日本財団 図書館


8月15日(木)
本日のスケジュール・内容
1)ManilaからTarlacへ出発
2)Tarlac Provincial Hospitalを訪問
3)Balibago Barangayを見学
4)Botika Binhi
5)”TV 99Film Showing”をCentral Elementary Schoolで見学
6)Under 5 clinicを見学
 
1)ManilaからTarlacへ出発
 6:20AM集合、6:30出発のはずが、昨日のレセプションの打ち上げで夜遅くまで起きていたのが原因のためか、集合時間に遅れる者が続出。朝からピリピリした緊張が走る。バスの運転手は頭がスキンヘッドのバルさん。一見、見た目は怖そうだったが、とってもいい人だった。バルさんのファンになった人は多かったはず。WHO西太平洋地域事務局の井上先生も同行してくださった。さて、バスが出ると、つかの間、すぐに皆熟睡。疲れが見られた。
 
2)Tarlac Provincial Hospitalを訪問
 保健局長のDr. Ramosは、鼻の下にチョビ髭があり、お話しの中にも時に冗談をはさみ、ユーモアたっぷりで優しさあふれる印象を持った。Dr. Ramosから学生一人一人にどうして医師を目指したのか、どんな医者になりたいのかということを問われ、学生は自己紹介とともに、その問いに自分たちなりに答えた。私たちの言葉のあとに、Dr. Ramosから1. Respect−お互いを尊敬しあい、2. 「コミュニケーション」の必要性、重要さ、3. 「CNNなどを見れば、世界はテロリズムや戦争の話題ばかりで、ひどい有様だ。これは、人々が他人を思いやる気持ちを忘れているからだ」ということを述べられた。また、WHOの定義のなかにある、身体的、精神的、社会的、(スピリチュアル)的なものを通して、総括的に物事を見ることが大切などの訓示があった。QOLに関してもお話があり、QOLの意義や世界の人が求めているのは幸福と健康であり、良いrelationshipを世界の人と作ることだとも話された。また、現在の医療を取り巻く社会の問題点として次のような話もされた。現在の社会はproductivityに重点を置いているが、これを突き詰めていくとどうなるか。将来は老人の人口がさらに増えるが、productivityの無い老人が増えたときどうするのか(productivity中心の社会を改めなければ、というような話だった)。加えて、社会の問題に対する取り組みも、長期の視点をもって改革している姿は現在の社会には見られない。例えばシンガポールの例。かつては1人っ子政策をとっていたが、現在は少子化になり180度政策を転換し、多産を奨励している。これはshort sightedな政治の典型である。というような話もしていた。地球上の資源は限られている。全ての資源を医療につぎ込むわけにもいかない。様々な問題が複雑に絡み合っている中で、みんなで共同してこの問題に取り組んで行くことが求められる。今フィリピンで流行っているアニメで、ボルテスファイブという日本の古いアニメがある。これは、複数のヒーローたちが合体して敵に立ち向かうというものだが、このように、力を合わせて問題にとりくんでいかなくてはいけない。という話があった。Dr. Ramosからの話を拝聴しながら、現代の国際保健だけではなく、社会の問題に対してもっと大局的にものを考え、何のために国際保健協力をするのか深く考えさせられる機会となった。
 
井上先生の質問:
 「decentralization(地方分権化)は問題なく、うまくいっているのですか」
答え:
 「equity、but not equality.公正な制度であるが、決して平等ではない。マニラ市内を見ても分かるように、例えばマカティなどの高級住宅地がある一方で、Smoky Mountainを抱えた極貧地域もある。自治体間の貧富の格差が大きすぎるのだ。」
 
3)Balibago Barangayを見学
 Barangay Balibago(1st)Primero Health Stationにて、maternal & child health activitiesについて、Ms. Mercy Manlutac(rural health midwife)からお話を聞く。
 カバーしている人口は7,000人で、このステーションを含めて全部で3つのステーションがある。スタッフはmidwife(保健師)一人だけで、医師はいないということである。全体のシステムの中での位置付けは、最末端。サービス内容は、ファミリープランニング、女性への性教育や(避妊具が何故有効なのかをエプロン型の教材を使って教えていた)、栄養指導、出産など。処方箋の発行も行う。
 ピル、コンドーム、※ORS(Oral Rehydration Salt=経口補水塩)は無料配布。また、midwifeには薬を出す権限もあり、医療行為のほとんどはここで解決するとのことであった。家族計画のために、カバーしている地域の地図の中に家の位置が書かれ、各家庭の避妊方法として、どの家庭でコンドームやピル等を使用しているのか、色別に印をつけていた。避妊方法としては一番多いのが「何もしない」、次が「IUD(Intrauterine Contraceptive Device=子宮内避妊器具)」、次が「コンドーム」であった。(このステーションのmidwifeはとても優秀で毎月の統計報告を作成しているが、他のステーションのmidwifeに同じ仕事をさせても全くできないところが多い。従ってデータを標準化して比べることができない。)JICAはここに10億円を投資し、Tarlac州だけではなく、これらのシステムの開発や構築をさせ、個々のシステムを模範とし、さらに地域から全国へ広がっていくことを願っているとのことであった。ここのMs. Manlutac個人の頑張りが絵や、表やデータを集めたりなど実感させられ、本当に地域のために尽くしている様子がうかがわれた。彼女のような模範的なmidwifeがますます増えることが、重要だとも感じた。
ORS:WHO-ORSは食塩3.5g、重炭酸ナトリウム(重曹)2.5g、塩化カリウム1.5g、ブドウ糖20gを1リットルの水に溶かして作ります。ブドウ糖が小腸で能動的に吸収されるときに、溶媒である水に溶けた電解質が一緒に吸収されることをねらったものです。WHO-ORSに比べると、市販のスポーツドリンクは糖分が濃すぎ、電解質が薄すぎて、下痢には使えません。
 
質疑応答:
質問「カトリックだと中絶は禁止だと聞いたが??」
答え「きちんと説明して納得されてから中絶される方はいます。」
 
質問「ピルが好まれる理由は?」
答え「体内のバランスを変えているだけだから、体に悪くなさそうと思う人が多い。」
(馬場さんの分析:女性が主導権を握っていないから、という理由もあるのではないか?)
 
質問「出産にかかる費用」
答え「ステーションでは500ペソ。自宅で出産する女性も多く、その場合は助産士かTBA(伝統的産婆)が立ち会う。TBAに払うお金は、すごく安い値段。TBAもいるが、最大2,000ペソをとるTBAまで様々。TBAに対しては清潔不潔の教育などを行って、周産期の事故を減らすように努力している。」
 
Ms. Mercy Manlutac(rural health midwife)
 
[今後の課題by 井上先生]
「人口100万人のターラックに、これまで10億円単位の金をつぎ込んだ。費用対効果を考えたら、ここターラックでの成果をどんどん広げて行くことが求められる。」
[井上先生のお話(barangayや保健施設を見るポイント)]
・乳幼児死亡率はどうか
・予防接種はできているか
・基本的はデータを持っているか
・サービスの標準化はどうであるか。
・スタッフ
・全体での位置
・負担の具合
・カバー人口
・薬棚にある薬品の数







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION