笹川チェルノブイリ医療協力プロジェクト
1986年にウクライナで起きたチェルノブイリ原発事故で放射能汚染の影響を受けた地域の住民に健康障害がでていることから、医療協力の要請が、1990年に当時のソ連邦政府からありました。当財団は原爆被爆の治療・研究の経験をもつ広島・長崎の放射線医学・医療の専門家を早速現地に派遣し、当時のソ連保健省と協議を重ねました。そしてロシア、ウクライナ、ベラルーシの5つの医療施設を基幹センターとして、放射線の影響を受けやすい児童(事故当時0〜10歳)を中心とした地域住民の検診に着手し、1991年〜2001年にかけて、約20万人の子供たちの検診を行ないました。この結果、チェルノブイリ原発事故の放射線の影響によって、小児甲状腺がんが多発していることが、科学的に初めて証明されました。
1999年には、ベラルーシのゴメリ州立診断センターと日本の長崎大学医学部とを結ぶ通信衛星を使った画像送受信システムをたちあげました。このシステムを用い、ゴメリから甲状腺超音波診断画像を長崎大学へ送り、受診した長崎大学では専門医のコメントをつけてゴメリヘ返送し、甲状腺がんの確定診断に大きな役割を果たしています。
この成功を受け、財団はWHOと協力し、2000年5月ベラルーシの遠隔医療のパイロット・プロジェクトに着手しました。これによって、ベラルーシ国内の甲状腺診断を中心とした医療格差や、医学教育の格差を少しでも解消したいという願いがあります。
また、ECやWHOなどの国際機関やNIS(新独立国家)のロシア、ウクライナ、ベラルーシ3国の政府と協力し、チェルノブイリ甲状腺組織バンクをスタートさせました。これは、手術によって摘出された甲状腺組織の無用な拡散を防止し、全世界的な研究を促進するため、それぞれの国が責任を持って管理できる制度を完備しようというものです。この甲状腺組織は手術をうけた患者の今後の治療に大切なことはいうまでもありませんが、これを試料とする研究結果は放射線被曝と甲状腺障害等との関係の解明にも役立つと期待されています。
検診期間 |
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1991年5月〜2001年3月 |
検診児童数 |
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約20万人 |
検診実施地域 |
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クリンシー(ロシア) キエフ、コロステン(ウクライナ) ゴメリ、モギリヨフ(ベラルーシ) |
NIS医師の日本研修 |
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115名 |
NIS医師のNIS研修 |
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11O名 |
日本医師の現地技術協力 |
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441名 |
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