セッション2「国の海」
〈モデレーター〉
竹田 いさみ氏(獨協大学教授)
〈パネリスト〉
邱 文彦氏(中山大学助教授)
エッティー・アゴース氏(インドネシア海洋漁業省大臣補佐官)
川崎 隆生氏(西日本新聞社経済部長)
講演 海から来るもの
参議院議員 荒井 正吾氏
海は何かというと、人は水がないと人にならないし、生命にならない。海には生命体という意味もあり、まさに生命の根源だといえます。
日本の中で神社は海を向いています。海から来た貴重な物を上げてお祈りするなど、海に面した国の精神風土を生みました。
日本人のルーツをみると、朝鮮半島からやアムール川のあるロシアから、南からなどいろんなところから来ています。それらは国境のない海からやってきました。
文字や道具、仏教など普遍的な価値、形而上学的な思想も海を通って入ってきました。奈良時代に入ってきた仏教的、普遍的価値は、1400年経った今も残っています。
海は、国を守るものでもありました。昔は海を渡って船で攻めてきていました。しかし、今は海を超えてミサイルが飛んでくるなど、戦争の意味が違ってきて、海は必ずしも守ってくれません。ヨーロッパのように国家がひしめていると、近くで戦争があったら被害が及ぶということで、「そんな戦争はやめてくれ」と近隣の国が文句を言って守ってくれますが・・・。今、海が守ってくれるのは感染症や病原菌、BSEが入ってきたときの検疫ぐらいではないでしょうか。
ヤミ貿易や密航など国境犯罪といいますが、そのような犯罪を取り締まる組織に国際警察があります。国際警察は、海の悪事は日本人だけ、あるいは中国人だけがするのではなく、多国籍で手を結んでやっているとみています。そこで各国が、一緒に国境犯罪を防止する中で国家の安全保障の仕事も一緒にできるからということでロシアや韓国、中国、東南アジアの国境警察と協力しています。
ロシアのある大使がいつも言うのですが「日本と韓国は一日1万人の人が往復している。日本とロシアは年に3万人しか往復していない。その量は増えてない。ということは、人がいって見て聞いた見聞の情報がほとんど広がらない。ロシアにとっても残念ながらモスクワでさえも日本はどんなものかよくわからないというのが普通です。日本人にとってもロシアはよくわからない。現実のロシアのイメージはわからない」と嘆いていました。韓国とはいろんなバランスが取れた情報が流れている。東南アジアの国や地域とも、もっと交流の余地があろうかと思います。
博多はそういった意味でアジアとの交流が深く、博多に来ると東南アジアの入り口まできたような雰囲気があります。既に交流の窓口になっている。大変いいことだと思います。島国である日本がこのような交流を通じて、これからも他の近隣の国々と付き合っていければいいですね。
海への意識を強く持とう
竹田 「国と海」という観点から邱さんに口火を切っていただきましょう。
島国同士の連合を結成して
邱 台湾に置ける海洋政策と管理という点でお話させていただきます。島国は文化、地理、生態的な面で地球上の貴重な資源です。多くの国々、例えばタヒチ、バリ、インドネシアなどは、ユニークで多彩な文化が知られています。希少な野生生物や多様な生態系の宝庫といえます。中でもエクアドルのガラパゴス諸島は非常に有名です。
島国は今、深刻な被害が人間によってもたらされており、環境や生態資源、周辺の海域が地球規模の気候変動の影響を受けています。例えば、パラオは南太平洋に位置している小さい島国ですが、地球温暖化により、海面上昇が続き、国として存続の危機にさらされています。
これは台湾でも同じ状況です。国土面積は3万6千平方キロメートル。このように狭い土地で、天然資源をいかに管理していくかが、重要な政策になります。沿岸管理を管轄する機関として、私もメンバーであるNCST(持続可能な開発のための国家評議会)や、経済開発経済評議会、内務管理省、農業評議会、沿岸警備監理局などさまざまな省が携わっています。ただ、権限が関係当局に分かれており、統一された機関としてはうまく機能しておらず、これからといった状況です。
台湾では、海洋に関していくつかの課題があります。台湾では、民族的に「海、山、川などは天然の障壁をつくる」というイデオロギーがあるため、海洋、沿岸地域の管理はこれまでほとんどなされていませんでした。むしろ、海洋や沿岸は資源ではなく、廃棄物の捨て場と考えられていました。西海岸ではかなりのプロジェクトがあります。これらがすべて行われれば、天然の海岸線はほとんど失われてしまうでしょう。
まず、汚染について。陸からの汚染が大きな問題で、河川の約三分の二が汚染されており、漁業生産高が減っています。台湾は東アジアの船舶および石油輸送の戦略的位置にあります。タンカーの座礁による油流出などの汚染防止は非常に重要です。しかし、その経験が乏しく、国際的・多国的な協力が必要になってきます。
次に乱獲。南シナ海の東沙群島は環礁やサンゴなど美しい海域で、漁業資源も豊富です。そこでは2000隻以上の舟が操業していますが、ダイナマイトやヒ素を使った漁業をしており、サンゴの98%が死滅、または死滅しかかっています。台湾はここでの漁業を中止するよう国際社会に提案しています。漁業資源は台湾だけでなく、そこに隣接する国・地域の問題でもあります。
三つ目は、密輸と不法入国があります。台湾は2000年、その防止のために「沿岸警備局」を設立しました。密輸や不法入国によって、武器や麻薬の売買が行われるなどが行われ、治安を乱しています。安全保障面を考えた上で、非常に重要な課題として、対処していかねばなりません。
四つ目は開発。台湾をはじめ、日本、フィリピンなどの国々・地域は開発のかなりの部分を海洋部分に依存しています。国・地域での地域協力を確立することで、持続可能な開発を行えると思います。特に日本は大きな貢献ができると信じています。
今回のようなシンポジウムやワークショップで学者間の交流を図るとともに経験を共有し情報を交換すること、また関係する国際機関と連携して島国同士の連合を作るなどにより、共通の問題解決に対処していく必要があると思います。
竹田 インドネシアはどうですか。
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