第1章 わが国の高等教育機関等と地域との連携・協働の今日的潮流
平成14(2002)年11月14日、中央教育審議会から「新しい時代にふさわしい教育基本法の在り方について」中間報告が出された。
この中間報告は、現在の教育基本法において不十分である面を指摘しており、まず、国民から信頼される学校教育の確立の項目に続き、「知」の世紀をリードする大学改革の推進という項目として、「これからの国境を越えた大競争時代に、わが国が世界に伍して国際競争力を発揮するためには、「知」の世紀をリードする創造性に富んだ多様な人材の育成が不可欠であり、そのために大学は改革を推進し、重要な役割を担うことが期待されている。しかしながら、教育基本法は義務教育など初等中等教育中心であり、大学の役割が明記されていない。」とうたっている。
また、生涯学習社会の実現の項目として、「これからの教育の目標を達成するためには、国民が、その生涯のいつでも自由に学習機会を選択して学ぶことができ、その成果が社会で適切に評価されるような生涯学習社会の実現に社会全体として取り組むことが重要である。しかしながら、教育基本法には、このような理念が明示されていない。」という表記をしている。
さらに参考として、「計画に盛り込むことが考えられる具体的な政策目標の例」があげられ、次のような提言が行われている。なお、提言は23項目に及ぶが、ここでは、今回の研究テーマに関係する大学及び生涯学習に関係する項目のみを抽出して表記する。
○高校卒業段階で英語で日常会話ができ、大学卒業段階では英語で仕事ができることを目標とした英語教育など、外国語教育の充実を図る。TOEFLなどの客観的な指標に基づく世界平均水準の英語力を目指す。大学入試センター試験に平成18(2006)年度入試から外国語リスニングテストを導入する。
○安易な卒業をさせないよう学生の成績評価を厳格化し、高等教育修了者にふさわしい学生の質(基礎的な教養、専門的な学力、人生観と世界観など)を保証する大学教育の実現を図る。
○優れた研究教育拠点形成等の重点的な支援、博士課程学生、ポストドクター支援の充実など優れた若手研究者の育成を推進する。
○大学改革の流れを加速し、活力に富み国際競争力ある大学作りを目指すため、国立大学の法人化など大学の構造改革を推進する。
○世界水準の教育研究成果の確保を目標として、大学等の施設整備を推進する。
○国際的な通用性等を踏まえた高等教育機関の質を確保するための第三者評価システムの構築を推進する。
○高等教育機関の活性化を図るため、各大学において具体的目標を定め、教員の公募制・任期制の導入の推進を図るほか、自校出身者比率の各大学における数値目標や大学院入学者中の他大学出身者の割合についての各大学における数値目標を定め、教員・学生の多様性を高める。
○大学・大学院等への社会人の受け入れを拡大するため、社会人特別選抜制度や夜間大学院、昼夜開講制、長期履修学生制度の充実、都市中心部でのサテライト教室の設置など、社会人のリカレント教育を推進する。
○ポスト「留学生受け入れ10万人計画」を含めた新たな留学生政策を早期に策定し、高等教育の国際化及び国際競争力の強化等に資する留学生施策を推進する。
○私立学校における独自の建学の精神に基づく特色ある教育と多様な教育研究の進行を図る。
○学校管理職への女性の登用や大学・大学院における女性教員比率等の飛躍的な向上を促進する。
○地域におけるボランティア活動や自然体験活動などの奉仕活動・体験活動の機会を充実し、小・中学校で全員が体験することを目指す。
○希望する保護者が全員参加できることを目指し、家庭教育に関する学習機会の提供や子育て支援ネットワークの形成等、家庭教育の充実のための環境を整備する。
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