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(3)都市構造変化への対応
 
 交通需要は人口構造や土地利用等に大きく影響されることを勘案し、本項においては、社会・交通環境が相違する「都心エリア」、「都心周辺エリア」、「郊外エリア」のそれぞれについて「交通のあり方」を検討する。
 
a)都心エリア
【現状の社会環境】
 都心エリアにおける中心エリアでは、相対的に高い鉄道路線網が整備されていること等を背景とした鉄道分担率の増加がみられる。バスについては、都心業務エリアや鉄道サービス不便地域を中心に運行されているが、定時性等の問題が発生している。一方、京都、大阪エリアでは自動車分担率の減少傾向がみられる。また、20歳後半から40歳代を中心とする人口の都心回帰が進展している。
 
【需要予測・感度分析結果】
 京都市南部、大阪湾臨海部、ポートアイランド等の開発関連エリアにおける交通需要は増加するものの、大阪都心への交通需要が減少傾向を示す。
 都心人口の増加は、鉄道利用率の減少となって顕れる。また、バスについて若干の増加が見込まれる。
 
 
【交通計画の方向】
大規模ターミナルにおいては、乗り継ぎ利便性の向上を図るための相互直通運転化や既存路線の延伸等による路線間の連絡性、ネットワーク機能向上の検討
→例えば、なにわ筋線、中之島新線延伸、地下鉄3号線延伸 等
人口集中地区(DID)においては、既存路線の有効活用並びに発生する需要量や方向等を考慮した鉄道整備の可能性の検討
→例えば、地下鉄東西線延伸、淀川北岸線 等
大量の交通需要の発生が見込まれる都市再生事業等開発エリアにおいては、主要ターミナル間にバス路線を先行的に開設するとともに、鉄道整備については開発人口増加の進展や費用対効果、収支採算性等の検討
→例えば、地下鉄烏丸線延伸、地下鉄7号線延伸 等
自動車交通の多い中心市街地等商業集積エリアについては、専用通路を有する「LRT」等新交通について、自動車からの転換需要の予測を的確に行うとともに、費用対効果、収支採算性等の検討
主要駅を中心とするフィーダーバスの検討
 
b)都心周辺エリア
【現状の社会環境】
 当該エリアでは、常住・昼間人口の減少傾向がみられる。鉄道整備については京阪奈新線や大阪モノレール等が事業化されているが、一部地域を除き鉄道分担率は減少傾向にある。一方、自動車交通については、分担率の上昇がみられる。
 
【需要予測結果】
 鉄道を中心とする交通需要は、開発エリアを除き横這い状態が見込まれるが、全体的には大阪市域指向の需要構造が続く。自動車交通の増加等に伴い、バス利用者はあらゆるエリアにおいて減少が見込まれる。
 
 
【交通計画の方向】
乗り継ぎ利便性の向上を図るための路線間の連絡性、ネットワーク機能向上の検討
→例えば、大阪モノレール延伸 等
人口集中地区(DID)においては、既存路線の有効活用並びに発生する需要量や方向等を考慮した鉄道整備の可能性の検討
→例えば、地下鉄2号線・7号線延伸 等
大量の交通需要の発生が見込まれる開発エリアにおける鉄道整備については、開発人口増加の進展や費用対効果、収支採算性等の検討
→例えば、地下鉄5号線延伸 等
自動車分担率の高く道路渋滞の激しいエリアについては、鉄道の利便性向上並びに駅前広場整備等バスアクセス環境改善を通じた鉄道とバスの連携強化の検討
 
c)郊外エリア
【現状の社会環境】
 常住人口は、滋賀県南部や京都府南部等を中心にした大規模開発エリアにおいて増加が続いている。また、近年、京都府亀岡市域や奈良県橿原市域及び泉佐野市域等大阪府南部エリア等の郊外エリアを中心に自動車交通が著しい増加を示している。
 
【需要予測・感度分析結果】
 鉄道利用の分布状況では、常住人口の増加が見込まれる滋賀県南部や関西文化学術研究都市や神戸・三田国際公園都市を中心とする阪神内陸等と都心間に大きな需要が発生する。バス利用者については、滋賀県南部を除くエリアにおいて大幅な減少が見込まれる。
 また、昼間時間における鉄道運行本数の減少により、鉄道から自家用自動車への転換が進行する。
 
 
【交通計画の方向】
鉄道利用不便地域では、人口集中地区(DID)を除きバス輸送サービスを先行的に整備し、鉄道整備については、需要動向や費用対効果、収支採算性等の検討
→例えば、地下鉄東西線延伸、びわこ京阪奈線 等
大規模開発エリアにおける鉄道整備については、人口増加の進展や費用対効果、収支採算性等の検討
→例えば、京阪奈新線延伸、公園都市線延伸 等
鉄道については複線化等による利便性向上を促進するとともに、鉄道とバスダイヤの調整を通じた乗り継ぎ利便性向上等ネットワーク化の検討
幹線系路線と支線との接続性向上のためのダイヤ調整や乗換通路等整備の検討
駅前広場や駐車場整備による鉄道と自動車との連携の検討







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