第3章 医療制度改革をめぐる最近の議論について
国民医療費の総額は、約30兆円を超える規模となっており、GDPに対する割合も増加傾向にあり約8%を占めるに至っている。また、国民医療費に占める老人医療費の割合が約3分の1となり増加し続けていることが医療費増加の要因ともなっている。
老人医療費の増加の要因としては、老人の1件当たり診療費を一般と比較すると、入院は1.2倍、外来は1.6倍、1年間の受診頻度を示す1人当たり日数で比較すると、入院7.5倍、外来3.8倍となっており、1人当たりの診療費が一般に比べて高いことが挙げられる。
高齢者に係る医療費は増加し続けており、今後もこの傾向がさらに進めば平成37年度(2025年)には老人医療費の割合が55.5%まで増加すると予測されている。
図表1−3−1 国民医療費の推移
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図表1−3−2 高齢者に係わる医療費の占める割合の推移
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(2)国民健康保険制度の現状
(1)加入者の高齢化
8割を超える市町村国保において老人加入率が20%超となっている。各保険者ごとに比較すると、市町村国保が25.9%、政管健保が6.0%、組合健保が3.1%、各制度平均が11.6%となっており、市町村国保が他と比較して非常に高い高齢者割合を占めていることが分かる。(平成12年度概算医療費拠出金ベース)
図表1−3−3 年齢階級別医療保険制度加入状況の変化
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(2)低所得者の増加
退職者を除いた市町村国保の被保険者に占める無所得世帯の割合は、昭和55年度は13.1%であったのに対し、平成11年度には24.1%に増加し、保険料(税)の負担が中間所得層へのしわ寄せとして及んでいる。世帯主の職業構成割合を見ると、昭和40(1965)年には農林水産業者が38.9%、自営業者が23.5%、無職者が6.1%であったものが、平成11(1999)年においては、農林水産業者が5.6%、自営業者が18.6%に下がる一方で、無職者は38.4%と増加し、構成割合が最大となっている。
図表1−3−4 世帯主の職業別世帯構成割合の推移(国民健康保険)
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(3)小規模保険者の増加
保険事業の運営の安定性や事務の効率性の観点から保険者の規模は重要な要素である。被保険者が3,000人未満の保険者の割合は昭和40(1965)年において10.5%であったものが、平成11(1999)年には36.9%まで上昇している。
図表 1−3−5 |
被保険者数の規模から見た市町村国保保険者の分布 |
被保険者数 |
昭和40年(平均)1965年 |
平成11年(9月末)1999年 |
10万人以上 |
42 |
1.2% |
66 |
2.0% |
1万人〜10万人未満 |
1,029 |
30.4% |
691 |
21.3% |
5千人〜1万人未満 |
1,272 |
37.6% |
652 |
20.1% |
3千人〜5千人未満 |
686 |
20.3% |
639 |
19.7% |
3千人未満 |
354 |
10.5% |
1,197 |
36.9% |
計 |
3,383 |
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3,245 |
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