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8月11日(日)
本日のスケジュール・内容
1)穴田さんによるレクチャー
2)Sabana訪問
3)職業訓練センター見学
4)マニラ周辺ツアー
 
 この日はフィリピンでNGOコーディネーターとして活動されている穴田久美子さんに同行いただき、フィリピンの最貧困地域の一つであるTondo地区で活動するSabanaを訪問し、マニラ周辺を案内していただいた。
 
1)穴田さんによるレクチャー
 Tondo地区に向かうバス内で、穴田さんにフィリピンの現状についてレクチャーしていただいた。
(1) 2000年度フィリピン経済企画庁によると両親及び子供4人の家族における最低生活費は13,900ペソ/月とされ、このうち9,180ペソが最低限の食費として支出される。この最低生活費を下回る生活を余儀なくされる貧困世帯の割合は、マニラ首都圏:9.7%、イスラム地区:68.8%、全フィリピン:31.4%であり、フィリピン国内での偏在が見られる。
(2) フィリピン政府が定めているマニラ首都圏における最低賃金は、1997年で250ペソであり、現在は283ペソとなっている。
(3) マニラ近郊には数ヵ所Smoky Mountainと呼ばれるゴミ投棄場がある。Smoky Mountainでのゴミ回収(リサイクル品等、換金ができるもの)で得られる収入は子供で50〜60ペソ/日、大人で100〜150ペソ/日とのことで、多くの人々が集辺に住み着き、ゴミ山の中をあさっては少ないながらも収入を得ている。そこには組織があり、fresh(!)なゴミは組織のメンバーが優先されるなど、興味深い話も聞いた。
(4) Smoky Mountainが位置するTondo地区(港湾地域)は貧困層が集まっているスラムである。その理由としては、農村から船でマニラにやって来てそのまま住み着くということや港湾地区では肉体労働の需要があるということなどが挙げられる。
 
2)Sabana訪問
 バスを降りると、中にわずかにたち込めていたゴミの臭いが、現実感を伴ったものとして僕らの鼻をついた。案内された部屋に入ると、部屋いっぱいに子供たちが目を輝かせて待っていた。はじめに子供たちが振り付きで元気に歌って歓迎してくれた。次に子供たちの代表5人が情感いっぱいに歌った。感情が揺さぶられ、溢れ出た。お礼に僕らは島唄を歌った。その後僕たちは子供たちの中に混じって、Sabanaの活動報告ビデオを見た。ここではこの地域に住む子供たちに対する支援活動を行なっている。彼らに対する社会教育を行なったり、必要な食料、文具等の支給をしている。この間も子供たちは興味津々の目で僕らを見つめてきて、打ち解けていった。ビデオが終わり、僕らの自己紹介。みんな大きな声で僕らの名前を呼び返してくれた。みんなに質問をした。”Do you like to study?””YES!!”「一番楽しいときは?」と尋ねると、みんな次々に手を挙げ答えていく。「絵を描いているとき」、「家族と一緒のとき」、「Sabanaでの活動」、「クリスマスに家族と教会に行くこと」。時間はあっという間に過ぎ、上の階の上級生の授業を見学するため、子供たちと別れた。もうその頃には何の臭いも感じなくなっていた。
 上級生たちは”Skills for life seminar:Listening with empathy, giving & receiving feedbacks”と題してスキットにより社会の一員として必要なノウハウを学んでいた。例えば、「パーティの参加者が予定より少なかった」という場面では、「来なかった人を責めるのではなくなぜ人が来なかったかを考えよう」という具合に。僕たちにとっても参考になる内容だった。
 
Smoky Mountain
Sabanaの子供たち
Smoky Mountainで暮らす人たち
かかしを製作する人
 
3)職業訓練センター見学
 地域住民の職業訓練の一環として、米国からの注文が多い「かかし」を製作していた。Smoky Mountainの住民15人を3ヶ月契約で雇用しており、その賃金は1日に150〜170ペソと最低賃金ぎりぎりのものであるが、ゴミ収集よりは断然環境が良い。その他にも古新聞や捨てられた電話帳の紙を加工して、バスケットなどを作っているところもあった。また、外には観葉植物栽培用の植物園もあり、様々な植物が育てられていた。
 
4)マニラ周辺ツアー
 午後は一転してマニラのショッピングセンター等へ案内してもらい、徐々に増えつつあるというマニラの中産階級の日常を体験した。
 昼食を取ったショッピングセンターは日本の郊外にもみられるようなもので、品揃えも豊富で清潔だった。日曜の午後ということもあってか、買い物客でにぎわっていた。
 その後、近年開通した高架鉄道に乗った。これも清潔で快適。途中、電車は高級住宅街を通過した。緑豊かな広大な敷地に唖然。中産階級は育ってきているものの、依然貧富の差は拡大傾向というフィリピンの現状に思いを巡らせた。
 電車を降りて向かった先は巨大市場。割高なショッピングセンターで目を肥やしつつ、実際の買い物はこの市場で、というのが庶民のパターンらしい。市場の中は肉、野菜、果物、海産物等が棚の上に並べられている。日本の感覚から言えば、冷凍ケースに入っていない肉類は衛生上不安にも思えたが、「その日に解体された新鮮なものなので大丈夫」らしい。
 市場を後にした一行は、次にバスとジプニーを体験した。バスは車掌がいる以外は日本のバスと大差なかったが、ジプニーは素晴らしかった。ジプニーの荒い運転から、発展へ向けての活力とその日暮らしの余裕の無さの両面を感じつつ、喧騒と振動と排気ガスを堪能した。
 すっかり夜も更けていたが、さらに、穴田さんのご好意により、夜の歓楽街を見学することとなった。デパートにブティックが軒を並べるように、建物内に夜の店が軒を並べる。各店の入り口に立つ魅惑的な女性と客引きの男の威勢の良い声とあいまって独特の雰囲気であった。穴田さんと一緒に活動しているディナさんは以前に日本で働いたことがあり、日本人と結婚し子供ももうけたが、その後、旦那の日本人はドロンといなくなってしまったとのこと。同様な困難に直面するフィリピン女性も少なくないそうで、同じ日本人男性として耳が痛かった。この問題はもっと日本国内で関心をもたれるべきだと強く思った。
 
 フィリピン滞在11日間のうち最も盛り沢山で、個人的には最も印象に残った一日だった。正直言って疲れた。しかし、この日一日でフィリピンに暮らす各層の人々の生活を実感することができ、その後のフィリピンでの研修の理解に大きな助けとなった。貧困層だけを見ていたら、恐らく私たちはフィリピンの現状を間違って理解していたことだろう。
(担当:大森 敬太、滝村 剛)
 
穴田さん、Dinaさんと
 
8月11日 今日のひとこと
伊藤:フィリピンの陰といえる部分を垣間見た。それはまた、日本人(男性)の恥部でもある。
安藤:フィリピンではサッカーは流行ってないようだ・・・。
大森:Annalunaの声は波音のようにしみじみ染みわたり、残響は震え続けている。
千田:歌を聴いて全身が身震いしたのなんて初めてだよ(うわ〜ん)。このような環境の中で、どうしてそんな笑顔ができるの?ヒトの幸せって、何だろう。
瀧村:子供たちの笑顔に反して大人たちのトロンとした目が気になりました。虫、日差し、スコールヘの対策を忘れずに。
長崎:子供たちの歌声に震えた。なんてうまいのであろう。
江崎:決して楽ではなかった自分の経験をあけっぴろげに話してくださったDinaさんの前向きさと笑顔に元気付けられた。感謝。
河合:ゴミ山地区に住んでみたら、もっと多くのことが分かるんじゃないかなぁ。
馬場:子どもの明るい姿とすばらしい歌声に胸を打たれた。
井上:子供たちのあの笑顔と人懐こさはどこからくるんだろう。愛に包まれてるのかな。
斎藤:すげーー楽しい、すばらしい1日だったーー穴田さんサイコー。おれ、なんかフィリピン人になってねえかーー?
須貝:子供たちのあの笑顔、いいなあ。
高田:スモーキーマウンテンの子供たちに幸せな未来が待っていることを祈る。
鳥羽:フィリピンからの洗礼(?)ピーピーシャーシャー(夕食なし)。







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