともに、外部からの意見を聞き、視点の異なったアイデアの提供や新たな人材の事業参加、内部の意識共有化を図るなどといった効果がある。
また、内部における人や情報のネットワークの強化も、事業の反省点や成功点を行動に移すための仕組みづくりの一つであり、フィードバック担当の機関を設ければ、会議などの内容を直接事業に反映することが可能となる。
(4)連携・協働の拡大に伴う人間関係(人脈)の重層化
長年にわたって形成されてきた人間関係(人脈)の有無は、事業の成功に関わるだけでなく、今後とも事業を継続する原動力にもなるものであり、事業が安定するためには、核となって活動する人材の固定化や継続的な供給が必要である。
また、地域における人間関係の濃密化は、まちづくりの活性化ともいえる側面があり、活動の中から地域連携の新たなリーダーが育成されたり、教員や学生が意欲的になるなど、事業推進のためのよりよい連鎖を生み出すことができる。
(5)連携・協働推進の要件とサイクル
最後に、結論として本章をまとめると、図表4−11のとおりとなる。連携・協働を立上げ、継続的取組を可能にし、連携・協働事業を安定化させるためには、図表のような好循環のサイクルを地域に構築していくことが必要である。
図表4−11 連携・協働推進の要件とサイクル
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