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8月14日(水)
本日のスケジュール・内容
1)Jose Rodriguez記念ハンセン病病院見学
2)Manila Health Department City Hall of Manila表敬訪問
3)Lanuza Health Center見学
4)学生主催懇親会
 
1)Jose Rodriguez記念ハンセン病病院見学
 マニラからバスで移動すること2時間、Jose Rodriguez記念ハンセン病病院に着いた。大都会マニラとは違い、緑におおわれた大自然の中にあった。景色もきれいで、空気もおいしく、とてもいい所だ。ここの院長であるDr. Remigio Reyesが私たちを温かく迎え入れて下さり、病院の概要について説明して下さった。この病院は2,000床のベッド数があり、そのうち1,800床がハンセン病患者用で、残り200床が一般の病気のためのものだった。現在1,010人の患者が入院している。また形成外科、皮膚科、産科、婦人科、内科、眼科、救急救命科がある。作業療法科、理学療法科もあり、リハビリに重点をおいているとのことだった。ハンセン病では差別というのが大きな問題であり、患者の社会復帰のためにも私たちは差別をなくさないといけないとおっしゃられた。
 つぎに、Dr. Elvin Sanchezがハンセン病についての講義をして下さった。スライドを使い、診断から治療まで分り易く丁寧に講義して下さった。フィリピンではハンセン病は制圧されたとされており、患者数が減少してきてはいるが1ヵ月に10〜15人は見つかるので、現在でも重要な問題であると言われた。
 その後、Dr. Rolando Samsonが病棟を案内して下さった。病室は一部屋10人くらいだった。Dr. Samsonは患者さんを呼び、講義中に出た例などを、目の前で具体的に説明して下さった。病棟に入り、私たちは多くの患者さんと触れ合い、話すことが出来た。ここは患者さんが明るく、とても開放的でいい雰囲気だと私たち全員が感じた。ある患者さんはギターを弾き聞かせてくれたり、ある人はチェスをしていたり、絵を描いたりしていて、気軽に私たちと話してくれた。
 また、作業療法士の方にここで行っていることを詳しく説明いただいた。ここでは、リハビリのために加工した新聞紙で貯金箱や写真たてなどを作ったり、日本で行われているのと同じような訓練を行ったり、日常生活が円滑に行えるための装具を作ったりしていた。患者さんは楽しそうにそれらのことを私たちの前でしてくれた。
 少し歩いたところにある、教会が支援している施設に行った。ここでは、ハンセン病の患者の家族や、元患者が人形などを作り、収入を得ていた。それらの人形は訪問者が買ったり、欧米に輸出されたりするとのことだった。皆が明るく、楽しそうに作業していたのが印象的だった。
 私たちがこの病院に来て感じたことは、とても居心地がよく、気分よく過ごせる場所だということだ。また、実際に患者さんと触れ合うことが出来たことは大変いい経験となった。このようなところで患者さんと笑いながら働けたらどんなにすばらしいだろうと思った。
(担当:斎藤 信夫)
 
Jose Rodriguez病院 
人形をつくる人たち
 
2)Manila Health Department City Hall of Manila表敬訪問
 市長は不在だったため、Acting Assistant City Health OfficerであるDr. Marie Lorraine M. Sanchezにお話を伺った。「ゆりかごから墓場(from the womb to the tomb)まで」面倒をみる政策をとっていると強調されていた。胸をはって、よどみなく話される彼女の姿からは保健行政への自信と責任感が感じられた。
 
3)Lanuza Health Center見学
 マニラ市は6つのdistrictに分けられ、897のbarangayが存在する。私たちは132のbarangayを有するHealth DistrictIIIの各施設を見て回った。まずはlying-in clinicの見学だ。お産の施設であるが、帝王切開などは行わず正常分娩のみを世話している。医師1名、看護師1名、助産師は各シフト2名常駐。ベッドが10台ほど並べてあり、その奥に1枚の戸を隔てて分娩室があった。私たちが訪問したときは3組の母子と家族がベッドにおり、2人は前日、1人はその日の朝生まれたばかりで母親の横で愛くるしい姿を私たちにみせてくれた。通常入院から退院までは20〜24時間程度と驚くほど短時間の入院である。ここでは、月に80件ものお産がある。他3カ所に同様のclinicがあるが、医師がいないため何かあると、ここにいる1名の医師がかけつけるそうだ。人口に対するマンパワー不足に驚いたが、それでも限られた人、資源を最大限に活用しようとする仕組みが構築されていると感じた。
 ところで、母親たちは妊娠、出産についてどのように考えているのだろうか?このあたりの村では5〜6人もの子供を産むことが平均的であるので、日本で考えられているような人生における一大イベントといった物事ではないのかもしれない。だがやはり、慣れているとはいえ、自宅での分娩は0.1%ほどと少ない。交通事情が悪く不測の事態が発生したときすぐに病院へたどり着けないという問題もある。母親たちはより安全な場所を求めてlying-in clinicへ来るのである。
 Lying-in clinicに併設されていたのが、geriatric clinicである。ここは60歳以上のお年寄りを対象としており、政府によって賄われているため無料である。作業療法士が1名、理学療法士が2名いた。一日の患者数は約80名。ベッドの他に、自転車エルゴメーター(ペダルをこぐ自転車型の運動器具)が数台と運動機能のリハビリに使用する様々な器具が置いてあった。また「ネガトン」という電気療法で使用するベンチがあった。これには疼痛軽減、筋萎縮の予防、痙性の抑制をする作用があり、リウマチ・筋肉痛、脳卒中などに効果があるということで、患者は30分程度座っていくという。指先で触ってみるとビリッと電気が通って痛かったが、座ってみると何も感じなかった。他にも健康診断や、週一回の健康教育など様々な活動を行っていた。
 
Lanuza Health Centerにて
 
 次に、マニラに48あるヘルスセンターのうちの一つで、36のbarangayを統合しているLanuza Health Centerを訪問した。ここは45,000人もの人口をカバーしている。Dr. Rosine de Leonにセンターの業務内容について説明して頂いた。母子保健分野では、出生前後におけるビタミン剤無料供与、予防接種や低体重児を対象とした、feeding program。またデング熱コントロールプログラム、ハンセン病、STD、癌などの疾患への取り組み、歯科、眼科へのプライマリーケアについてなど、各取り組みについて写真付きのわかりやすいボードを見ながら詳しく教えて頂いた。若年層が多いフィリピンらしい保健医療政策に混じり、成人や高齢者をターゲットとした疾患も取り上げられていることに気づいた。生活習慣病としては特に糖尿病が多いそうだ。野菜などは値段が高く、安い米に味の濃いものをかけて食事とする人々が多いためだという。
(担当:河合 直子)
 
4)学生主催懇親会
 私たちはこの日のために小演劇と歌の出し物を用意し、連日練習を重ねていた。私たちの一人一人の芸や技や個性が凝集された出し物だった。そして、歌はこれまでにも何度か披露してきたので私たちの心の歌のようになっていた。夕刻、最終練習も終わり、準備も整い、懇親会の開始を待った。
 いよいよ時間が来た。大洪水のため保健省の方々がほとんど来られなかったのは残念だったが、突然の延期であったのにも関わらず、多忙の中WHOの尾身先生やDr. Nesbitをはじめ、多くの方々が来てくださったことに心から感謝する。懇親会の幕開け。まず、私たちのグループリーダー、伊藤君の挨拶で今回のフェローシップでの先生方の御協力や御指導に対しての感謝を述べ、そしてDr. Nesbitの乾杯で始まった。懇親会中はなるべく色々な方とお話がしたいと思いつつ、一人の先生とお話を始めると興味がわいて話しこんでしまったりして、なかなか多くの方とは話せなかった。しかし、その中でそれぞれが心に残る話ができたのではないかと思う。暫くしてご来賓の先生方を代表して、尾身先生、Dr. Nesbit、保健省のDr. Florante Trinidad、UPのDr. Lulu. C. Bravoからそれぞれ挨拶を頂いた。尾身先生は、「好きなことをしなさい。語学を身につけなさい。そしていいパートナーを見つけなさい」とまたもいいお話をしてくださった。他の先生方も私たちに歓迎のメッセージや激励をくださった。
 私たちの出し物は大成功だったと思う。引率の八谷先生の演出も素晴らしかった。UPの学生もバンブーダンスや歌を披露してくれたが、私たちの何人かも参加させてもらい、楽しい出し物だった。
 そして、私たちの誰もがまだまだ話し足りないと思っていたに違いないが、無情にも時は過ぎ、惜しまれつつ幕を閉じることとなる。参加してくださった方々が少しでも楽しんでくださったのなら幸いである。
(担当:井上 知子)
 
レセプション
 
8月14日 今日のひとこと
伊藤:ふうーっ。レセプション終了。ちっ、緊張のあまり食事がほとんどできなかったぜ。しかしこの達成感といったらないなぁ。今夜は飲むぞー。残飯も食うぞー。
安藤:人形がよくできてたなーー。
大森:素面で人工呼吸するって、ちょっとしたものですよね、先生。
千田:お人形を作っていたおばちゃんたち、最高!なんでそんなに元気なのさ!?
瀧村:ハンセン病院で絵を描いていたアンドレスさん。僕はきっとあなたを忘れないよ〜。そろそろお腹を壊す人もでてくるでしょう。ま、これもダイエットの好機と思って・・・
長崎:自分が、「どのように治療するか?」にのみ関心があり、「どのようにすれば生活しやすくなるのであろう」という視点を今まで持っていなかったと知った。
江崎:私たち外国人学生に、快く接してくださったホセ・ロドリゲス病院の患者さんたちに心から感謝。もっとお話がしたかった。レセプションの劇は、みんなで頑張った成果が出てうれしかった。
河合:レセプション、成功ー!初日以来みんなで準備してきたかいがありました。
馬場:日本の入所者の方とまた違った顔をしていました。
井上:ホセ・ロドリゲス病院は、明るかった。自分の不器用さが少しもどかしかった。
斎藤:ホセ・ロドリゲス病院ではとても幸せな気分になれました。ヘルスセンターで見た産まれたばかりの子供はスゲーかわいかった。
須貝:患者さんとの素敵なひととき。きっとずっと忘れない。
高田:懇親会が無事に終わって良かった!来てくださった先生方に、感謝します。
鳥羽:ホセ・ロドリゲス病院でもヘルスセンターでも人との交流が楽しかった。







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