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1. 高等教育機関等の環境変化
 近年、大学などの高等教育機関を取り巻く環境が大きく変化し、経営の基盤が揺らぎ始める中、こぞって改革に取り組んでいる。
 最も大きな環境変化は少子化に伴う18歳人口の減少であるが、その一方で、全国各地において大学の新設が相次いでいる。
 平成14(2002〉年3月現在の大学の数は全国で669校{国立99校,公立74校,私立496校。通信教育のみを行う学校(私立1校,放送大学学園立大学)を除く。}で、前年度より20校増加している。短期大学の数は、559校(国立19校,公立51校,私立489校)で、前年度より13校減少している。
 
図表1−1 大学の設置者別学校数
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図表1−2 短期大学の設置者別学校数
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資料:文部科学省生涯学習政策局調査企画課 2002/03/29
 
●2003年に開校が予定される大学は、以下の15校である。
神奈川県立保健福祉大学(保健福祉学部) 神奈川県横須賀市 短大の昇格
尚絅学院大学(総合人間科学部) 宮城県名取市 短大の昇格
福島学院大学(福祉学部) 福島市 短大の昇格
浦和大学(総合福祉学部) さいたま市 短大の昇格
清泉女学院大学(人間学部) 長野市 短大の昇格
東京健康科学大学(健康科学部) 山梨県河口湖町
聖泉大学(人間学部) 滋賀県彦根市 短大の昇格
長浜バイオ大学(バイオサイエンス学部) 滋賀県長浜市
びわこ成蹊スポーツ大学(スポーツ学部) 滋賀県志賀町 短大の昇格
大阪成蹊大学(現代経営情報学部、芸術学部) 大阪市、京都府長岡京市 短大の昇格
関西鍼灸大学(鍼灸学部) 大阪府熊取町 短大の昇格
千里金蘭大学(生活科学部) 大阪府吹田市 短大の昇格
東大阪大学(こども学部) 大阪府東大阪市 短大の昇格
畿央大学(健康科学部) 奈良県広陵町 短大の昇格
熊本保健科学大学(保健科学部) 熊本市 短大の昇格
●香川県明善短期大学が募集停止、廃校へ。
●2005年開校の新都立大学は、人文、法、経済、理、工、保健科学の6学部。
●就実女子大学が共学化。就実大学に。ただし人文科学部は女子のみ募集。
 
 我が国の18歳人口は、平成4(1992)年度の約205万人をピークとして減少し続け、平成12(2000)年度には約151万人にまで低下した。今後10年程度の間にさらに30万人程度の落ち込みが予想され、平成21(2009)年度の18歳人口は121万人と推計されている。
 このことは、大学の入学志願者数も減少していることを意味しており、国公立を含めた全国の大学・短大への入学志願者は、平成4(1992)年度の121万5千人を頂点に減り続け、大学審議会の試算によれば、今後、各大学がバブルのピーク時に増やした臨時定員を半分程度に減らすとしても、平成21(2009)年度には、進学希望者数と定員がほぼ同じ70万7千人になり、計算上、「大学全入時代」を迎えるという。
 このような状況は、受験料や授業料を重要な財源とする大学に対して深刻な課題を投げかけており、進学率は上昇傾向にあるものの、このままでは、早晩立ち行かなくなる大学が続出するのではないかという懸念が生じている。
 実際、日本私立学校振興・共済事業団(私学振興事業団)によると、定員割れの私立大学は、平成10(1998)年春までは十数〜三十数校の間で推移していたが、少子化に伴う18歳人口の減少により、平成11(1999)年春には89校と急増し、その後も、平成12(2000)年春には131校、平成13(2001)年春には149校、平成15(2003)年春では143校と、調査対象となった4年制大学の約3割が「定員割れ」をおこしている。
 学生数が定員の5割に満たない大学も、平成14(2002)年春の時点で13校に上っており、この率は少子化が始まった10年前に比べて約9倍にも膨れ上がっている。
 このような「定員割れ」の問題に関連し、学生の学力低下を招いている原因のひとつとして、少子化による入試の低ハードル化を指摘する意見もあるなど、大学の大衆化が当然視される中にあってさえも、学生にとっても社会にとっても、もちろん大学自身の存続にとっても、望ましいとはいえない状況を生み出してきている。
 
図表1−3 大学・短期大学の規模等の推移
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 大学審議会「教育研究の質の向上と魅力ある個性化が実現できず、社会の期待に適切に「応えられない大学などにおいては、その存在基盤自体が危機的な状況に陥ることも予想される」と“大学の存在基盤の危機”について触れ、「大学等が廃止される場合の学生の取り扱いについて適切な方策を講じること」と大学廃止後の対策についても言及している。
 
(1)大学の抱える現状
(1)私立大学の現状
 大学の従来の経営理念において問題となっている点は、アカデミズムの追究、実学軽視の流れを作ったところにある。
 大学がするべきことは「アカデミックな」ことであり、「実学」ではないという主張は、大学が「象牙の塔」として非難されるきっかけとなり、現在でも大学を論ずる時の負の文脈として語られているなど、大学と社会との間が極めて隔たっているという印象を与えていたことは否めないであろう。
 
(2)教育面から見た大学の現状
 少子化による18歳人口の減少は、十分な選別がされていない学生が入ってくるという結果をもたらし、最終的に学生の質の低下をもたらしている。
 この問題は、経営上の観点から、受験生確保のために行なった入試科目の削減、軽量化を進めてきたことにより生じている。今でも受験科目の減少、受験科目の内容削減などによって、この問題の深刻さは増しており、今後、この傾向はさらに強まっていくと思われる。
 つまり、「高等教育」を行う場として認知されていた大学が、本来の「高等教育」を行なうことが難しい状況となっているのである。
 
(3)経営面からみた大学の現状
 私立学校の多くは授業料、受験料収入が主たる収入源であり、授業料や受験料など学生からの納付金が75%、国からの私学助成は収入の15%にとどまる。
 しかもこの私学助成金は、学生数が定員の50%に満たないと打ち切られるほか、さらに文系学部のみの新設大学は、最初の卒業生を出す年度までは交付されないシステムになっている。
 不況によって受験生の国公立志向が強まり、または受験校を「絞り込む」志向が強まるなど、少子化と不況の影響による受験料収入や授業料の減少が、私学経営を直撃しており、授業料・受験料といった学生納付金にのみ頼る構造が問われる時期になってきている。
 
(2)大学と社会の接点
(1)大学の教育面におけるアウトプットと企業の受容の関係
 次に我が国の大学の形態として大きく二分される理系と文系に分けて、教育面でのアウトプットとしての学生について考察する。
 まず、理系では、高度経済成長期を中心に極めて強い理学、工学志向があった。しかし、教育の内容としてはすぐ使えるという観点、での「実学」からは離れたものが多く、逆に企業が拡大再生産を続けられることができた時代であったため、研究費用も潤沢、研究面においても企業に度量があった時代であった。
 そのため、大学における「使えない研究」よりも、企業において「使える研究」を続けていくため企業に進む人間も多かった。
 文系では、実務の中で使えない専門を学ぶ事がきわめて多く、この「使えない」傾向が理系以上にさらに強くなる。法学を修めても、司法試験に合格したり、法曹界に進むわけではないし、経済学、商学を修めても、ビジネスの世界で役立てるわけではない。つまり、大学で勉強することが、学者を目指す以外には、きわめて希薄な意味しかなかったということである。
 それでは、なぜ「即戦力にならない卒業生」を企業は受け入れ続けたのか。その理由として、まず挙げられるのは、企業が成長している時期には、2〜3年かけて「企業戦士」に企業の側で育てる余裕があったということである。このため専門的な知識の蓄積よりも社交性を重んじ、体育会出身などの社会的な経験を得たものを採用するという傾向が続いてきた。
 しかし、ここにきて外部要因としての不況が、この「大学と社会との接点」の部分に色濃く影響し始めた。つまり、企業のほうにも余裕がなくなり、また、供給される学生量に比べて、企業の側の需要が減るという、労働市場が買い手市場になったことにより、即戦力にならない新卒よりも中途採用を、即戦力となる人材のみを雇う必要が企業側に生じてきているのである。







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